原油価格下落と今後の展開を考える~生まれる余裕で省エネ技術・新エネルギー開発を!

(写真:アフロ)

原油の価格が下がってきました。今、やや持ち直しているものの、長期的な安値安定の可能性が出てきています。私もそう思います。複合的な要因があります。それだけに長期化する可能性が高いのです。日本にとってはいいことですが、省エネや代替エネルギー技術の開発などが遅れる可能性があります。そうした影響も含めて今後の展開を考察してみましょう。

まず、原油価格の下落の要因を考えてみましょう。

1.シェールガス・オイル革命

シェールガス・オイル革命とも呼ばれる技術革新は非常に大きな変化をもたらしました。今まで困難であったシェール層からの石油や天然ガス(シェールガス)の抽出が可能になり、アメリカは巨大な資源を獲得することになりました。このシェール層からの石油や天然ガスは、中国、ロシア、カナダ、オーストラリアなどにも多く眠っています。今のところ、アメリカの企業がこの技術を持っているのですが、技術革新は急ピッチで行われており、世界の他の国でも産出されるのも時間の問題です。こうなるとこれまでの産油国は相対的に地位が落ちますし、次々とライバルが現れることになります。原油価格が高くなれば、シェールガス・オイルの開発にも資金が投じられることになります。つまり、これまでのような原油価格の高止まりはまず考えられなくなりました。

2.産油国の多様化

シェールガスだけでなく、原油価格の高止まりは海底油田の開発なども促進しました。ブラジルでは国営石油会社ペトロブラスが、トゥピ油田で石油の商用生産を開始しました。トゥピ油田はブラジル沖にある埋蔵量数十億バレルと言われる油田の1つです。困難といわれ、多額の資金を投じました。原油が高止まりしていなければ挑戦することのなかった油田開発です。こうした油田が世界の供給量を高めたのです。また、昨年にはロンドンの近郊で推定埋蔵量が最大1000億バレルに上る大規模な油田が見つかり、過去30年で最大の発見だとして話題を呼びました。このように世界では新たな油田の開発が行われています。これは産油国の多様化に繋がっています。以前のようにOPECが集まって決めればそれで世界が動くという状態ではなくなっています。アメリカ、ロシア、中国、ブラジルなども主要な産油国なのです。調整はますます難しくなっています。

3.イランの参画

イランの存在も注目です。イランは欧米から経済制裁を課されていました。これがイラン経済を苦しめる事になるのですが、この制裁が解除されつつあります。イランはこれまでの経済的ロスを取り戻そうと産油の増産を行っています。サウジアラビアに匹敵しうる産油国が増産をします。しかもイランとサウジアラビアの関係は現在非常に悪く、「仲良く調整」とはまず行きません。それに他の中東諸国の状況も不安定です。イラクも情勢が不安定ですから、原油の量産によって財政を賄いたいところです。長期の減産には応じれないでしょう。つまりOPECなどの減産の決定は限定的なものになるでしょうし、効果は薄いのです。

4.世界経済の低迷

原油価格が急上昇したときは、中国が大変な経済成長を遂げていた時と重なります。年10%を超える経済成長をして、需要が伸びました。需要と供給のバランスが崩れ、資源の価格はどんどんと上がりました。原油もしかり、です。しかし、その中国の経済成長が低迷し始めました。今度は逆に供給が需要を上回ることになり、資源のだぶつきから価格が下がっているのです。産油国は原油価格が高い時にかなりの投資をして、生産力を高め、原油に依存するシステムを作ってしまいました。すぐに生産量を下げることができないのです。問題は、中国経済の低迷がどれくらい続くのか?中国に代わる経済成長をする国が現れるのか?です。私は、中国の経済の低迷はかなり長く続くと予想しています。高齢化も進んでいますし、実体経済が悪くなっているのを隠す政策をとってきたために、経済回復には時間がかかると思っています。中国に代わる国としてはインドが挙げられます。インドの人口は中国なみに巨大です。しかし、このインドの経済発展には時間がかかります。インドが本格的に世界の主要国となるのにはまだまだ10年、20年の年月が必要でしょう。となると、需要は伸びず、原油価格の低迷は長期化しそうです。

5.省エネ・代替エネルギーの展開

また、地球温暖化などの対策や原油や天然ガスの価格高騰のために、省エネ技術や代替エネルギーの展開が進みました。徐々にではありますが、実質的な戦力になってきています。この展開も原油の価格には影響してきます。石油や天然ガスは、地球温暖化にとっては「悪者」となっています。それだけに原油価格の高い時に、省エネ技術や代替エネルギー技術が進み、実際のエネルギーの一定の割合を得たのです。

このように考えると、まず言えることは、原油価格は多少は価格が戻ることがあっても、極端に上がることはなく、1バレル30ドル~50ドルくらいに落ち着くのではないかということです。

関心が集まるのは、省エネ技術の開発や代替エネルギーの展開が、原油価格の下落で進まなくなるのではないかという懸念です。確かに鈍るのではないかと思います。今でも「環境の論理」よりも「経済の論理」の方が強いのです。ハイブリッド車が高くても、ガソリンが高いので、結局はお得になりますよ、という話が出来にくくなります。

ただ、原油安のもとに、製造業の企業には余裕が生まれます。その余裕を、省エネや代替エネルギーの新技術の開発に回すことも可能になります。その思い切った転換ができるかどうか。地球温暖化問題は年々深刻になります。原油が安いからといって、それに頼る社会ではいけなくなるのです。また10年くらいもするとやはり原油価格は上がる可能性はあります。発展途上国の人々の生活水準が上がれば、エネルギー消費は確実に高まるのです。その時に、省エネ技術や新しいエネルギーの開発力は大きな意味を持ちます。日本は資源が乏しいのですから、新しいエネルギー技術の開発を取り組むべき国です。今、原油安で余裕が生まれるなら、それを10年後、20年後のために投資に使うべきでしょう。これができる政治力、経営力、発想力が求められていると思います。