中国政府の厳しい新環境基準に日系企業はどう対応すべきか~環境保護局が公開する違反企業の実態とリスク2

中国 上海 大気汚染 (2016年12月5日)(写真:ロイター/アフロ)

 中国の変化は凄まじい。数年前の感覚で捉えていれば、あっという間に足をすくわれる事態がやってくる。「中国は環境後進国で、日本の環境技術で適当に対応していれば問題はないはず」とか「中国は賄賂の国で、融通がきく」という前提で考えていると大きな問題となる時代がやってきた。中国は急速に変化する。むしろ変化が遅いのは日本だ。

 2016年の5月25日付けで筆者が警告した記事「中国政府の厳しい新環境基準に日系企業はどう対応すべきか~環境保護局が公開する違反企業の実態とリスク」が現実となった。中国政府の変化はもう「脅し」や「警告」のレベルではない。本格的な環境改革が起こされようとしている。もちろん、中国での規制や改革は完璧に行われるわけではなく、ムラがあり、一律には行われない。同じことをしても見逃してくれる場合も、厳しく罰せられる場合も出てくる。そうであるだけに十分な対応が求められるのだ。

 以下の記事は、2017年1月号 月刊 「FACTA」で発表された記事の一部である。

「中国当局が苛烈な環境規制 処分を受ける日系企業続出」

『中国政府の環境規制強化に伴い、日系企業の摘発が相次ぐ。大気、水、土壌など深刻な汚染の実態が明らかになるにつれ、中央政府も環境規制に本腰を入れざるを得なくなった。なかでもエコ意識が高い沿岸部では、「日本に比べ中国は環境基準が緩いという認識はもはや通用しない」(日系食品メーカー)。排水や揮発性有機化合物(VOC)の一部項目では、日本を上回る基準を課せられ、クリアできない日系企業が増えている。1万社を越す日系企業が進出している上海市では、環境保護局が違反企業をホームページで公開している。ほとんどが中国系企業だが、日本企業も例外ではない。ちなみに2016年1月~10月に約40社の日系企業が罰金や生産停止処分を受け、三井化学、花王、ダイキン工業、JUKI、クレハといった名だたる大企業が槍玉に挙がった。罰金は、概ね10万~50万元(160万~800万円)だが、違反を繰り返し、大幅に加算されるケースもある。』

 この事実は、筆者の上記の記事でもご紹介した内容であるが6月以降も処罰を受ける企業は増え続けていることは間違いないようだ。日系企業は環境技術では世界のトップクラスだ、という先入観があるだけに、中国で日系企業が環境規制で処罰を受けるというのは信じられない状況であったが、実際に起きている。これが現実だ。また、同記事は、『環境保護当局は自らの存在感を示すため規制強化に突き進み、日系企業は変化への対応が遅れている。日本の本社の無理解と中国当局の規制強化に苦しみ、厳しい処分を受ける日系企業が続出するだろう。』と結んでいるが、残念ながら問題提議はしつつもどうやって解決すべきかにまでは言及できていない。中国の変化についていけず、ぼう然としている日系企業の姿がある。本気で対応しなければならないのだ。

 以前より筆者はこの事実を紹介しずっと警笛を鳴らしてきたが、その重大性に気づかないのか日本企業の対策はずっと後手後手に回ってしまっている。しかし、来年以降その締め付けは増すばかりであり、対策の遅れが足枷となり中国事業所の経営に大きな陰を投げかけることは間違いない訳であるから、今ひとたび有効的な解決策は何かを纏めてみようと思う。

 「中国では役人との人間関係で全てが上手く行く」という過去の幻想を今も抱いている企業経営者が多く、現地の担当者に「当局との飲みニケーション」「役人を抱き込め」などと指示を出す本社も多いようだがそれは既に過去の話。私の記事「中国事業所における商業賄賂問題についての一考察~中国では99%の企業が商業賄賂問題を抱えている」を再度読んで貰いたい。中国における賄賂の問題は日系企業を苦しめてきた。むしろ賄賂が厳しく規制される新たな状況は日系企業にとっては追い風だ。状況の変化をはっきりと捉え、迅速で明確な対応をすることが求められている。賄賂や変則的な人間関係に頼るのではなく、真正面から環境対策に取り組む姿勢が必要なのだ。

 これまでの腐敗を一掃することを断言している習近平総書記は、環境に絡んだ不正については特別な監察組織(環境警察)を編成し容赦しない事をアピールしている。因みに、中国中央政府環境保護部は大気汚染の悪化にともない特別監察団を組織し12月16日付けで以下の重点地域への監察を行うことを発表している。重点地域とは、北京、天津、河北、山西、山東、河南省(市)各地である。日系企業も相当に進出している地域だ。これは既に報告されている大気汚染対策案を正しく実施しているかどうかを厳しくチェックすると言うことであり、各地域の役人は日時も知らされず突然の訪問を受け入れざるを得ない状況であると現地友人からは報告を受けている。

 さて、ではこのような状況下日系企業はどのような対策を取るべきだろうか。これまでであれば、間違いなく相談相手となるのは日本本社の専門家による監査、弁護士かビジネスコンサルタントであった。ところがこれまでにも指摘しているように、彼らにはこれらを解決する経験も知恵も無いという現実の壁が存在する。もう時代は新しい次元に入ってしまっている。これまでの「法則」をベースにすると逆に落とし穴に嵌ってしまう。

 そんな状況を知ってか、12月1日にJETRO本部で開催された「中国・韓国最新経済動向セミナー」においてJETRO上海事務所の小栗所長は、現地の事情を鑑み以下の様な解決策を紹介されている。

『「会計監査」と同様に、専門家の正しいオピニオンが必須。素人が生半可な知識や経験で対応できる状況ではない。従って、「環境・エネルギーの専門監査を受ける」ことが解決策の選択肢に。必須条件として、1)中国法規・規制の専門知識 2)対応策に対する技術・方策を熟知 3)現地の現場事情に精通』

 中国の「新常態」にあって、今まで通りのやり方では役に立たない状況に陥っていると言うことを知るべきなのである。

 では、この条件を満たす相談相手は誰なのだろうか?簡単に解決できる状況ではないが、一つの方策として「同済国際緑色産業創新中心」がある。中国と日系企業を結ぶ産学連携の組織だ。彼らの設立目的がまさしく今の状況を打破するための手助けとなる事は間違いない。新しい風が吹いている。日本と中国を結ぶ産学連携の展開が進んでいることは非常に心強い。『中国で日本企業主導の産学連携プラットフォーム発足~「同済国際グリーン産業創新センター」への期待』を今一度読んで貰いたい。

 筆者がこれまで一貫して主張してきたことは、以下のことである。

『これまで日本の企業群は、どうしても中国の変化の波に乗りきれずビジネスチャンスを逃すことが多かったが、このような斬新な取り組みでリスクを回避しつつもビジネスとして大きな実績を残してくれることを期待してやまない。中国も本気モードに入っている。それくらい環境問題は深刻化しているのだ。しっかりとリスクを認識し、回避することができなるなら、これまでとは異なったレベルでのチャンスが到来したと言える。』

 中国の変化は激しい。それだけに戸惑いもある。ただしっかりと対応するなら、この変化はむしろ日系企業にプラスの展開だ。まさしく、今こそピンチをチャンスに変える時ではないだろうか。