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テニス界の新王者と名勝負を演じた錦織圭。マリーと差はあったのは事実だが、近づいているのもまた事実

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
新世界1位のマリーと、3時間20分におよぶ名勝負を演じた錦織圭(写真/神 仁司)
新世界1位のマリーと、3時間20分におよぶ名勝負を演じた錦織圭(写真/神 仁司)

「試合の内容は悪くはなかったので、自信をもって次の試合に臨めると思いますけど、やっぱり負けは負けなので、ここまで競っても、負ければすべて意味は無くなりますし、最後はもうちょっと頑張りたかったですね」

普段はポジティブな錦織圭だが、さすがに試合直後には敗戦の悔しさをにじませた。

ATP男子テニスツアーの最終戦であるワールドツアーファイナルズ(11月13日~20日、ロンドン・O2アリーナ)のラウンドロビン(総当たり戦)4日目、第3シードの錦織圭は、第1シードのアンディ・マリー(イギリス)に、7-6(9)、4-6、4-6で、惜しくも逆転負けを喫した。

試合時間は、3時間20分で、ATPツアー最終戦での、最長の3セットマッチとなった。

第1セットだけで、1時間25分を要したが、お互い1度もサービスブレークを許さず、タイブレークにもつれた。錦織に5回のセットポイント、マリーに3回のセットポイントが行き交う接戦の末、錦織がセットを先取した。

「第1セットと第2セットの前半は、圭が、ほとんどのラリーで主導権を握っていた。たぶん他の誰よりも、とてもうまくボールを動かしていた」

このようにマリーは、錦織のグランドストロークを評価した。両者に大きな差はなかったと前置きしたうえで、ファイナルセット第3ゲームで、先に錦織のサービスゲームをブレークして、2-1としてリードを奪えたことが、マリー自身には大切だったと振り返った。

このゲームで錦織は、30-15から2度のダブルフォールトをして、マリーにブレークさせるきっかけをつくってしまい、結果ブレークされて、大事なファイナルセットの流れを手放してしまった。

第1セットを奪った直後も、少し集中力を落とした錦織が、第2セット第1ゲームをいきなりブレークされていた。第2セットもファイナルセットも、セットの序盤でブレークを許してしまうと、世界1位のマリーは、それをきっかけにして必ず巻き返してくる。

また、錦織がブレークポイントをつかんだ場面でも反省は残った。

「自分のミスだったり、ボールが浅くなったり、特にブレークポイントが取りきれなかった。第2セット、ファイナルセットもチャンスはあったのに、取りきれなかった。大事なポイントでのプレーが良くなかったですね。簡単に1ポイントを取らせてくれない」(錦織)

第1セット第3、5、11ゲームでそれぞれ1回ずつ、ファイナルセット第4ゲームで2回あったブレークポイントを、錦織がどれか1つでもブレークしていれば、マリーによりプレッシャーをかけられたかもしれない。

たしかにマリーとの差はあった。だが、舞台は、世界最高峰のツアーファイナルズ。相手は、世界1位のマリー。その状況下で、錦織が、今持てる力を出しきったことは評価したい。今回は負けたが、「ちょっと近づいている」と感じた錦織は、この敗戦を糧として、必ずステップアップできるはずだ。

錦織のラウンドロビンでの成績は1勝1敗となったが、準決勝進出をかけて、11月18日(ロンドン時間)に、ラウンドロビンの3試合目、第7シードのマリン・チリッチ(7位、クロアチア)と戦う。対戦成績は、錦織の5勝7敗だが、直近の対戦で、先月のATPバーセル大会決勝で対戦し、錦織は敗れている。

「しっかり体を戻して、臨みたい」と錦織が語るように、マリー戦を“フルパワー錦織”で戦った後に、フィジカルをどれだけ回復できるかが、チリッリ戦でのキーポイントになる。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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