台湾総統選で蔡英文主席が勝利~どこへいく台湾

(写真:アフロ)

注目されていた台湾総統選挙は、1月16日に投開票され、予想通り最大野党・民進党の蔡英文主席が与党・国民党候補の朱立倫主席と野党・親民党の宋楚瑜主席を大差で破り、初当選しました。これから台湾はどうなるのでしょうか。

1.中国との距離

民進党は独立志向があります。といっても今すぐ独立できるような状況にはありません。中国に頼る政策であった国民党の馬英九政権が敗れたのですから、蔡英文政権は中国には距離を置く政策はとるでしょう。当面は蔡氏が繰り返し言うように現状維持政策、つまり独立はしないが、中国傾斜はしない、という政策をとるのでしょう。しかし、中国自体が経済低迷と強引な外交戦略があり、状況によってはもっと積極的な脱中・反中政策をとることが求められる場面が来るかもしれません。馬英九政権の時のような状態にはならないことは確かです。実はこれは中国にとっても打撃ではあります。台湾企業も中国に相当に進出し、良好な関係を持ってきましたが、経済低迷もあり、台湾企業も今、今後の方向の決断をしなければならなくなっています。台湾政府が中国と距離を置くことは外交のみならず、企業の戦略にも影響します。また大きな意味があるのが、香港などへの影響です。香港でも中国政府と距離を置きたい、という若者が多くなっています。台湾の方向は香港の若者の心を動かしうるのです。

2.台米日のライン強化

かつては台湾は、アメリカの対中国戦略の重要な拠点で、台米日の関係は強力でした。しかし、中国経済の発展とともに、次第に台湾への関係は薄くなりました。1995年~96年の第三次台湾海峡危機の時には、アメリカは空母を台湾沖に送るなどしました。しかしそれ以降は、中国への配慮をかなりするようになりました。日本も同様です。陳総統の時に、アジア太平洋会議というのに招待されたことがあります。陳政権が弱まるアメリカ、日本の支援に危機感を抱いて開催したものです。しかし、アメリカも日本も中心的な政治家や官僚を送らず、台湾の孤立を印象づけました。台米日のラインは非常に弱くなってきたのです。これが強められることになるでしょう。アメリカは大統領選挙の年です。誰がアメリカ大統領になるかは大きなポイントです。共和党候補者だとかなりの反中政策を展開する可能性があります。むしろ危険な中国封じ込めラインが出来るかもしれません。

蔡英文氏はアメリカのコーネル大学ロースクールで法学修士を取っていますし、その後イギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学博士を取得しています。アメリカやヨーロッパのネットワークもあります。また日本にも何度か訪れています。親米・親日でもあるようで、台米日ラインはかなり強固になりそうです。

3.クリーンな政治

蔡英文氏の人気の要因の一つはクリーンなイメージです。もともとが大学教授です。アメリカとイギリスに留学の後、国立政治大学及び東呉大学の教授に就任しています。専門は国際経済法です。台湾政治、台湾選挙の一つの問題は、収賄です。中国大陸ほどではないにしても、かなりの賄賂が求められる社会です。これが政治を歪めてきたとも言えます。蔡英文氏のクリーンなイメージは、台湾のこうした政治文化を変革してくれるのではないかという期待があります。これは台湾がさらに発展をしていく上で重要なポイントとなります。

5.リベラルな政治

台湾は中国の凄まじい経済発展に引きずられる部分も大きかったので、貧富の差の増大がありました。確かに全体としては経済は伸びたのですが、貧富の差も大きくなり、社会問題化してきました。民進党はこうした行き過ぎを批判してきました。また蔡英文氏は女性の視点からも平等な社会を目指すことを目標の一つにしています。どこまでできるかはわからない部分が大きいのですが、これまでよりはリベラルな政治が展開されると思います。

日本にとっては歓迎すべき展開ではありますが、あまりに極端になると中国と台米日の溝を深め、危険な状態になる可能性もあります。むしろ慎重に状況を見ながら関係を強めることが大切です。まだ蔡英文氏は59歳。4年任期を2回、つまり8年の政権を担う可能性が高い状態です。過激に走らず、ゆっくりと関係強化を進めることが必要でしょう。