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正念場のクルム伊達公子。203位からの厳しい戦いを乗り越えられるか!?

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
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「もう1回やる覚悟を決めていく心の準備はしています」

クルム伊達公子は、このような言葉を残して、2015年のウインブルドンを後にした。44歳の今、彼女が置かれている状況は、決して簡単なものではないが、クルム伊達らしい心に秘める闘志が感じられるような静かで力強い言葉だった。

ローランギャロスに続いてウインブルドンでも、クルム伊達は、シングルスは予選1回戦で負けたため、本戦ではダブルスのみの出場となった。今回もダブルスパートナーは、フランチェスカ・スキアボーネ。クルム伊達が44歳、スキアボーネが35歳で、二人合わせて79歳のペアとなった。

女子ダブルス1回戦では、6-4、6-2で勝利し、約半年以上けがに悩まされたクルム伊達だったが、いいプレーができたことで、彼女の表情は明るかった。

「今は本当に練習をしていても体が動くし、試合ではどうかなと思っていたけど、試合でも軽く感じられた。やっと動ける中で、テニスができている。それを積み重ねていきたいという気持ち。グランドスラムの中で、ダブルスとはいえ、いい環境の中で、いいモチベーションの中で、パートナーが、練習の時も試合の時も、引き上げてくれる。いい時間を過ごせていると思う」

2回戦では、第1シードのマルチナ・ヒンギス/サニア・ミルザ組と対戦し、クルム伊達は、「吹っ飛ばされる可能性もあるだろうし、かみ合えばタイトになる可能性もあるだろう」と語っていたが、ミルザのパワーとヒンギスのコントロール力と予測の良さに翻弄され、クルム伊達らは、いいプレーを見せることができず、1-6、0-6 わずか45分で敗れた。

「こうなる予想も当然あった中で、悪い方向にすべてなってしまったのは残念です。ダブルスでは、どこかでリズムが取れれば、流れが変わるということも多いんですけど、今日はそこにも至らなかった。本来ならば、私のスピードを活かしたいところを、うまく抑え込まれた。かみ合わない中で、風もあって、自分のいいところを出せなった」

一年後に、クルム伊達は、テニスの聖地に帰って来るだろうか――。だが、彼女が、長く感傷に浸っていられる時間はない。7月中旬からのハードコートシーズンに備えなければならないからだ。

現在、クルム伊達のWTAシングルスランキングは203位(6月29日付)で、2008年4月から現役再チャレンジを始めてから、200位以下に落ちたのは初めてのことだ。

「ディフェンドがあった時と、けががあった時が重なって、悪循環になったのが大ありなんですけど、現実にこうなったことは変えられるわけではない」

2010年頃に、グランドスラムの本戦出場を果たし、WTAツアーで活躍していた頃に、クルム伊達は、再びランキングを落ちて、ツアーレベルから下部のITF大会に出場しなければならなくなる時、現役を続けるのは難しいかもしれないと自ら語っていた。

「気持ちがついてこないんじゃないかなと思っていた時期も当然ありました。あのままけがを抱えて、出ないという選択肢もなかったわけでもないです。けれども、せっかく今元気になったので、もう1回、どういう結果になろうとも、ITFでやってみようという気持ちなので、その先のことは、今考えてないです」

また、クルム伊達のシングルスランキングが意味することは、グランドスラムの予選のボーダーライン上にいるということだ。8月下旬のUSオープンの予選に出場できるかどうか瀬戸際にいる。

ただ、彼女がけがからようやく解放されて、得意である夏の北米ハードコートシーズンに臨めることは好材料だ。

「もう1回、やる覚悟を決めていく心の準備はしています。その中で、体と相談しつつ、また自分の気持ちが見えてくるのかなと思っています」

正念場ではある。

だが、クルム伊達は、決してあきらめてはいない。彼女の双眸は、テニスをもっとやりたいという気持ちがみなぎるように輝いている。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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