荒れるブラジル~オリンピックも絡んで政界は揺れる

(写真:アフロ)

2016年8月5日のリオデジャネイロオリンピック開幕まであと143日が残されるだけになりました。世界のスポーツの祭典のホストとなるブラジルは激しく荒れています。3月13日にはジルマ・ルセフ大統領の退陣を求めるデモが行われ、全土で約300万人が参加したと報道されています。この種の数字は正確ではないのが一般的ですが、それでも非常に多くの人がデモに参加したことは確かです。リオデジャネイロやサンパウロでは大集会が開催されたといいます。特にサンパウロでは野党の支持基盤が強く、州警察によれば参加者数は140万人と「歴史的」な数を記録しました。

ブラジルは今、四重苦、五重苦ともいえる最悪の状態になっています。ブラジルは資源大国です。資源の価格は2013年くらいまでは急に上がりました。それはブラジルの大きな富をもたらし、期待感も手伝って、ワールドカップとオリンピックの両方を誘致するという華々しい成果を挙げていました。しかし最近は原油や鉄鉱石を含め、資源価格が急落しました。それはブラジルの経済を直撃しています。ブラジルは中国への輸出が大きな割合を占めていましたが、中国経済が停滞し始め、ブラジルにも大きな影響を与えています。そこに国営石油会社ペトロブラス(Petrobras)にからんだ大規模な贈収賄疑惑が始まりました。ルセフ大統領の後見人的な立場のルーラ前大統領がマネーロンダリング(資金洗浄)の容疑で訴追されました。捜査はルセフ大統領の側近にも及ぶ可能性があります。経済の低迷は財政の逼迫を生みます。バラマキ的な資金の使い方でルーラ前大統領は国民的な人気を誇っていたのですが、今はそうした資金もなくなり、ルセフ大統領は福祉や教育費をカットするという批判を浴びるようになっています。オリンピックへ資金を回すと、今の状況だとかえって批判を浴びるという状況です。ジカ熱の流行も予期していなかった悪夢です。せっかくのオリンピックですが、観光産業へのプラス効果は薄れます。ブラジル南東部では3月10日~11日にかけて大雨が降り、サンパウロ周辺で地滑りが起きたり、洪水となりました。

この状態ですから、ルセフ大統領の弾劾請求手続きの迅速化を要求し、退陣を求める声が高まるのは当然と言えます。経済の低迷も長期化する見込みです。収賄事件の展開は、激しい反政府運動を巻き起こします。ワールドカップ前にもこうしたデモや集会がありましたが、今回は本気で政権を倒しに来ていると思われます。

最大政党として連立政権の一翼を担うブラジル民主運動党もルセフ大統領を守り続けるかどうかわからなくなっています。すでに有力議員は与党・労働者党との連立を解消する方針を示唆しています。デモや集会が本格化すれば、政権にとどまっていること自体がマイナスになります。ルセフ大統領を見捨てる可能性があります。こうなると年内に大統領が弾劾されることになるでしょう。

おそらくその前にルセフ大統領は辞任をすると考えられます。それがオリンピック前か後か、が問題になっています。

前回の大統領選挙でも経済の低迷はかなり感じられていました。ルセフ大統領の再選は無理という声もあったのですが、貧困層の人々はルセフ氏を選択。僅差で、社会民主党のアエシオ・ネバス氏を破ったという選挙でした。ルセフ大統領の支持率は一桁台にまで落ちています。民主運動党が見捨てるなら、早めの退陣の可能性もあります。

オリンピックが近づくにつれて、世界のメディアの関心が高まるなか、反政権運動はさらに活発化するでしょう。オリンピックどころじゃなくなる、可能性が高いのです。退陣するなら早期の決断で、オリンピック前に新大統領となるのがいいでしょうが、そうはいかないでしょう。ちょうどオリンピック直前あたりに政治の大混乱が重なることが予想されます。こうなると何が起こるか予想しづらい展開です。

ワールドカップの時のように、デモや集会はあるけど、大会そのものは無事に終わりました、という平和なシナリオにはならないと思います。オリンピック前にルセフ大統領が辞任を宣言し、オリンピック後に大統領選挙というのが最も現実的なシナリオでしょうか。いずれにしても、オリンピックも絡んで目が離せない状態です。選択を誤れば、オリンピック自体も大混乱になりうる状態です。