オスプレイの熊本地震での物資輸送を考える

(写真:アフロ)

熊本地震の被災地への輸送手段として、在日アメリカ軍は輸送機MV22オスプレイを使いました。ジョン・ドーラン司令官は声明で、「日米同盟と日米の友情を際立たせる活動だった」と言っています。被害日本大震災の時のいわゆる「トモダチ作戦」の延長とも言えます。発表によれば熊本県南阿蘇村などに届けられた食料や水などの支援物資は計約36トンに上りました。オスプレイは2機態勢で、19日のみ4機出動しました。

これには賛否両論があります。まずはとにかく、困っている地域に物資を輸送し、被災者を助けたことはしっかりと評価すべきだということです。36トンの物資はすごく大きいわけではないにしても、小さいわけではありません。特に孤立していた阿蘇村などへの物資輸送は大きな意味を持ちました。

しかし、本当にオスプレイが適当であったのかどうか、は議論の余地があります。オスプレイの導入に対して議論があっただけに、オスプレイの実績作りのための政治的配慮があったのではないかという否定的なみ方があります。

私は、政治的な意味は当然としてあったと思います。「軍」が動くとき、ただ単に「ともだち」としての利他的な目的で動くことはありません。必ず、なんらかの意味があってのこと。ポイントはその「政治的な配慮」が結果として救援に意味があったかどうか。私は当たり前の意見ですが、意味があったと思います。道路が封鎖されていて孤立状態のところに物資が運ばれることは大きな意味があります。まずはこの点は確認しましょう。

また議論の一つに、アメリカ軍からの申し出なのか、日本政府からの依頼なのかということがあります。琉球新報(2016年4月5日付)は以下のように報じています。

『19日付の米軍サイト「dvids」は空輸支援活動は「日本政府の要請に基づき提供している」と明記している。17日付の米軍準機関紙「星条旗」電子版も「日本政府が土曜(16日)に米国務省に支援を願い出た」とする米政府当局者の説明を掲載している。

一方、同じ17日の朝、安倍晋三首相は米軍の空輸支援について「申し出があるが、今直ちに支援が必要だという状況ではない」と報道陣に説明し、支援は米側の申し出によるものとの認識を示していた。中谷元・防衛相は18日の国会答弁で「米側から協力申し出があった」としており、日米の説明に食い違いがある。』

どちらが先に話をしたのかは、この場合にはあまり大きな問題ではありません。両政府にとって、オスプレイの価値を示すことは意味があります。話になれば、両政府とも合意したといことでしょう。

ただ、オスプレイが本当に適当な運輸手段であったのかどうかは、政治的な意図とは別に考えておきたいところです。

オスプレイは、ヘリのように垂直離着陸や空中停止することも、飛行機のように水平に高速飛行することも可能です。時速も約500キロもでますし、航続距離は約3900キロメートルで、他の物資輸送のヘリコプターよりもはるかに早く、遠くまで運べます。ヘりとプロペラ機のイイとこ取りといった優れた軍事輸送機です。

ただこの特性が活かされるには、輸送距離が長く、なおかつ物資輸送の場が厳しい場所であるなどの想定が必要です。軍事的にはそうしたケースはありますから、この優れた輸送機は意味があります。ポイントは今回の地震においてこの能力が必要であったかです。岩国から熊本へは300キロくらいの距離です。輸送用ヘリであれば、北九州からでいいので、150キロ位の距離でいいのです。とすれば、自衛隊が保有しているCH47で十分です。

輸送できる貨物量もCH47は優秀です。自衛隊はCH47を多く保有しています。輸送量も条件によりますが、今回のような場合であれば、オスプレイよりも優位性があったと考えられます。

実際に、4月18日から23日までの2機ー4機の輸送での36トンの輸送物資量はCH47使った場合より優位性があったとは言えないでしょう。日本国内の物資輸送であれば、自衛隊が保有するヘリで十分です。

滑走路のある飛行場も使えるようになると、輸送用プロペラ機が優位性を持ちます。速度、輸送量、燃費などで輸送用プロペラ機は重宝されます。

オスプレイは、ヘリとプロペラ機の両方の特性を持った素晴らしい機能を持っています。しかしその機能は特定の条件下において発揮されるものです。フィリピンの大型台風やネパール地震などではその機能が発揮されました。

今回のケースはかなり微妙です。ただ、政治的な思惑があるからこそ、そこまでの支援が可能であったといことも確か。企業なども支援をしていますが、それも企業のイメージアップと重ねてのこと。純粋に利他的に支援する企業はほとんどありません。まずはアメリカ軍への感謝です。しかし同時に今後においてはより効果的な支援をどのようにするかは、しっかりと議論しておく必要があります。

自衛隊が保有している輸送ヘリの性能には素晴らしいものがあります。非常に多くの輸送ヘリを持っています。それを非常時にしっかりと活用できる体制づくりも求められます。

被災地への物資輸送にオスプレイを使ったことに関しての議論は熱いものがあります。 賛成する人も反対する人もかなりの激論を交わしています。冷静に被災者救済のためにどう考え、何をすべきか。はじめから肯定したり、否定したりするのではなく、被災者救援のための冷静な考察が求められます。