中国バブル経済の立役者、鉄鋼産業の苦悩

(写真:アフロ)

鉄鋼は製造業や建築業の中核的な存在です。「鉄を制する者が天下を制す」というのが歴史の法則。日本はかつては粗鋼生産量では世界のトップクラスでありつづけ、世界のトップを走ったこともあります。今もかろうじて世界2位の生産量ですが、一位の中国には差を開けられています。2013年の中国の鉄鋼生産量は7億8千万トンです。2位の日本が1億1千万トンですから、約7倍の生産となります。中国がダントツだということがわかります。全世界で15億トンもの鉄鋼が生産されています。つまり中国だけでその半分を占めているのです。

鉄鋼の価格は2009年あたりから急上昇。2004年には1トン当たり20ドルくらいだったのが、2011年2月に1トン当たり187ドルの高値をつけました。10倍近く跳ね上がったのです。特に金融危機後の2008~2009年にかけて、中国は4兆元にも上る景気対策を実施しました。当時のレートで換算すると約57兆円にあたります。世界で最も早く不況から立ち直ったと言われた中国経済は、相当な無理な景気対策によって可能だったのです。その後、世界から投機的資金が中国になだれ込みました。そして鉄鉱石、鉄鋼の価格が跳ね上がったのです。

そして今、鉄鋼は1トンあたり50ドル近くに落ち込んでいます。2011年のピークから4年で3分の1以下の水準へ暴落しています。過剰な資金投入をしていますから、これでは採算割れに近い状態です。さらにこれからは50ドル割れも予想されています。

中国は過剰投資で、生産能力をどんどんと上げたのです。中国の凄まじい経済成長が永遠に続くかのごとく、施設への投資を行いました。中国は鉄鉱石の産出でも世界1。あまり質はよくないので、ブラジルやオーストラリアの鉄鉱石が優位性を持っていますが、量はあるので、鉄鉱石と鉄鋼産業は地方の経済を支えてきました。そのエネルギーとして国産石炭が使われ、地方経済を支えるとともに、環境問題も引き起こしてきました。

ただ、これだけ生産過剰になると、将来的には大きな問題が生じます。中国の生産余剰は生産量で1億トン、生産能力ベースでは3.5億トンに達すると言われます。輸入の鉄鉱石も港で置かれて余っている状態です。

普通なら生産調整をするのですが、価格が落ちるからこそ、さらに増産してなんとか経営を成り立たせようとする負のスパイラルに入っています。中国経済の低迷から中国での需要が落ちています。原油価格の下落から中東での公共工事などがストップしています。需要と供給のバランスはさらに悪くなっています。

このまま生産調整をしないで鉄鋼を作り続けたら、市場は完全に飽和し、産業が潰れてしまいます。ブラジルも大きな痛手を受けています。日本の鉄鋼産業は高品質の鉄鋼を作っていますからそこまで打撃ではないにしても、かなりの打撃。中国の鉄鋼産業は向こう10年くらいは完全な冬の時代になりそうです。

「鉄を制することができなかったら、国が滅びる」のです。鉄鉱石の山が、バブル経済崩壊の象徴になりそうです。