中国の環境革命~「第三方環境治理」の展開は日系企業に大きなリスクと大きなチャンス

中国大気汚染問題 年末年始に深刻化(写真:ロイター/アフロ)

 2017年に入って益々中国国内は激震に揺れている。

 何が激震なのか?それは、中国人でさえ驚くほどのスピードと方針転換方法で中央政府が汚染された住環境改善に邁進しているからだ。

日本は「改革」の国だが、中国は「革命」の国だ。状況が整っているかどうかにお構いなく、一気に社会を変えてしまうのが中国だ。それまでの「前提」を崩して「破壊」と「創造」を同時に行う「革命」志向の国と言える。副作用も半端ではない。

中国の現状を理解するのに、日本在住の日本人が大前提として理解しなければならないことがある。それは、「原則」とは何かに対する考え方だ。

 日本人が考える「改善作業」とは、あくまで何らかの大前提となる「原則」を守りながらの改善を意味していることはご理解頂けると思う。徐々に徐々に改善していき、付随する副作用を抑えようとする。日本のやり方は時にはまどろこしいと感じる。

ところが、かたや中国人達が考える「改善作業」とは、日本人が大前提と考える「原則」さえも改善してしまうことを意味しているのだ。大前提の「原則」を破壊して、革命的変革を行うのだ。

 これまで日中韓三国間の関係においては、お互いに対する様々な誤解や理解不足が政治や経済に大きな影響を与えてきたといえる。この問題の根本原因はそれぞれの国民がこの「原則」をどう考えるかの違いにもある。

 つまり、中国や韓国に於いては日本人が侵してはいけないと思っている「原則」にまで手を入れて改革改善を進めてしまうのである。だから、今一番の懸案問題となっている「日韓合意」問題も全くもってこの発想、考え方の違いから来ていると見るとその解決策が自ずと見えてくるはずなのである。すべてを一新することを厭わない文化と連続性を基本とする文化の違いだ。100年以上継続している企業が日本には2万6000社あるといわれるが、中国、韓国では数える程しかない。歴史が変わるごとに企業も組織も一新される国と、企業や組織は修正しながらも生き残る国との差といえる。日本では第二次世界大戦を経ても、財閥は連続性を保った。自民党政権から民主党政権に変わっても、それからまた自民党政権に戻っても、官僚組織の連続性はそのままだ。いい意味でも悪い意味でもこれらは日本文化の象徴といえる。

 さて、中国政府が進める「原則」までも変更してしまうほどの環境改善政策は何なのだろうか?これまで、中国政府は、汚染物質を「排出した者が、自ら投資し、自ら解決せよ」と言う原則を貫き排出者へ責任を追及してきた。ところが汚染物質の「排出者」である企業主達は、生産や販売は専門家であっても自分が排出した汚染物質の除去には全くの素人であった。果ては、それを管轄する役人にしても同じ穴の狢だった。これが、腐敗という賄賂文化を土台に更に環境を悪化させてしまったというのが真実である。

 これを知った政府が取った対策こそが、「第三方環境治理」という手法である。自らも中国人として生まれ育ってきた彼ら政府役人達は、中国人の良いところも悪いとこも十二分に理解しているのは当然のことである。だから、これではイカン!とこれまでの「原則」までも変革してしまうしかない所まで来たというのが現実である。

 中国に於いても様々な資格制度、認可制度があり、政府が批准した認定機関、研究機関、測定機関そして監督機関がそれぞれの役割を果たしながら「原則」を守らせるように仕向けてきたのであるが、「先富論」が主導権を握っていた時代に於いてはこれらの機関はあたかも特権機関のような立場であって、それこそが腐敗の温床となってしまっていた。よって、政府は突然これらの批准を全て一旦白紙にして、新しい体制を再創造しながら改善を進めていくことを決心したのである。それこそが、「新常態」の真の意味であり、若い世代を中心にした入れ替え政策なのである。この事は余り日本国内では報道されていないが、昨年より環境やエネルギー関連の政府機関や国家機関のトップは全て人事交代が終わっており、ほぼ全て実権を握っているのは30代の若いやる気に満ちた青年達となっている。これこそが、共産主義国家の素晴らしいところでもあり恐ろしいところでもあると言えるだろう。

 まさしく本気で改革をやろうとしてる、のだ。改革が彼らの本質であることは歴史が証明しているではないか。日本のようにどのような体制になろうと「官僚」が実権を握り続けるということはない。漸進的な変革を徐々にやっていたら、自分の首が飛んでしまうリスクがある。改革はやるか、やられるか。命懸けの大勝負なのだ。日本のように失敗したら左遷、という程度では終わらない。完全失脚、刑務所送り、下手をすれば、処刑のリスクもあるのだ。すべてを一新させる革命的大改革に本気で取り組み、成功させるしか生き延びることができない。この本気度を理解しなければならない。

 にもかかわらず、中国進出の日系企業は未だ日本式の「原則」に拘って融通が利かないというなんともお粗末な状況と言わざるを得ない。これだけ政府も周りも変化しているのに、自らは相変わらず「本社の決済を。。。」とか「弊社はちゃんとやっています。。。」などと対策を後回しにしてしまっているが故に、環境違反企業として企業名を公表されてしまうという体たらくなのである。以前の記事「中国政府の厳しい新環境基準に日系企業はどう対応すべきか」でも紹介したとおりだ。

 本気で変革を起こそうとしている政府に対し、全然本気になれない日系企業首脳陣では問題が生じるのは当然のことだろう。高速道路で走行しているのに自分だけノロノロと40km/hで走っていたら交通違反切符を切られても仕方ないことと同様で、今中国で環境対策を取らないことは違反切符を切られ、操業停止に陥っても文句は言えないのである。逆にしっかりとしたスピードで走りさえすれば、何の問題も無く走行が可能であるのだ。

 そこで何よりもまず知るべきは「第三方環境治理」の意味するところだ。簡潔に言うならば、これまでは「自ら汚染を解決せよ」だったのが「第三方の専門機関に委託し解決せよ」に変わったということだ。こうすることで、未経験や無知なる業者による「形だけ改善」や「改善やったやった詐欺」、果ては腐敗の温床さえもが巣くうことのできない環境が生まれてくるのだ。

 もちろんこれが最善の方策だとは中国政府も思ってはいないだろう。これまでの中国的手法であれば、この第三方の専門機関を腐敗させる、という方向に行きかねない。しかしこの第三方の専門機関へのチェックも厳しくなり、専門機関も本気で取り組まなければ、彼らの首が飛ぶという状態になりつつある。

 信頼できる第三方の専門機関を選ぶことが重要だ。日本と中国の産学連携の機関が立ち上がっていることは頼もしいことだ。2015年12月25日、JETRO上海代表処が旗振りを行い、JETRO、同済大学緑色建築及新能源研究中心、上海同済科技園有限公司の三方合同の支援の下、新しい産学プラットフォームが設立された。このプラットフォームは同済国際グリーン産業創新センターと命名されている。詳しくは小生の記事「中国で日本企業主導の産学連携プラットフォーム発足」を参照されたい。そうしたところに相談するのも必要だろう。この分野には中国系も日本系も様々な「環境コンサル」が存在する。レベルの低い「環境コンサル」も存在し、痛い目にあった企業も少なくない。異文化・異制度を理解したうえでの総合的な判断が求められている。

 常に走りながら変化して行くのが中国の常套手段であるから、これからも大きな変化はあるかもしれない。そんな事をしっかり理解した企業の首脳陣の知恵が今こそ必要なときなのである。

 中国の環境破壊は激しい。それだけに、革命的手法を取らざるを得ないということもあるだろう。これがどこまで効果を持つかはわからない。言えることは、この中国環境革命はすでに起こっているということだ。対応しなければ、日系企業も「やられる」だけだ。日中間のこの根本的な違いを十分に理解し、郷に入っては郷に従った発想と対策で乗り越えていって欲しい。こういう変化の時こそ、大きなチャンスなのである。

 大きなリスクと大きなチャンスが同時にやってきている。