増え続ける中国の軍事費~日本は経済力と国際社会での地位で国力アップを!

アメリカ軍佐世保基地の空母(写真:アフロ)

中国の全国人民代表大会で発表された2016年の「国防予算」(軍事予算)は、前年実績比7・6%増の9543億元(約16・2兆円)で、過去最高を更新したことが報道されています。伸び率はやや低くなり、1桁といってもまだ7.6%の伸びです。絶対額としては、日本の防衛関係費(16年度防衛予算案)の約3・2倍に達し、世界でも有数の軍事大国になっています。

日本の軍事力が中国よりも明らかに優れていた時代は終わっています。今では、質、量ともに、日本を軍事力では優っているといえます。兵器の質や隊員の質などでは、微妙なところがあるにしても、やはりここまで中国が軍事費を注ぎ込むと、中国の軍事力の優位はあります。

ただ、ここで考えなければならないことは、軍事力だけが国力ではないということです。経済力や国際社会における地位なども総合的に考えなければなりません。経済力においても、中国は高度成長を遂げ、GDPの世界2位となり、日本を抜いています。その経済力を持っての軍事力強化の側面がありました。

では軍事力強化は経済発展にプラスなのでしょうか。

この議論はかなりクラシックなもので、長年、延々とされてきたものです。軍事費を高めると確かに軍需産業は育ちますし、明らかに潤う分野があります。戦後はむしろ、軍事費は経済発展にプラスというイメージが先行し、軍事費を抑えても経済成長は可能か、という議論があったくらいです。しかし、70年代に入るとむしろ軍事の非経済の議論が主流になります。つまり、軍事費が増えると、経済に直接プラスでない分野の肥大になり、経済発展にはマイナスであるというものです。日本は軍事費を抑える政策を持ち、経済発展をしてきましたから、その良き一例として挙げられたものです。これは80年代、90年代も続けて主流の意見となります。

しかし、軍事費と経済成長との関係はかなり複雑です。大きく言えば、負の比例関係にあると思っています。基本的に軍事費は人間の生活を豊かにするものではないので、大きくなればそれだけ人間の生活にとってはマイナスです。しかし、経済との関係では微妙な分野があります。

まず、兵器の輸出です。作った兵器を他国に輸出して、貿易の対象にするなら、その国の経済に限定するならプラスの効果になります。アメリカは巨大な軍需産業を作り、同盟国に兵器を売りました。日本は良いお客さんです。軍事兵器は利益率を高く設定るすることが可能で、顧客がいれば、利潤を上げることができます。中国はまだその域には達していませんが、急速に武器輸出の分野でも存在感を出しています。まだアメリカやロシアとはかなり距離がありますので、この分野でプラスには到底なりませんが、将来においては世界有数の武器輸出国となる可能性があります。

また、航空宇宙産業やハイテク産業においては、極めて民需産業と近い分野があります。つまりこの分野では軍事費への投入は産業力の強化に繋がります。アメリカが航空宇宙産業やハイテク産業で絶対的とも言える優位性を持っていることと関連します。しかし、必ずしも軍事的志向のある研究開発と民需的志向の研究開発とは同じではありません。無駄ではないものの、効率は悪いということがあります。

軍事費の増大によって、国際社会での発言権を大きくするという測りにくい効果があります。ただ、これは軍事大国になって、周辺の諸国から敵対意識をもたれ、結局はマイナス効果になるというリスクもあります。まさにケースバイケースとしか言いようがありません。

軍事費増大が、必ずしも経済発展を阻害するものばかりではありません。しかしそれでも総合的には経済成長には足枷をつけられているようなもの。今、中国が経済的に低迷する中で、軍事費を上げ続けるのは長期的な国力からするとマイナスになります。これは日本にとっても同じこと。中国を意識するあまり、軍事大国になれば、経済的な損失を受けます。

国力とは軍事力とイクオールではありません。経済力と国際社会における存在感がますます重要になっています。中国の軍事力の強化は脅威ではあります。しかし、冷静に分析し、中長期的な国力の向上を図る政策を持つことが重要です。一方、中国の軍事力の強化は、中国にとって命取りになりかねません。