オバマ大統領、広島訪問へ~今こそ、ヒロシマ・ナガサキプロセスの展開を!

(写真:アフロ)

 オバマ大統領が5月27日に広島を訪問する。1945年に広島に核兵器を投下し、広島を生き地獄の町にしてから71年。現職のアメリカ大統領が初めて、広島を訪れる。

 広島の平和公園にある慰霊碑の石碑前面には、「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」と刻まれている。この「過ち」の主語は誰か、がいつも問題になる。浜井信三広島市長(当時)は「この碑の前にぬかずく1人1人が過失の責任の一端をにない、犠牲者にわび、再び過ちを繰返さぬように深く心に誓うことのみが、ただ1つの平和への道であり、犠牲者へのこよなき手向けとなる」と述べている。すべての人が過ちの責任を負い、過ちを起こさないように誓う、というのだ。そしてこの言葉は、この発想をうけて、被爆者である雑賀忠義広島大学教授(当時)が撰文・揮毫したものといわれる。

 現在、広島の被爆者に「加害者」としてのアメリカを憎み、謝罪や弁償を求める人は少ない。今回のオバマ大統領の広島訪問に関しても、被爆者の9割が歓迎しているといる世論調査も出ている。20万人とも言われる市民の命を奪い、生き残った人にも生き地獄の苦しみを与えた原子爆弾。その原子爆弾を投下した国をこうも簡単に許した被爆者。しっかりと考えてみる必要はある。

 「過ち」を犯したのは誰か、という問いへの議論は複雑になる。戦争の原因について議論をしていくと非常に厄介な論争に入り込む。私が問いただしたいのは、「過ちは繰返しませんから」という言葉だ。100歩、1万歩譲って、アメリカの広島・長崎への原爆投下は、「民主主義を守るため」であり「犠牲者を増やさないため」であったとしよう。しかし、アメリカは翌年にはすぐに核実験を始め、核軍拡競争へと突っ走っている。その後、核兵器大国、軍事大国として世界に君臨し、朝鮮戦争、ベトナム戦争、中東戦争など多くの戦争、紛争に直接的、間接的に関わり、多くの犠牲者を生んでいる。確かに長崎以降には核兵器を直接使用したことはないが、多くの核実験で被曝者を生み出したし、キューバ危機の時のように核兵器の使用の可能性に触れたこともある。到底、「過ちは繰返しませぬから」という言葉のような言動ではない。

 戦後の軍拡路線を見る限り、そして戦争への関わりを見る限り、アメリカが「正義と民主主義」の国であり、「世界平和を守る警察」とは思えない。アメリカは明らかに過ちを犯してきたし、さらに犯そうとしている。

 オバマ大統領個人をみてみよう。オバマ大統領は、大統領就任直後、有名になったプラハでの演説で「核兵器のない世界」のために努力することを約束し、ノーベル平和賞まで受賞した。オバマ大統領への期待は高まった。しかし、大統領就任期間の7年余の間に、核軍縮、核廃絶にむけた特別な業績は見当たらない。あえて言えるとするなら、今回の広島訪問くらいである。プラハに始まって広島に終わるというオバマ大統領の核廃絶への行動だが、肝心のプラハから広島の間の実践は欠けている。

 私はそれでもいい、と思っている。オバマ大統領が広島に来て、被爆の実相を見てくれることは次のステップに繋がるのではないかと期待しているのだ。オバマ大統領はまだ54歳。この夏で55歳になる。大統領をやめてからの人生が長いのだ。現職大統領では様々な規制も抵抗もあり、できなかったことを退職後に行うことが可能なのである。カーター元大統領も現職の時よりも退職してからの活動の方が印象に残っている。

 これからの残された大統領在任期間でできることは非常に限られている。 しかし、退職以後に核兵器廃絶のために大いに活動をしてほしいと願っている。今回の広島訪問はその活動の原点になるのではないかと期待している。

 私が提案し続けているのは、ヒロシマ・ナガサキプロセスである。対人地雷禁止条約を実現したオタワプロセスやクラスター爆弾禁止条約を実現したオスロプロセスのように、核兵器を禁止していくためのヒロシマ・ナガサキプロセスの実現である。まずは、核兵器先制使用禁止条約の 実現である。こうした具体的な目標を持って、一つ一つ着実に非核の世界の実現を目指すことが重要だ。

 オバマ大統領が広島でどのような発言をするか。しかしそれ以上に、今後、オバマ大統領がどのような活動をしていくのか。熱く見守りたい。