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新型コロナショックでウィンブルドンが中止! プロテニスツアーもさらなる延期で、再開の見通し立たず

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
グランドスラムで最古の歴史を誇るウィンブルドンが中止になった(写真/神 仁司)

 4月1日(イギリス時間)に、テニスの4大メジャーであるグランドスラムの第3戦のウィンブルドン(イギリス・ロンドン、6/29~7/12)が、新型コロナウィルスの感染拡大の影響によって中止されることが、ウィンブルドンの大会主催者であるオールイングランドローンテニス&クローケークラブ(AELTC)より発表された。

 新型コロナショックによって中止になる初めてのグランドスラムとなったウィンブルドン。1877年から開催されグランドスラム最古の歴史を誇るウィンブルドンが、過去に中止になったのは、第1次世界大戦(1915~1918年)と第2次世界大戦(1940~1945年)の2例だけだった。

 AELTCのイアン・ヒューイットチェアマンは次のようなコメントを残した。

「これはわれわれが軽んじて下した決断ではなく、公衆衛生とウィンブルドンを実現するために集まるすべての人々の幸せを尊重したものです。これまでチャンピオンシップ(ウィンブルドン)が中止になったのは、世界大戦によってだけということに鑑みると、それだけわれわれの心に暗い影を落とします。すべてのシナリオを徹底的に検討した結果、今年の大会を中止にすることが最終的に正しい決定であることが、このグローバルな危機への指標になると信じています。今年の大会を中止して、ウィンブルドンの幅広い資産を利用して、地域社会やそれ以外の人々を支援することに集中していきます。われわれの考えは、これら前例のないことに影響を受け続けているすべての人と一緒にあります」

 ウィンブルドンは、コートサーフェスが、グラス(天然芝)で開催される唯一のグランドスラムで、毎年大会期間の2週間のために1年をかけて、テニスコートのグラスが整備される。AELTCのリチャード・ルイス最高責任者は、次のように語った。

「これは、いくつかの点で困難な決定でしたが、現時点では、社会の最善の利益になるだけでなく、イギリスやヨーロッパでのグラスコートイベント、そしてワールドワイドなテニスカレンダーへの影響を考えると、国際テニスの仲間たちにも確実なものをもたらすと強く信じています。

 この決定を下すにあたり、LTA(イギリスのローンテニス協会)、(男子)ATP、(女子)WTA、ITF(国際テニス連盟)のサポート、さらにウィンブルドン開催のため、非常に大切なグラスコートイベントに尽力する友人やパートナーに感謝します。イギリス政府と公衆衛生当局の指導と支援に感謝します。われわれは、危機への取り組みにおいて、彼らの努力を支援するためにできる限りのことをしていきます。

 最後に、この独特で、疑いようのない困難な状況下で、理解を示してくれたウィンブルドンを愛するすべての人々に感謝します。長年にわたって形作られたチャンピオンシップ(ウィンブルドン)は、皆さんの情熱があったからこそ、なのです。これからもその情熱に応えていきたいです。2021年の素晴らしいチャンピオンシップを準備できることを楽しみにしています」

 今後AELTCは、地方自治体と協力しながら食品供給の流通や、地域コミュニティーへの資金援助、イギリス赤十字とのパートナーシップを通じて、ロンドンやイギリスの人々を支援していく予定だという。

 同時に、ワールドプロテニスツアー(男子ATP、女子WTA)は、新型コロナウィルスのパンデミックによって、7月13日まで中断することを発表した。今回のATPとWTAの決定は、すなわちヨーロッパでのグラスシーズン(天然芝コートのシーズン)の消滅を意味する。

 今回の決定にも、男子ツアー下部のATPチャレンジャー大会も含まれており、加えて国際テニス連盟(ITF)主催の男女のツアー下部大会、ジュニア大会、車いすテニス大会、シニア大会、ビーチテニス大会も同様に7月13日まで行われないとした。

 一方、例年ならグランドスラム最終戦となるUSオープン(アメリカ・ニューヨーク、8/31~9/13)は、今のところ予定通り開催するとしているが、ニューヨーク州の感染拡大状況を見ると、今後何かしら動きがあるかもしれない。

 現在、USオープンの会場であるUSTAビリー・ジーン・キングナショナルテニスセンターには、新型コロナウィルス感染症患者の臨時の受け入れ施設が設けられている。

 テニスセンターは、ニューヨークのマンハッタン島から車で30分ほどのクィーンズ地区にあるコロナパークの一画にあるが、その中にあるインドアテニスコートの施設内に、ベッド350床が用意され、新型コロナウィルス感染症患者の臨時病院として、4月6日の週から稼働する予定だ。

 世界保健機関(WHO)が、新型コロナウィルスのパンデミックが加速しているという宣言の中、グランドスラムを含めたワールドプロテニスツアーは、依然として予断を許さない状況が続き、現時点では、まだまだ新型コロナウィルスの封じ込めは見えてきていないのが現状だ。

 もしかしたら、2020年のワールドプロテニスツアーが、これ以上行われない可能性も指摘され始めている。

 仮に新型コロナウィルスが収束した国や地域が出たとしても、別の場所では流行している場合もあるだろう。これでは選手や関係者たちの健康や安全は保全されない。さらに各国の入国拒否や入国制限も解除されなければ、世界を飛び回るプロテニスプレーヤーの移動が厳しい。プロテニスツアーは、ウィルスの封じ込めによって各国の安全が確認され、足並みが揃わなければ、活動再開は現実的ではない。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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