ブラジル・前大統領が汚職で追訴される~オリンピック前に反政府デモの嵐か

(写真:アフロ)

ブラジルを取り巻く環境は悪化しています。景気の低迷、汚職、ジカ熱、インフレ、政治の混乱、治安の悪化、環境の悪化などリオデジャネイロ・オリンピックには悪条件が揃いました。「本当に大丈夫なのか」という声も聞こえます。それに対しては、「これまでもオリンピック前には準備が整っていないということで不安の声が出ることはたくさんあっても、それをクリアしてきたのがオリンピック。問題ない」という声が返ります。確かにリオ・オリンピックでは施設の準備はかなり整いましたし、普通であれば、問題なく開催され、成功すると予想される状況です。

しかし、今のブラジルは何が起こるかわからない状況になりました。ブラジル・サンパウロ州の検察当局は資金洗浄(マネーロンダリング)捜査に絡み、ルーラ前大統領を訴追したことが報道されています。このまま行くと裁判に発展します。ルーラ前大統領側は、「前大統領の名声を汚すことを意図したもの」として抗戦する態度ですが、状況は厳しくなっています。選挙参謀として、ルーラ、ジルマを当選させてきたサンタナ氏とその夫人に、

逮捕命令が出されています。大統領選挙請負人とまで称せられたサンタナ氏から証拠がでれば、ルーラ前大統領だけでなく、ジルマ・ルセフ現大統領の立場も崩れる可能性があります。

ルーラ前大統領の身柄拘束を防ぐために、労働党メンバーは奇策を要求しています。つまりルーラ氏に閣僚ポストを与え、閣僚の地位で、逮捕を防ぐというものです。閣僚に任命されれば、ルーラ氏は最高裁でのみ審理を受けることですみます。これをルセフ大統領に要求しているようで、ルセフ政権も前向きに考えているようです。しかし、こうなると、国民は許さないでしょう。ルセフ大統領がルーラ前大統領の汚職を庇うという形になり、それならルセフ大統領も汚職に絡んでいるのではないかと捉えられます。

すでに3月13日には全国で大規模な反政府抗議デモも計画されています。これからオリンピックが近づくと、海外のメディアの関心も高まります。反政府抗議デモや集会は激しさを増すと予想されます。ルセフ大統領の支持率はすでに1桁台。まだかつての英雄のルーラ氏の方が人気があるようです。これからオリンピックに向けての資金を入れ込む作業が必要になります。予定した資金がこなくなったり、ジカ熱などの対策で追加予算が必要となれば、政府資金を注ぎ込まざるを得ません。福祉や教育などへの予算を削りながらの対応になりますから、国民の反発は必至です。

次々と逮捕者が増えてくると、証拠も豊富になります。ルセフ大統領の弾劾にまで繋がる可能性も出てきました、弾劾の手続きには下院の3分の2以上の賛成が必要です。ルセフ大統領側は3分の1以上の支援議員をもっていますから、まずこれはないと考えられてきましたが、このような状況では、弾劾に進むことも十分に考えられます。その前におそらくルセフ大統領は辞任すると考えられています。

今からオリンピックまでブラジルの政治は大きく揺れ動く可能性が高いのです。もちろんルセフ大統領はオリンピックという国家事業を自分の手で成功させたいでしょう。少なくともそこまでは大統領でいつづけ、その余韻で、支持率回復を図りたいところです。

しかしそれまでにブラジルの政治環境は大きく動く可能性があります。オリンピック前の大統領辞任の可能性も十分に考えなくてはなりません。政治が大混乱の中でのオリンピック。足りない予算をどうするのか。治安の安定は可能なのか。オリンピックどころではない混乱もありうるのです。

4月、5月、6月は混乱の時期になるでしょう。ルーラ前大統領の逮捕があるのかどうか、なども大きなポイントになります。経済の低迷は当分続きそうです。難しいと言われたブラジルの海底油田開発。原油価格が急落した今、残ったのは賞賛の声ではなく、罵倒の声と大きな借財と汚職の履歴です。