ロシア経済危機~日本に日露共同事業のチャンス

クレムリンと赤の広場(写真:アフロ)

ここ10年間はロシアは経済的に豊かでした。その経済の発展を後ろ盾にプーチン大統領は「強いロシア」の再現に挑戦してきました。かつての米ソ時代のようにはいかないまでも、プーチン大統領はアメリカの圧力に屈することなく、独自性のある外交をしてきました。実際に石油産業は好調で、モスクワにはベンツが多く見られる状態でした。もちろん、すべての国民が豊かになったわけではなく、貧富の差は大きくなり、社会問題は深刻でしたが、それでも社会にお金は回っていました。ロシアの金持ちがヨーロッパでブランド品を買いあさる姿がありました。

今、ロシア経済が危機に見舞われています。ロシア経済を支えてきたのは言うまでもなく原油・天然ガスなどの産業でした。それだけでなく、石炭も豊富ですし、鉄鉱石・金・銅・ニッケル・水銀・アルミニウム等の鉱物資源もあります。こうした天然資源が中国経済の急速な発展のもとに世界的に不足し、価格が暴騰したのです。資源大国ロシアにとっては、まさに願ってもない展開。ヨーロッパも全体的に好況で、ヨーロッパとのビジネスが占める割合が高いロシアは、経済的に豊かになったのです。米ソ冷戦に敗れた一種の屈辱を徐々に強いリーダーのプーチン大統領が癒してくれる展開になっていました。

しかし、中国経済の落ち込みとアメリカでのシェールガスなどによって、状況が一変します。原油価格は暴落し、資源ブームは終わりを告げました。採算われになる状態に陥りました。ヨーロッパは不況になり、ロシア経済には苦境に陥っています。ルーブルも落ち込み、経済は冷えています。インフレが国民生活を苦しめています。

それに加えて、「強いロシア」はウクライナ問題なども引き起こします。そして、欧米からの経済制裁。天然資源の価格が高い時には、こうしたことが起きても、耐えれる状態でしたが、今の状態だとかなり苦しくなっています。かろうじて、耐えているという状況。プーチン大統領の強気の姿勢が、かえって問題を複雑にしています。

ロシアは資源ビジネスに頼りすぎたために、他の産業育成がしっかりとできませんでした。例えば自動車産業。ロシアの車といえばラーダが有名ですが、到底世界のブランドとは言えません。1977年に発売されたクロスカントリータイプの「ニーヴァ」は、1980年代から日本にも輸入されていたことがあるようですが、私は日本ではラーダを見たことはありません。世界の2流、3流の自動車というイメージが付いています。原油や鉱物資源以外では、森林産業や漁業が目につくくらいです。あとは軍事産業というところでしょうか。

プーチン大統領は、資源ビジネスをベースに積極的な外交・軍事政策で、強いロシアを目指してきましたが、その資源ビジネスが揺らぐと、急に社会の諸問題がクローズアップされてきています。プーチン大統領の支持はまだ揺らいではいません。しかしそこまで揺らぐようになれば、ロシアは本当に危機に陥ります。

これは日本にとってはかなりのチャンスです。弱いルーブルは、外国からの進出を容易にします。ロシアは日本が持っていないものを持っており、日本はロシアが持っていないものを持っているのです。しっかりと手を組めば、非常に有効な貿易を行うことができます。これまで北方領土問題もあり、両国ともに抑制しながらの関係を構築してきました。私は北方領土の解決のためにも、両国の関係を改善してお互いが発展する道を選択することは意味があると思っています。

新たな日露の関係構築は、両国にプラスになるはず。そして新たな歴史を作る可能性があります。その新しい歴史の中で北方領土も解決されることを願います。