ハンセン病の患者・回復者の差別撤廃へ向けて~日本財団の取り組み

鎌倉時代につくられたハンセン病などの重病者を保護・救済した福祉施設北山十八間戸(写真:アフロ)

ハンセン病という病気を聞いたことがありますか。この病名は1873年にらい菌を発見したノルウェーの医師、アルマウェル・ハンセンに由来するものです。かつて、日本では「癩病」「らい病」などと呼ばれていました。しかし、史書にでてくる「らい病」は必ずしもハンセン病とはいえず、様々な他の病気も含んでいたと考えられます。また、非常に差別的な意味合いで使われていたこともあり、歴史的文脈以外ではこの呼称は一般では使われません。その当時には、外見や感染への恐怖感などから、差別意識が強く、その時に使われた呼称なのです。差別感を内包した呼称ということで、最近は「らい病」は使われず、ハンセン病という病名が使われています。

しかし、今はもうハンセン病患者に対する差別はなくなったかといえばそうではありません。治療法が確立された現代では完治する病気になっていますが、いまだに差別と偏見は残っています。

宮崎駿映画監督の「もののけ姫」の一場面でハンセン病患者が描かれています。朝日新聞の2016年1月28日付の記事によると「映画で登場する包帯姿の人々で、ハンセン病患者と明示してはいないが、『業病(ごうびょう)』と言われながら生きた人を描きたかった」と宮崎監督は講演で語っています。「もののけ姫」は室町時代を背景とした作品。その当時の差別を描き、それに耐えながら生きる患者と助ける人々を描きたかったようです。宮崎さんが講演したのは、ハンセン病施設の歴史保存を考える国際会議「人類遺産世界会議」の冒頭でした。自宅近くの国立ハンセン病療養所多磨全生園を訪れ、「深い苦しみが集積した場所」と感じて衝撃を受けたと、朝日新聞は報じています。ハンセン病患者が受けてきた差別とその苦しみを表現し、その不当性を訴えたかったのでしょう。

ハンセン病は外見的に大きく変形することから、宗教観的に罪業と関係があるとみなされてきたようです。こうしたことから、死んでも家の墓に入れないという差別もあったようです。また「遺伝病」であるという見方もありました。日本政府もこういう誤った見解を公表していました。一生隔離しないといけない、と考える人も多くいて、実際に患者は完治した後も隔離されたり、社会から迫害を受けたりしたのです。

現在はこうしたことは過ちとされていますが、いまでも偏見は存在します。

こうしたいわれのない差別に政府も加担してきたとも言えます。そこで、政府は2002年に公式に謝罪をしたということがありました。「ハンセン病患者・元患者に対しては、国が『らい予防法』とこれに基づく隔離政策を継続したために、皆様方に耐え難い苦難と苦痛を与え続けてきました。このことに対し心からお詫び申し上げます」

この問題は日本だけではありません。世界でハンセン病患者や元患者、家族に対する偏見や差別が存在しています。日本財団は、この問題に正面から取り組んでいる機関の一つです。ハンセン病患者や元患者はまさに社会の弱者。その社会的弱者の問題を取り上げ、偏見と差別の解消に取り組んでいます。

日本財団主催によるハンセン病の患者・回復者の差別撤廃への取り組みの一つ、第16回「グローバル・アピール」式典が2016年1月26日に開催されました。これは国際青年会議所との共催で、笹川平和財団ビルに各国・各界の指導者を含め、満員の250名の参加者と共に行われました。こうした継続的な取り組みは重要です。今回は青年経営者の集団である国際青年会議所が共催ということも大きな意味がありそうです。そこで出された「グローバル・アピール2016 宣言文」を載せます。

グローバル・アピール2016 宣言文

原文・英語

ハンセン病に対するスティグマ(社会的烙印)と差別をなくすために

ハンセン病は古くから身体に変形を起こす不治の病として世界中で恐れられ、神の罰とさえ考えられてきました。ハンセン病を患った人々は、長い間厳しい差別や不平等に苦しんできました。

有効な治療法が確立され、ハンセン病は今では完全に治る病気となりました。治療薬は世界中どこでも無料で手に入ります。早期発見と早期治療により、後遺症も防ぐことができます。

しかし、ハンセン病に対する差別やスティグマは根強く残っています。患者や既に治療を終えた回復者、そしてその家族でさえも、教育、就職、結婚など様々な社会参加の機会を制限され、不当な扱いを受けています。

迷信や誤解がこうしたスティグマを生んでいます。ハンセン病に対する誤解を解き、スティグマや差別をなくすためには、人々が病気に関する正しい知識を得ることが必要です。

国際青年会議所は、それぞれの地域が抱える課題への解決策を追求することによって、持続可能なインパクトを地域社会に生み出す若き能動的市民の主導的なグローバル・ネットワークです。

私たちは、国際青年会議所が擁する世界中のネットワークを通じ、ハンセン病を理由とする差別が不当であることを訴え、こうした差別と闘います。

次世代を担う子どもたちに正しい知識を伝え、差別を撤廃するための活動を支持します。

ハンセン病患者と回復者、そしてその家族が差別から解放され、彼らが内に秘めた可能性を発揮するこができるよう、他の人たちと同等の機会を得ることができる社会の実現を目指します。