苦悩し始めたトルコ~政府に批判的な新聞社を政府が接収

(写真:アフロ)

トルコはアジアとヨーロッパの両方にまたがる魅力ある国です。黒海、エーゲ海、地中海に囲まれ、風光明媚な地域です。世界三大料理の一つでもあるトルコ料理も有名です。私は庶民的な料理のケバッブが大好きで、トルコに行くと3食ケバッブで満足します。文化的にもアジアとヨーロッパの交流によって独自の文化を築いていきました。アジアとヨーロッパをつなぐ町イスタンブール、世界遺産に登録されているカッパドキアなど見所もたくさんあります。

最近は、このヨーロッパとアジアの交流地点という地理的メリットを生かしながら、経済も発展してきました。BRICsには入れられなかったものの、トルコにも潜在力を買われ、海外からの投資資金が流入しました。トヨタなど日本企業も進出し、トルコは前途洋々という感じがありました。

しかし金融緩和の縮小で資金が流れ出し先行きの不透明感が増したことや、政局が不安定になったこと、イスラム国などのテロ活動が激化する中で、トルコにも悪影響が生じたことなどで、経済状況は急に悪化してきました。ロシアの経済制裁も効いています。鉱工業生産は14年1月をピークに鈍化に転じています。製造業も状況は悪化しています。また最近の政情不安やテロの活動などから観光客の数も減っており、観光産業も打撃を受けています。先月もトルコの首都アンカラで大規模爆発事件が起こりました。同国のクルド系武装組織「クルディスタン解放のタカ」(TAK)は、犯行を認める声明をホームページに出しており、「観光は我々が破壊しようとする主要なターゲットだ。トルコの観光地に行かないよう我々は警告する」としています。こういうメッセージを出されると観光客は減ります。

問題の一つは、トルコの内政問題が深刻化していることです。エルドアン大統領に対する批判も強くなっています。昨年末のトルコ総選挙は与党・公正発展党(AKP)が過半数の議席を獲得し、圧勝しました。エルドアン大統領の権力基盤が強化されることになったのですが、一方で社会的な分裂がさらに強くなりました。エルドアン大統領の強権的な姿勢がさらに強まり、反対派との対立が深まっているのです。

今、世界が注目しているのは、最大級の発行部数を誇る新聞「ザマン」紙を政府が事実上接収したことです。政府によるメディアの弾圧にも繋がるものです。新聞「ザマン」紙は、エルドアン政権に批判的な論調で知られていました。エルドアン大統領の政敵で、現在はアメリカ在住のギュレン氏が率いる穏健派イスラム主義運動との関わりが深いと言われます。「ザマン」紙の接収に際しては、抗議に集まった人々に治安部隊が催涙ガスを発射したり、放水したりしました。

最近、「ザマン」紙だけでなく、政権に批判的なメディアに対する規制が強化されていました。強権的な政権運営を続けるエルドアン大統領には国内外から批判の声が上がっています。今回の「ザマン」紙に対する裁判所の決定についても野党や地元のジャーナリスト協会から報道の自由を妨げる動きだと反発の声が上がっています。アメリカやEU=ヨーロッパ連合も報道の自由を妨げるものとして懸念を示しています。

トルコは今、負の連鎖に入り込んでいます。報道の自由も奪うような姿勢は、国内からだけでなく、海外からも批判の声がきます。開かれたトルコのイメージがダウンすることは海外からの投資が減ることにつながります。このままいくと、経済はさらに悪化し、国内での政府と反対勢力との対立は深まりそうです。

トルコがどのような国になるのかは世界にとっても重要なこと。トルコにはヨーロッパとアジア、キリスト教文化圏とイスラム文化圏の架け橋にもなる地の利があります。ぜひとも「開かれたトルコ」として成長の連鎖に戻って欲しいと思います。日系企業もかなり投資をしてきましたが、今、状況を見守りつつあります。親日の国でもあります。素晴らしい潜在力があるだけに、国内の政情不安が早く解決することを祈ります。