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46歳の伊達公子、3度目のチャレンジ! 左ひざの手術後、約1年4カ月ぶりのテニス公式戦で復帰を果たす

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
左ひざの手術を経て、約1年4カ月ぶりに公式戦復帰を果たした伊達(写真/神 仁司)
左ひざの手術を経て、約1年4カ月ぶりに公式戦復帰を果たした伊達(写真/神 仁司)

伊達公子が、3度目のカムバックを果たした――。

左ひざの手術を乗り越えて、約1年4カ月ぶりに国際女子テニスの公式戦に復帰し、WTAツアー下部にあたるITF岐阜大会「カンガルーカップ国際女子オープン2017」(賞金総額8万ドル、5/1~7)でテニスコートに立った。

岐阜は、伊達にとって思い出深い場所で、2008年大会では、クルム伊達公子として37歳で現役再チャレンジの第一歩を踏み出し、予選から勝ち上がり準優勝をして周囲を驚かせた。さらに、2012年大会では、第1シードとしてプレーして見事初優勝を飾ったのだった。

今回、伊達(WTAランキングなし、5月1日付、以下同)は、ワイルドカード(大会推薦枠)を獲得して本戦出場を果たしたが、1回戦で、第3シードのリン・ジュウ(136位、中国)に、2-6、2-6で敗れ、復帰戦を勝利で飾ることはできなかった。

伊達は、左ひざと右アキレス腱にテーピングをしてのプレーとなり、随所にいいショットを見せたものの、テニスコートの左右に振られると、足の踏ん張りが利かない場面が見られた。特に、バックサイド(コートの左側)へ走らされて、バックハンドストロークのスライス(逆回転)のボールを打たされる場面ではミスを連発した。

だが、まずは実戦で1試合戦えたことをよしとすべきだろう。

「いや、もう上出来だと思っています。本当に。(4月12日に松山で開催された)エキシビが終わった後に、(左ひざが)すごく腫れて、2回水を抜かないと痛みがとれないことがあった。1大会ということを考えると、当然1試合限定ではないので。結果的に(1回戦で)負ければ1試合になりますけど。ひざの状態も考えて、出るからには最低でも、2試合、3試合、本来ならば(決勝までの)5試合を戦える自分の中の体力的な手応えをもっていないと、(岐阜に)出るべきじゃないんじゃないかなと、ちょっと直前は悩んだ時期もあった。

ここまでサポートしてきてくれたトレーナーやフィジオ(理学療法士)の人やマッサージの人と話をしながら、たとえひざを含めて体力的に1試合になったとしても、自分の中で最終的に、実戦で戦うことの意味を優先させて、トライしようかなという結論になってここ(岐阜)へ来た。

ただ、実際戦ってみたら、今はまだ終わった直後で、試合モードの部分が残っているからだと思うけど、もし勝っていたら、明日戦えるんじゃないかなという気持ちはある。明日になったらわからないですけど(笑)。そういう意味でも、今回は本当にトライしてみてよかったかなと思います。自分の可能性というものを少し垣間見れた部分もゼロではなかったので、そういう意味では、満足している部分の方が大きいかなと思います」(伊達)

ITF(国際テニス連盟)が主催する大会は、女子ワールドテニスWTAツアーのように大会の種類によってグレード分けはできないが、賞金総額によってグレード分けすることができ、1万5000ドル、2万5000ドル、6万ドル、8万ドル、10万ドル、賞金が多いほどランキング上位選手がエントリーしてくる。その中で8万ドル大会は、主に世界100位台から200位前半の選手が出場するものとなる。

つまり、復帰戦となった岐阜大会は、今の伊達にとっては、レベルが高いものになる。だから、たとえ負けても全く下を向く必要はない。

ノーランキングの伊達は、基本的には最下位の1万5000ドル大会の予選からトライしないといけないことになるが、各大会のエントリー状況によって異なり、予選に入れたり入れなかったりする状況だ。

ただ、幸いにもITFチャンオン大会(韓国、賞金総額2万5000ドル、5/8~14)の予選に入ることができ、次の戦いの舞台だけは決まった。ちなみに、ITF仁川大会(韓国、賞金総額2万5000ドル、5/15~21)は、予選の補欠リスト21番目に名を連ねている(5月3日現在)。

さらに伊達は、中期的な目標として、プロテクトランキング(公傷による特別ランキング)193位を使って2大会だけ出場できる、テニス4大メジャー・グランドスラムの予選で再びプレーすることを見据えている。

USオープン(アメリカ、ニューヨーク、8月下旬)やオーストラリアンオープン(オーストラリア、メルボルン、2018年1月中旬)で、伊達自身が納得のいく良いテニスができればと思い描いている。

自他共に認めるように厳しい道のりが待っているのは間違いない。左ひざは回復していくだろうが、右足より筋肉が落ちて細くなった左足を元に戻すのは簡単なことではない。試合を重ねれば、左ひざの痛みがぶりかえすこともあるだろうし、一進一退の繰り返しになることも考えられる。

そして、46歳の伊達には、テニスでは極めて高齢であるという、年齢との戦いもある。

前例のない過酷なチャレンジの先に、伊達が辿り着くところは一体どういうものなのか見届けたい。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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