北朝鮮の挑発継続は危険な信号~追い詰められている北朝鮮・金正恩政権

朝鮮労働党創建70周年 平壌で祝賀行事(写真:ロイター/アフロ)

北朝鮮の核実験やミサイル発射による挑発が止まらない。特に昨年からは明らかに以前のペースとは異なるスピードで核実験やミサイル発射が行われている。ソウル時事通信(2017年3月19日ソウル時事通信デジタル)によると「北朝鮮国営の朝鮮中央通信は19日、金正恩朝鮮労働党委員長が新たに開発された高出力ロケットエンジンの地上燃焼実験を視察したと報じた。」のである。これが本当とすれば、本格的な長距離弾道ミサイルが可能になる。CNNは3月17日付けの記事で、北朝鮮が近くミサイル・核実験の可能性があることを報じている。

こうした過剰なまでの挑発は、逆の見方からすれば、北朝鮮は相当に追い詰められているということでもある。北朝鮮はアメリカを挑発しているが、どう転んでも、北朝鮮がまともにアメリカに対抗できるはずがない。金正恩氏の「妄想」としても、さすがにこれは現実的ではないということはわかるだろう。

この背景には、中国・習近平政権と金正恩体制との間の確執があると思われる。金正日氏、及びその後継者の金正恩氏は、江沢民派と近い関係にあり、1989年から2002年の江沢民時代には、中国と北朝鮮との関係は比較的良好であった。2002年から2012年の胡錦涛時代にも江沢民派は重要ポストに就き、北朝鮮との関係も微妙にはなりながらも敵対する状況にはなかった。それが習近平時代に入ると、習近平派と江沢民派・胡錦涛派との対立が生まれ、腐敗キャンペーンなどでも江沢民派の大物メンバーが次々と摘発された。中国と北朝鮮との関係の急速な悪化が見られるのもこの頃からだ。2011年12月に第3代最高指導者となった金正恩氏は、習近平政権との溝を徐々に広げていったと考えられる。習近平政権が金正恩政権の後ろ盾となるとは全く思わなくなったのだろう。自らが自らを守る攻撃的な軍事政策にどんどんと突き進んでいった。中国からの度重なる指導と牽制を無視して、核実験やミサイル発射を繰り返し、それがさらに関係を悪化させる状態にさせた。

中国は国としては北朝鮮を支配下に入れたままにしたいのだが、金正恩政権は潰したいというジレンマに陥っていると考えられる。中国政府の極めて中途半端な対応がこのジレンマ状況を物語っている。北朝鮮の核実験やミサイル発射では、最近は国連安保理の批判声明を承諾しているが、実質的な経済制裁には後ろ向きな態度をとっている。金正恩体制には怒りながらも、北朝鮮を潰したくないということで、曖昧な態度となっている。

北朝鮮からすれば、韓国、アメリカ、日本だけでなく、中国をも敵にまわす形になり、完全に追い詰められたといえる。核兵器開発やミサイル開発もアメリカへの対抗策というよりも中国への牽制であるのではないか。北朝鮮がアメリカまで正確にミサイルを飛ばすのはまだ先の話だし、もしそうなったとしてもアメリカに決定的なダメージを与えることは無理だ。だが、北京、上海を狙うことは可能だ。1撃でかなりの被害を出させることは現実的なシナリオである。もちろんソウルもだ。これらの都市を人質にして、交渉をして新たな展開を模索するということだろう。

現在、韓国では朴前大統領の後の大統領選挙が行われようとしている。次の大統領に文在寅氏が就任することになれば、北朝鮮にとっては新たな展開を構想することができる。中国からも、アメリカからも独立する北朝鮮主導の朝鮮半島統一を模索することも可能になる。

しかし当然のことながら、中国にとっても、アメリカにとってもそうした動きはリスクが高く、容認するとは考えられない。核兵器とミサイルを保有した北朝鮮、しかも、アメリカと中国という軍事大国が絡んでいる北朝鮮に、武力攻撃することは、あまりに危険であり、動くに動けない状態でもある。現実的に考えられるのは、金正恩政権だけを替えるクーデターだ。金正恩氏暗殺計画が噂されるが、可能性は否定できない。ただ、あまり指摘されないが、逆に北朝鮮が習近平氏を暗殺するというシナリオもある。

北朝鮮は追い込まれている。中国が牽制しようと、アメリカが威嚇しようと、国連が制裁を加えようと、ますます攻撃的になっている。「窮鼠猫を噛む」の状況が本当に起こり、朝鮮半島が混乱に陥ることはなんとしても避けなければならない。難しいことだが、米中のコミュニケーションと米日韓の連携強化は不測な事態にも最低限の混乱で抑えるために重要だ。