スキャンダルと東京都知事選

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

東京都知事選が迫ってきた。もともと舛添前知事の急な退職を受けての選挙だけに、選挙が決まってから選挙までの期間は短い。立候補を表明したのも皆、かなりギリギリになってからだ。主要な候補者の中で最も早かったのが小池百合子氏で6月29日に出馬表明をしている。増田寛也氏は7月11日、鳥越俊太郎氏は7月12日である。告示日が7月14日だから、小池氏が半月前、増田氏が3日前、鳥越氏が2日前の出馬表明となる。

この3人に関しては、出馬表明をしてから週刊誌などを中心にスキャンダル探しが続いている。普通は告示を過ぎるとメディアも自重するのであるが、出馬表明から告示までがこれだけ短いとなると、記事も選挙期間に入ってからになるというのも理解できないわけではない。

主なスキャンダル記事をみてみよう。

まず、小池百合子氏だが、彼女は出馬表明が早かったこともあり、序盤では最もスキャンダル記事が書かれた。週刊文春は「小池百合子都知事選候補『政治資金』が怪しい」と題した記事で、不明瞭な政治資金について書いている。その後も政治資金に関しては週刊文春だけでなく、日刊ゲンダイデジタルなどが記事にしている。

増田寛也氏に対しても、社外取締役であった東電との関係などが批判的に記事に書かれている。また岩手県知事時代に公共事業で県の借金を大きく増やしたことも批判的に書かれた。しかし、小池氏や鳥越氏に比較するとかなり小さい扱いだ。

最も衝撃的に書かれているのが鳥越氏だ。週刊文春が「淫行スキャンダル」を報じた。平成14年に当時大学2年だった女子学生に強引にキスをし、ラブホテルに誘ったなどとする記事だ。14年前の話であり、記事が正しいとしてラブホテルに誘って断られて実際には行っていないことである。ただ、清潔なイメージのある鳥越氏にとっては、女性票が逃げる可能性もあり、かなりの衝撃である。

ここからが本論だ。最近の選挙では、スキャンダル・醜聞記事が票を減らすということに直接的に結びついていないことが多くなっているのだ。受け答えによっては、批判記事でも書かれる方が、何も書かれないよりもいいというのが最近の選挙の傾向だ。政治に関心を持たない人が多くなり、とにかくメディアを賑わしている名前の方がいいという感じと言えるだろうか。特に戦う姿勢をみせると逆に選挙では有利になることもある。

小泉純一郎首相(当時)が郵政民営化で衆議院を解散し、総選挙に打って出たとき、マスコミはこぞって小泉首相を自爆選挙として批判した。そして自民党をぶっ壊すといいながら、刺客候補者を有力候補者にぶち当てた時、猛烈な批判をした。しかしそれは同時に刺客候補に注目を与えるということになり、結局は小泉自民党は大勝したのである。

さらに典型的なのが橋下徹氏のケースだ。橋下氏は大阪府知事選、大阪市長選に立候補し、大勝している。それらの選挙の期間、橋下氏は不倫スキャンダルなども徹底的に記事に書かれた。コスプレ不倫なども書かれ、「多くの子どもを持って幸せな家庭を築いている」というイメージを崩された。週刊朝日は出生に関する記事まで書いた。これはメディアとして卑劣だ。ただ、こうした記事によって、橋下氏はかなりの打撃を受けたことは確かだ。一般的に考えると、知事選や市長選を戦える状態ではない。しかし、実際には橋下氏は、嫌う人も増やしたかもしれないが、ファンも増やし、選挙では大勝しているのだ。不倫スキャンダルにも耐えたというか、それさえも味方にしたといえる。

東京や大阪など大都会での選挙では、「話題になる」ということが非常に重要である。皮肉なことに「いいこと」では話題にならないのだ。スキャンダルで「話題」になり、そしてそれに対する対応が良ければ、逆に大きな票を獲得することができる。小泉氏や橋下氏の「戦う姿勢」は批判記事をむしろ味方につけたといえる。橋下氏は不倫スキャンダルでは、「妻や子どもに謝り続け」たことが報じられ、真否は定かではないものの妻からの激怒のビンタも受けたと言われる。これが好感を受けたとは言い難いが、とにかく話題となり、大勝に繋がったことは確かだ。

現在、東京都知事選で最もホットなのは鳥越氏の女性スキャンダルである。これで鳥越氏は終わったという人もいる。しかし、大都市選挙ではどういうものでも話題になる方が話題にならないよりも有効だ、というのが法則になっている。ただこれにも条件がある。そのスキャンダルや話題への対応だ。小泉氏や橋下氏は、マジックのようにそうした批判の声を活用しながら票に結びつけた。鳥越氏の対応は今のところ、小泉氏や橋下氏のやり方とは反対のことをやっているように思われる。今後の対応も問われることになる。

批判の強かった小池氏と鳥越氏は話題度では圧倒的になっている。増田氏はメディアからの扱いも静かだ。しかし、この静けさは東京都知事選のような大都市型の選挙では不利になる。今のままだと、小池氏と鳥越氏が話題をさらい、批判への対応によって票が分かれる、という感じになっている。

政策論争がほとんどない、と嘆かれる。その通りだ。何度もしっかりとした公開討論会を開催することも必要だろう。告示を過ぎているから合同個人演説会というスタイルになるが、本当は3回ぐらいは行われるといい。今回の選挙では流石に無理だろうが、将来的にはもっとたくさんの公開討論会・合同個人演説会を企画することも重要だ。

ただ、同時に大都市型の選挙の特性も知っておかないと選挙には勝てない。スキャンダル記事が選挙を支配するのは問題だ。しかし現実にそれは最近の大都市選挙では大きなポイントになっている。