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錦織圭から大坂なおみへ、先輩選手としてのエール。「テニス的には、100%1位の実力はもっている」

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
ウィンブルドンで2回戦に進出した錦織は、大坂なおみについて言及した(写真/神 仁司)
ウィンブルドンで2回戦に進出した錦織は、大坂なおみについて言及した(写真/神 仁司)

 テニス4大メジャーの第3戦・ウィンブルドンの大会初日(7月1日)に、第2シードの大坂なおみ(WTAランキング2位、7月1日付け)が、女子シングルス1回戦で敗れるという大波乱が起こり、日本メディアだけでなく海外メディアでも大きなニュースとなった。

 その翌日に、男子シングルス1回戦を戦った第8シードの錦織圭(ATPランキング7位、7月1日付け)は、問題なくストレートで勝って2回戦に駒を進めた。

 試合後の錦織の記者会見では大坂の話題が当然のように挙がった。

 この1年で大坂は、とてつもない成績を残してきた。日本人初のグランドスラム優勝者になり、さらに日本人初の世界ナンバーワンにもなった。まさに大坂は一気に世界の頂点へ駆け上がってしまったという印象だった。

 そして、大坂自身だけでなく、彼女を取り巻く環境も劇的に変化した。注目度はうなぎ登上りで、スポーツ界だけでなくさまざまなメディアで彼女は取り上げられるようになった。

 そんな状況にさらされている大坂について、錦織は次のように語った。

「最近思うのは、なおみちゃんの(関する)ちょっとアホな記事がすごい多いなって感じます。そんな見当違いなことというか……。よくありますけど、想像の記事をたまに見る。なおみちゃん見ないでくれという記事が多いなって。なおみちゃんが読んでるかどうかはわからないですけど」

 錦織は、2014年からトップテン選手として走り続けているが、先輩選手として大坂にエールを送った。錦織は決して知ったかぶりはしない。わからないことははっきりわからないという潔さがある。そして、自分の実体験を踏まえながら、自分の理解の範囲で的確なアドバイスをする。彼特有のまったりした口調からは、大坂への優しさと思いやりが感じられる。

「僕よりはるかにプレッシャーはある。世界から来るプレッシャーだったり、やっぱり1位を守るというプレッシャーは計り知れないので、(最近の大坂の不調は)しょうがないかなと思います。あんまりそのことに関して、彼女と話したことがないので、どういう気持ちかわからないですけど、周りのことをあんまり考えないでほしいかなと思いますね。

 今、自分がすべきことに集中してほしいです。本当に急に1位になったので、慣れるまでには時間はかかると思いますし。まだめちゃくちゃ若いので。かわいい女の子ですし。ゆっくりやってほしいですね。テニス的には、100%1位の実力はもっているし、あんまり気にせずやってほしいですね」

 かつて錦織は、2013年や2014年前半ぐらいに、日本男子として初めて世界のトップ10入りが近づいた状況下で、メディアなど周囲からの期待や重圧に押しつぶされそうになったほど苦しい時期を経験したことがある。ただ、世界の女王になった大坂が受ける重圧は、自分には到底計り知れないと錦織は素直に認める。

「トップ10の重圧にときたま悩まされることがありますけど、ん~。やっぱ1位とは次元が違うので(笑)。僕は、何週間か、何カ月か経てば乗り切れますけど」

 また、記者会見を途中で退室してしまった大坂のニュースを錦織が見た時、自分自身の経験を思わず振り返った。

「いや、(会見を)1回もやめようと思ったことはないですよね(笑)。(大坂の)記事が出た時に、僕はあったかなと考えたんですけど、1回もないな。そりゃ、やりたくない時はもちろんありますけど、プロというか義務なんで、僕にイエスかノーのチョイスはない」

 ちなみに、錦織は「取り残されないようにしないと」という思いで、日本メディアのスポーツニュースを結構見ているという。

 錦織は、7月4日にウィンブルドン2回戦を戦う。舞台は、大坂が1回戦で敗れた場所、センターコートだ。果たして、錦織がどんなプレーを見せるのか大いに注目したい。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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