プーチン大統領が北朝鮮に接近~米中露の微妙で危険な駆け引き

トランプ氏とロシア大統領 TIME誌「今年の人」の共通点(写真:Shutterstock/アフロ)

ソ連時代には北朝鮮とは密接な軍事協力をしてきた。そもそも朝鮮民主主義人民共和国、つまり北朝鮮の建国はソ連が主導したものだ。第二次世界大戦の後に、ソ連は朝鮮半島の北半分を占領し、ソ連軍抗日パルチザンの金日成氏を送り込んで、北朝鮮を作り上げた。朝鮮戦争では朝鮮半島の覇権をめぐってアメリカと戦った。冷戦時代には、ソ連は北朝鮮と軍事同盟を結び、北朝鮮の兵器の多くはソ連時代の中古品であった。それをベースに北朝鮮の軍事兵器が出来ていると言っていい状態であった。しかし冷戦の終わりは状況を一変させた。ソ連の後のロシア連邦と大韓民国、つまり韓国は1990年に国交を結び、それからはロシアは北朝鮮からほぼ手を引き、韓国との関係を重視するようになった。

ソ連崩壊後、軍事協力は事実上停止していた。2001年にロシアと北朝鮮は「防衛産業及び軍備分野における協力協定」と「2001年軍事協力協定」の二つの協定を結んだ。それもほぼ実質的なものにはならず、やっと最近になってこの軍事協力が具体化しつつある。プーチン大統領と金正恩氏との関係は良いとは思えないが、プーチン大統領にとって北朝鮮は対アメリカ関係、対中国関係から重要性を増しつつある。

北朝鮮の核実験やミサイル発射で国連が経済制裁を加える決議をしても、抜け道を作り、北朝鮮を支えてきたのは中国だけでなく、ロシアもだ。国境を超えてロシア領に北朝鮮の労働者が送り込まれ、外貨を稼いできたと言われる。

シリアを巡る米露の対立が明らかになってからは状況はかなり緊迫している。トランプ政権は4月6日にシリアで、アサド政権軍の支配下にある空軍基地に対し巡航ミサイルによる攻撃を行った。プーチン大統領とトランプ大統領は「仲がいい」と言われていたが、最近は一気に関係が冷え込み、このシリア空爆で敵対関係に近くなっている。

そしてトランプ大統領は北朝鮮への武力介入も辞さない姿勢を示した。プーチン大統領は、こうしたアメリカによる武力制圧に抵抗しており、北朝鮮を擁護する姿勢を見せ始めている。中国の態度は微妙だ。AFP=時事(4月15日付)は、中国が北朝鮮の核問題をめぐって高まっている緊張を緩和するためにロシアに協力を求めていることを報道している。中国もアメリカを牽制したいのだが、一国ではそれができない。ロシアを呼び込んでいる。ロシアは急速に朝鮮半島問題に入り込みつつある。

日経新聞(4月19日付)は「ロシア極東の主要都市ウラジオストクと北朝鮮北東部の羅先(ラソン)特別市をつなぐ貨客船の定期航路が5月に新設されることがわかった。北朝鮮の弾道ミサイル発射などに対する制裁に伴って日本への入港が禁止されている万景峰(マンギョンボン)号が就航する。」と報じている。経済制裁を決めている中で堂々と経済協力をしようというのである。明らかにアメリカの姿勢に反発している。北朝鮮にとってはアメリカが圧力をかけ、中国との関係も悪化し、日本が厳しい制裁を加えている中ではロシアとの関係は命綱といえる。「万景峰号」のロシアへの定期便化はロシアが北朝鮮を保護するという象徴的な意味も持つ。

トランプ大統領は、中国に圧力をかけながら、中国ができないならアメリカが軍事力を使ってでも問題を解決すると公言している。4月13日のトランプ大統領のツイッターだ。「I have great confidence that China will properly deal with North Korea. If they are unable to do so, the U.S., with its allies, will! U.S.A.」(中国が北朝鮮を適切に管理できると信じている。しかしもし中国ができなければ、同盟国とともにアメリカがやる。)中国を持ち上げているようにみえるが、中国にチャンスを与え、できなければ堂々とアメリカが武力行使をするという脅しだ。アメリカが武力行使をしても中国は文句をいうな、という牽制といえる。ちなみに同盟国とともに、とあるが、これはまず第一に日本のことだろう。日本は大変な役割を期待されているのだ。

ロシア・プーチン大統領はこうしたアメリカのやり方に真っ向から反対する可能性が高い。状況がさらに緊迫すれば、ロシアは、経済援助だけでなく、軍事援助にも踏み切るかも知れない。急に朝鮮半島がきな臭くなった。トランプ大統領、プーチン大統領、金正恩最高指導者という特異な政治家が揃った。いざという時、習近平国家主席はトランプ側につくのか、プーチン側につくのか。泥沼に入って欲しくないが、着地点が見えない。妥協を容易にしないトップが集まった。かなり危険な状況で、注視が必要だ。