民進党の新代表に前原氏~「嫌なら党から出て行け」という強烈なメッセージを打ち出せるか

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 民進党の新代表に前原誠司が決まった。前原氏は国会議員と国政選挙の公認候補予定者の票で250ポイントを獲得した。地方議員と党員・サポーターの252ポイントを加え計502ポイントとなった。枝野幸男氏は計332ポイントであった。直前の予想ではもう少し票差があると思われたが、枝野氏が、国会議員票で予想以上に健闘した。とはいえ接戦というよりも、順当に前原氏が選出されたと言える。

 民進党から離党者が相次ぎ、党の勢いが失われていることから、民進党の分裂の危機が語られている。特に党内保守層が、離党し、結成にむけて準備がされているとされる小池新党への参加を目論んでいるといわれる。枝野氏は共産党との連携を進める方向といわれるが、民進党左派はさすがに民進党を離党して共産党に入党というわけにはいかない。つまり保守系といわれる前原氏が代表になれば、当面の分裂を避けられるという判断が、今回の選挙結果にかなりの影響を与えたと考えられる。

 しかし、現在、民進党を取り巻く環境は非常に悪く、前原代表のもとでも、さらに離党者が出る可能性は高い。代表選では国会議員8人が無効票を投じた。国会議員票のウエートは重く、これからの党の方向を決める代表選で8人もの議員が、無効票を投じるというのは異例だ。それゆえに、まずはこの8人は「離党予備軍」との見方が広がっている。もちろん有効票を投じた議員の中にもかなりの「離党予備軍」が隠れていそうだ。

 政党交付金は政党に所属する衆参両院の議員の数を各政党に所属する議員の総数で割り、議員数の割合から算出される。助成金の半分は1月1日を基準として算出される。新党が月末に誕生することが多いのはこのためだ。おそらく小池新党は今秋に立ち上がり年末までに5名以上の国会議員を新党に入れ込んで来年1月1日を迎えることになる。まだ小池新党が立ち上がっておらず様子見の民進議員はかなりいるだろう。新党が立ち上がり方向性が定まらなければ民進からの離党は後援会への説明が難しい。だから現在のところ、離党議員の数は限定されている。現在の党勢では、あと1年あまりの間では確実に行われる衆議院選挙で、生き残ることができる議員はかなり少なくなりそうだ。小池新党が小選挙区の多くで候補者を擁立したら、小選挙区で民進党候補者が自民党候補者や小池新党候補者を打ち破って当選するのは容易ではない。また現在の民進党の支持率では、比例での民進党枠も非常に少なくなりそうだ。現在、比例で当選している議員は、よほどのことがないと次期衆議院選挙で当選する確率は低い。新党が誕生すれば、小選挙区で当選した議員だけでなく、比例で当選した議員も移ることができる。小池新党へ移ることを現実的に考えている議員はかなりいるだろう。

 実際に都議会選挙では、民進党はわずかに5議席と惨敗であった。都議会選挙では1人区は少なく、2人区~8人区まである。それで、この結果であった。衆議院小選挙区は1人の選択であり、もっと悲惨な結果になるかもしれない。

 10月に衆院3選挙区で補選が行われる。小池新党はその前に設立される可能性が高い。早ければ設立時に民進を離党、小池新党の創設時議員になることも考えられる。選挙が終わり11ー12月に民進離党、小池新党への加入が最もありうるパターンだ。前原民進が離脱をさせない戦略を取るのか、出たい者は出て行け、という戦略を取るのか不明だ。いずれにしても嵐の中での船出だ。

 前原代表は投票前の決意表明では、野党再編に向けて積極的な姿勢を打ち出している。前原氏は「私は他の勢力との連携や協力の可能性を排除しません。私たちの掲げる理念政策を高く掲げて皆さま方に協力をお願いします」と語っている。共産党を中心とした野党連合との連携も、小池新党との連携もオープンに対応していくということだろう。

 衆院小選挙区制の下では、選挙での「連携」が成功するのは例外的だ。自民党と公明党の「連携」は小党の公明党の抜群の組織力があってのことだ。前原民進党が「連携」できるのは共産を中心とした野党連合と小池新党になる。前原氏は共産との連携には慎重な姿勢を示しており、オープンに考えるといっても限定的だろう。本格的に行うとすれば小池新党との連携だろうが、実際には難しい。小池新党との連携が順調に行く可能性は低い。小池知事は前原民進党に対して、国会での政策協力について前向きな発言をしている。ただこれは、あくまで国会内での部分的な政策上の提携だ。選挙では民進党と小池新党は浮動票の奪い合いをせざるを得ずゼロサムに近い関係となる。「お互いに仲良く」連携して一緒に伸びるというシナリオはない。

 このままであれば次期衆院選では浮動票は小池新党に流れ民進党は大敗を喫す可能性が高い。前原氏が代表になったことで民進党を分裂させる核もなくなった。共産党との連携も小池新党との連携も中途半端になりそうだ。分裂もできず方向性が定まらない状態だ。「他の勢力との連携や協力の可能性を排除しない」というのは裏を返せば方向性が見えないということだ。

 私は、民進党が取るべき方向性は、民進党単独路線しなかないと考えている。民進党の政策には魅力がない。なぜなら党内に右も左も混在して、右にも左にも配慮していては、重要政策については曖昧な表現しかない。どこへ向かおうとしているのかわからないのだ。他党との連携ともなれば、ますます方向性を失う。しかも最大の「支援者」といえる浮動票層は、その「他党」と取り合いになるのだ。

 大きな方向性が描けないから、政権担当当時の民主党は高速道路の無料化や農家の戸別補償といった「小手先の政策」を目玉にするしかなかった。超目玉政策の事業仕分けも、方向性なき状態での導入であったから、結局はプラスよりマイナスの方が大きかったという評価をする人が多い。どれも現在では、話題にものぼらないものとなっている。「そういうのもあったな」というノスタルジックな感覚を覚える程度だ。安全保障政策はどうするのか、日本の次の時代の経済政策はどうするのか、などといった重要な政策には明確な方向性が今でもないといえる。「安倍政権の進める」憲法改正には反対、「安倍政権の進める」経済政策には反対、「安倍政権の進める」原発政策には反対、ということまでは主張できるが、その代替となる「民進党の進める」政策は曖昧にされたままだ。

 他党との連携よりも、魅力ある民進党の政策を打ち出して欲しい。その上で、嫌なら党から出て行け、くらいの強烈なメッセージを前原代表が打ち出せるかどうか。小泉純一郎氏は「自民党をぶっ壊す」という迫力で、疲弊しつつあった自民党の新たな展開を模索した。民進党は、「守り」の戦略で守れる状態ではない。新たな民進党を作るためにも、これまでの民主・民進党をぶっ壊す、という「攻め」の迫力がほしい。そうした新たな展開を期待したいが。。。。。。