アメリカ、イラン制裁解除の意味~今後の展開を考える

(提供:アフロ)

アメリカがイランへの制裁解除に踏み切りました。イラン核問題をめぐる最終合意に基づき、イランは核開発に関する制限措置を履行しました。オバマ大統領は、「イランは核爆弾を持つことができなくなり、世界はより安全になる」という声明を出しています。

なぜ今なのか、疑問は残ります。

重要な事件が2つ起きています。

1.サウジアラビアとイランの国交断絶

サウジアラビアはスンニ派の盟主国であり、イランはシーア派の盟主国です。最近は対立関係にありました。サウジアラビアは1月2日にシーア派の聖職者ニムル氏を始めとする47人を処刑しました。これにシーア派が多数を占めるイランが反発して、イラン国内のサウジ大使館を襲い、関係はさらに悪化しました。そしてついに国交断絶に至ったのです。シリア情勢も不安定な状態なときに、サウジアラビアとイランが対立を深めたのです。これまではアメリカはサウジアラビアと同盟で、シリアに対してもアサド政権に反対する勢力の支援をしていました。イランはアサド政権を支援しており、この状況下でイランの経済制裁を解くのはわかりづらいのです。

2.北朝鮮の「水爆」実験

1月6日には北朝鮮が「水爆」実験を行いました。「水爆」実験であるかは確かめられていません。地震の規模などから水爆ではなく改良型の原爆であるとみられています。なにはともあれ、北朝鮮は核実験をしたのです。イランと北朝鮮の繋がりはこれまでにも指摘されてきました。北朝鮮の核やミサイルの開発には、イランの資金や技術が援助されてきたという疑惑は強くあります。つまりイラン自身が核兵器を開発しなくても、関係のある北朝鮮が核兵器を開発するなら、闇ルートでの売買も可能ではないかという疑いがあります。

今回のアメリカのイランへの制裁解除は釈然としない部分があります。実際に、オバマ大統領の今回の決定には内外からの批判があります。共和党のライアン下院議長は「イランは(制裁解除で)流入する資金をテロリストに提供するだろう」との声明を発表しています。またアメリカ大統領選の共和党候補らも、一斉に批判の声を上げています。民主党最有力候補のクリントン前国務長官も、共和党候補のトランプ氏もルビオ上院議員も一斉に反対の意向を示しています。昨年のイランによる弾道ミサイル実験なども不問にすることになります。イランへの不信感は拭えないのです。

また最終合意ではイランが一定のウラン濃縮をすることが認められています。ですから、アメリカの同盟国のイスラエルやサウジアラビアも反発しています。サウジアラビアからすれば、それでなくても原油安で大変な時期に、さらに原油安に向かう措置になります。イスラエルの核とイランの核に挟まれる形になれば、最悪の事態です。もっと強くイランにあたって欲しいということです。

アメリカのとイランとの間に何らかの別の合意があったのではないかと想像されます。最も考えられるのはテロ対策です。シリアを中心としたISやアフガニスタンやイラクなどのテロリストの活動を抑制するのにイランの協力は意味があります。アメリカとサウジアラビアとの関係がギクシャクしてきているとの報告があります。アメリカがシェールガスの開発に成功し、サウジアラビアの原油の必要性が低下しました。もともとアメリカとサウジアラビアは価値観が違う国。サウジアラビアの人権問題などでも対立はありました。アメリカは、IS対策においても、サウジアラビアよりもイランとの協力関係を考えつつあるのではないかと思います。アサド政権に見切りをつけるにしても、その後の体制において、イランとの関係を強め、協力しながらISを排除していくという戦略に変更しつつあるのではないか思うのです。

オバマ政権はサウジアラビアを同盟国ではなく一パートナーとして位置づけ、中東における全方位外交をしながら、テロ対策をしていこうとしているのではないでしょうか。ただ、オバマ政権もレームダック状態です。どこまでこのナイーブな外交政策が意味を持つのか不明です。

ただ今回のイランへの制裁解除は日本にとっては望ましいことです。イランは親日の国と言われ、日本はイランと良好なビジネス関係を持っていました。イランからの原油の輸入は 資源調達の多様化による安定性をうみます。また原油安をさらに進めることになります。資源のない日本にとっては追い風です。

これから中東はさらに不安定化する可能性があります。イスラエルとアラブ諸国との対立に加え、サウジアラビアを中心としたスンニ派国とイランを中心とした国との対立、そしてテロリストとの戦い、があります。そのすべてにアメリカが深く絡みます。アメリカ大統領選の行方も注視しながら、中東の行方を見守る必要があります。

かなり早くまた新たな事件が起きそうです。