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ハードコートで、今の大坂なおみに大きな死角はない! 全豪テニス2年ぶり2度目の優勝まであと1勝!!

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
2021年全豪で、精神面の成長と、テニスの充実度をうかがわせる大坂(写真/神)

 オーストラリアンオープン女子シングルス準決勝で、第3シードの大坂なおみ(WTAランキング3位、2月8日付け、以下同)が、第10シードのセリーナ・ウィリアムズ(11位、アメリカ)を6-3、6-4で破り、メルボルンで2年ぶり2度目の決勝進出を決めた。グランドスラムでは通算4度目の決勝進出となる。

「本当にナーバスだった。ネットを挟んでコートの反対サイドに彼女(セリーナ)がいるのを見て、第1ゲームのサーブで怖気づいてしまった」と振り返った大坂は、準決勝の第1セット第1ゲームで硬さが見られ、いきなり自分のサービスゲームのブレークを許した。

 さらに、大坂0-2で迎えた第3ゲームで、ダブルフォールトによって30-40になりピンチを迎える。ここで大坂は、

「自分がコントロールできることをコントロールしていこうと自分自身に言い聞かせた。彼女(セリーナ)が何を仕掛けてくるのか考えるのではなく、自分自身のプレーをしようとした」

 凡ミスが減って第3ゲームを大坂がキープ。続いて第4ゲームで初めてセリーナのサービスをブレークし、第3ゲームから5ゲーム連取で一気に試合の流れを引き寄せた。

 第2セットは、大坂が第1ゲームをブレーク。第8ゲームでは、大坂がダブルフォールトを3回犯して、セリーナにブレークバックを許すものの、大坂は決してパニックにはならない。4回戦で、第14シードのガルビネ・ムグルサ(14位、スペイン)に2回のマッチポイントを握られながらも勝ち切ったことが自信になっていた。

 続く第9ゲームでは、セリーナは自分のペースに持ち込めずラブゲームで、大坂にブレークを許し、この時点でほぼ勝負は決した。第10ゲームは、大坂が落ち着いてラブゲームでサービスをキープ。オーストラリアンオープン歴代チャンピオン同士の対戦だったが、23歳の大坂が、75分のストレートセットで39歳の元女王セリーナを退けた。“今の時代、チャンピオンになるのにふさわしいのは私よ”とも受け取れるような大坂の力強い勝利だった。

「今日はたくさんのミスをしてしまった。正直私が勝てるチャンスはあった。自分が(第1セットで)5-0にできていたかもしれないのに」と振り返って、悔し涙を浮かべたセリーナは会見を途中で打ち切ってしまうほど感情を露わにした。

 大坂のファーストサーブは確率こそ45%だったが、ファーストサーブでのポイント獲得率が85%で非常に高かった。大坂のサーブは時速190km台をたたき出す高速サーブと回転系サーブのコンビネーションが良く、セリーナは大坂のサーブを攻略しきれなかった。

 大坂は、ダブルフォールト8回、ミスを21本犯すものの、サービスエース6本を含む20本のウィナーを決めた。

 また、ウィム・フィセッテコーチと取り組んできたリターンの向上も、勝利へのキーになり、準決勝での大坂のリターン返球率は73%で、強力なサーバーであるセリーナに対しても高い返球率を記録し、大坂の成長がうかがえた。

 これで大坂はマッチ20連勝(棄権2回を含む)となり、コート上で落ち着いた状況判断ができる大坂のテニス、フィジカルの充実からくる動きの良さ、そして、フィセッテコーチとの信頼関係からもたらされる安定したメンタル、いずれもグランドスラム決勝進出にふさわしい高いレベルにある。

 決勝で、大坂は、初めてグランドスラムの決勝に進出してきた第22シードのジェニファー・ブレイディ(24位、アメリカ)と対戦する。対戦成績は大坂の2勝1敗で、直近では、2020年USオープン準決勝で大坂がフルセットで勝っている。

「彼女(大坂)は、サーブが良いしパワーもある。攻撃的なプレーでプレッシャーをかけてくる」と語るブレイディは、オーストラリアンオープンだけでなく、グランドスラムでの初優勝を目指す。

 ちなみに、ブレイディは、オーストラリアが入国者全員に課した新型コロナウィルス対策の検疫14日間を過ごした時、チャーター機の同乗者からコロナ陽性者が出たため、ホテルの部屋から1歩も出ることのできない完全隔離となった72名中の1人だった。

 一方の大坂は、オーストラリアンオープンで2回目、グランドスラムでは通算4回目の決勝進出となる。ブレイディより、経験に勝る大坂が有利だろうか。

「私としては本当に気にしていません。有利なのか不利なのか私にはわかりません。誰が対戦相手であろうと、私が勝利しそうな選手として試合に臨むことになるかもしれません。そうすると、私がプレッシャーを感じて、不利になるかもしれません。対戦相手が、なりふり構わず向かってくるかもしれないし、失うものが何もないような気持ちで向かってくるかもしれません。グランドスラム決勝で負けたくないという思いが重くのしかかってくるかもしれません。だから、私の中で考慮するべきことがたくさんあります。でも、私は、それらのことについてあまりストレスを今は感じません。たぶん、後から襲ってくるのかもしれませんね」

 また、大坂は、以前とは目標設定が変わり、今は自分のためにだけでなく、一緒に戦うフィセッテコーチや2人のトレーナーのために勝ちたいという気持ちになっている。

「私は歴史を作りたかった。日本人初のグランドスラム優勝者になりたかった。それが私の目標だったと思います。トロフィーや壁に自分の名前が刻まれているのを見るのは嬉しい。でも、それより大きなことがあるように思う」

 心技体が充実した現在の大坂を、ハードコートでの戦いで倒すのは、誰にとっても簡単なことではない。勝負に絶対はないが、2年ぶり2度目のオーストラリアンオープン優勝を目指す大坂に大きな死角はない。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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