新彊は中国の火薬庫~経済低迷と民族・宗教対立の激化

(写真:アフロ)

中国の景気の低迷が話題になっていますが、経済の問題だけに収まるならまた景気は回復していきますから、なんとかなります。巨大人口を抱えている国であり、資源も豊かですから、いずれ復活していきます。

問題は、景気の低迷が社会不安につながるかどうか、です。この点が非常に重要なポイントになります。私は中国で注目すべき地域は新彊だと思っています。新彊は中国にとって重要な資源産出地域ですし、資源が豊かな中央アジアへの玄関口でもあります。新疆は習近平政権の「新シルクロード」プロジェクトの核となる地域です。政情不安を解消するためにも、中国政府はこの地域に多大な投資を行ってきました。それとともに漢民族の移住も行ってきました。

この地域の産業はまずは農業や畜産業があります。小麦、綿花、テンサイなどがとれるほか、羊や馬などの畜産業もあります。しかしそれらは経済全体としてはそれほど大きくありません。最近注目されてきているのが、石油と天然ガス、石炭などのエネルギー資源産業です。新彊ではすでに38ヶ所の油田や天然ガス田が発見されており、中国において重要な資源地域となっているのです。中国国内最大の油田は黒竜江省の大慶油田ですが、そこの生産量が徐々に落ちてきています。相対的に新彊の重要性が高まってきたのです。中国が高度経済発展をしてきた2000年から2013年くらいまでは世界的に原油価格が急騰しました。当然、資源地域は活況を呈します。しかし、2014年くらいからは中国経済も停滞気味となり、原油価格は急落します。世界中の資源地域が厳しい経済状況になりました。新彊も資源地域として将来性を買われていたのですが、資源価格の下落は新彊経済にマイナスの影響を与えます。

そして豊富な資源を使った鉄鋼産業も打撃を受けています。新彊ウイグル自治区には、経済成長をベースにしてウイグル族の反抗を和らげるために、鉄鋼産業などに大きな投資が注ぎ込まれました。鉄鋼産業も2013年くらいまでは世界的に高い価格で取引され、花形産業になっていました。これが過剰生産によって、一気に価格がダウン。世界的に鉄鋼ブームは終わったと言っていい状態です。今ではダンピング競争といってもいい状態で、製鉄工場の閉鎖などが行われています。新彊も苦境に陥っています。

新彊は「新シルクロード」プロジェクトの中心的地域ともいえ、観光産業にも期待が持たれました。シルクロードの遺跡群がありますから、環境さえ整えば、素晴らしい観光地となります。しかし、それも大規模騒動などがおこり、社会不安が高まる中で、観光客の数が減ります。観光産業も打撃を受けています。

新彊にはかなりの漢族が流入していますが、それでもウイグル族やカザフ族、キルギス族など多様な民族がいます。イスラム教徒も多く、民族対立、宗教対立が激化しています。漢族は標準語の中国語を話しますが、ウイグル族などはなかなか話せず、それによって良い仕事が漢族に奪われる状況になっています。これが漢族以外の民族の不満を高めています。中央政府は、「民族分裂主義」、「宗教過激派」、「テロリズム」と戦っているとして警察や軍の強化をしていますが、これはさらに反感を生んでいます。まさに暴力の負の連鎖です。

経済がさらに落ち込む可能性があります。そうなるとウイグル族などの不満はさらに高まるでしょう。中央政府に対しての自治権をさらに要求する運動が高まる可能性があります。新彊は広大な地域でもあり、中央政府がどれだけコントロールできるかわかりません。中央政府が統制を強めると逆に、混乱の地と化すでしょう。新彊は中国の火薬庫となりうるのです。さらに注目が必要です。