メルケル・ドイツ首相は辞任するのか~一つの時代の終焉が近づいている

ドイツ国会議事堂(写真:アフロ)

世界のトップリーダーとして存在感を高めてきたドイツのメルケル首相。アメリカのタイム誌は2015年の「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」に、ドイツのメルケル首相を選んでいます。しかしそのメルケル首相に激しい逆風が吹いています。この逆風に耐えれるのか。私はおそらく耐えられず、かなり早い段階での辞任があると予想しています。

急速にメルケル首相の支持が落ちています。独誌フォークス(電子版)が公表した世論調査の結果によると、「39・9%がメルケル首相に辞任を求めたのに対し、辞任する必要はないと回答したのは45・2%だった」といいます。調査期間は1月22~25日でした。

大量の難民の受け入れ問題でドイツを含めヨーロッパが揺れています。メルケル首相は難民受け入れを推進してきました。それは国際的には勇気ある行動と評価されてきたのですが、国内では難民とのトラブルも増え、支持を失う要因になりました。ハンガリーやポーランドなどの中・東欧諸国は難民受け入れにはかなり厳しい対応をとってきましたが、「人権の国」デンマークでも難民から財産を没収する厳しい対策を実施すべきか検討され、ついに難民の資産徴収する法案が可決されました。デンマークはドイツの隣国です。デンマークやスウェーデンなどドイツとともに難民受け入れを容認してきた国で世論が大きく変わりました。このままでは、ヨーロッパに来た難民の多くがドイツに向かうということになりかねません。ドイツでの風向きも大きく変わってきたのです。

しかし、ドイツ経済が堅調なら、メルケル首相は強い信念と態度を示して、この難局を乗り切ることができるでしょう。問題は、その堅調であった経済にほころびが見え始めたことです。

なんといっても自動車のフォルクスワーゲンは排ガス規制逃れ問題が発覚したことです。まだ業績的には大きな問題になっていないように見えます。しかし、こうしたものには時差があるのです。おそらくこの春くらいから売上業績が一気に落ちるのではないかと予想しています。それに制裁金や賠償金などがこれから本格化します。アメリカの制裁金が2兆円、フォルクスワーゲンの顧客からの集団訴訟賠償金、世界の株主からの集団訴訟、1,100万台のリコール費用などがどんどんと出てきます。総額10兆円を超すのではないかと言われます。天下のフォルクスワーゲンといえども10兆円は厳しい。フォルクスワーゲン社の内部留保金は約230億ドル(約2.6兆円)といわれますが、それでは到底足りません。資産の売却なども求めれらます。フォルクスワーゲンは研究開発費に大きな予算をかけることで世界のトップクラスを走ってきたのですが、この費用が大きく削られます。今、自動車産業は技術革新に凌ぎを削っています。正常化までに長期化すれば、世界の争いから脱落してしまいます。フォルクスワーゲングループの労働者の裾野は広く、低迷はドイツ経済に影響を与えます。

それに加えて、ドイツ銀行の経営難。2015年通期の決算はまだ確定していないものの67億ユーロ(約8500億円)の純損失になるとの見通しです。ドイツ銀行の株は業績が悪化しているため、下がっています。経営難ですから、資金にも余裕が無くなっています。ドイツ銀行にもしものことがあったら、ドイツ経済はさらなる打撃を受けます。

メルケル・ドイツは中国への肩入れをしてきたことでも知られています。フォルクスワーゲンも世界の3分の1の販売台数は中国でのものです。その中国も経済が失速。強かったドイツ経済に一気に嵐が訪れようとしています。

こうなると難民問題などの不満が一気に爆発しかねないのです。ギリシャ支援も強いドイツ経済があったからこそ、できたことです。経済が厳しくなれば、メルケル型のリーダーに対する国内からの批判は強まります。経済の減速のスピードにもよりますが、私は結構早いのではないかと予想しています。3月にも辞任劇があるかもしれません。夏までにはあると予想しています。

メルケル首相辞任の影響について考えましょう。

まずは、EUに強いリーダーがいなくなることを意味します。EU崩壊とまではいかないにしても、かなりばらばらになるのではないかと思います。イギリスのEU離脱もかなり現実的になります。キャメロン英首相は、欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票について、2016年の実施を望んでいることを示唆しています。この状態だと国民投票がされ、イギリスは離脱への道を選択する可能性が高いのです。ギリシャ問題の解決も厳しくなります。スペインやイタリアなども経済的に苦しい状況になるかもしれません。その時に支援の手を差し伸べてくれるはずのメルケル・ドイツの姿が消えているかもしれないのです。

中国との関係もかなり冷めてくるでしょう。メルケル首相のドイツと習近平国家主席の中国は親密な関係を維持してきましたが、これが破綻します。メルケル首相は中国主導のアジアインフラ投資銀行への参加を表明するなど、親中路線を鮮明にしてきました。そうした路線の再検討がなされるでしょう。

いずれにしてもドイツの今後は世界の大きな影響を与えます。ヨーロッパを率いてきたメルケル・ドイツ。一つの時代の終焉が近づいています。