産経新聞の加藤前ソウル支局長に無罪判決~注目される朴大統領の反応

(写真:アフロ)

 韓国の朴大統領の名誉を毀損した罪に問われていた産経新聞の加藤達也前ソウル支局長に対して、ソウル地裁は17日、無罪判決を言い渡しました。とりあえず無罪の結果で、ほっとしています。

 メディアの記事に対して、求刑懲役1年6ヶ月の刑事裁判が行われること自体が異常な事態です。無罪は当然、という論調が日本では大勢です。こうした裁判が行われることが韓国のイメージをどれだけ下げることになったのか。朴大統領に対しては産経新聞は厳しい論調をしていましたから、産経憎し、という感情が先に立ったのかもしれません。ただ、結果としては産経に塩を送ったような形になりました。

 韓国では名誉毀損は、被害者が処罰を望まないという意思表示をすれば、公訴は無効になります。朴大統領は加藤前支局長の処罰を望まない意思を表明するオプションがありましたが、それをしなかった。つまり、この裁判が成り立ったのは、朴大統領の意思ゆえともいえます。無罪になっても、有罪になっても朴大統領にはプラスにならない裁判でした。早めにストップをかけて、「懐の深さ」をアピールしていた方が良かったでしょう。

 判決で驚かされたのは、裁判長が公判の冒頭で、韓国外交省が、善処を求めた日本側の要請を考慮するよう文書で求めていたことを述べたことです。だからなんなんだ、という感じです。裁判所は韓国外交省の圧力や日本側の圧力で判断を変えます、ということを明らかにするようなもの。三権分立ができていません、といっている感じがします。逆に、韓国外交省が厳しく罰して欲しい、という文書を出していたらどうなのか。有罪となっていたのでしょうか。釈然としないところです。

 私は、この裁判はまだ決着がついたかどうかわからないと思っています。まずは、検察が控訴するかどうか、です。この裁判は、1年以上の時間を費やしてきました。判決までに公判は10回を数えています。加藤前ソウル支局長は検察について「この被疑者を絶対に許さないという形で供述を集め、有罪にしようとしていたことが印象に残っています」と述べています。そこまでの執念を感じさせる検察です。ほぼ完全な敗北の形で終わることをよしとするかどうか。控訴となると、また長い月日がかかります。メディアの権力からの自由を明確にする必要もあるわけで、控訴となれば、またしっかりとした対応で、無罪を勝ち取る必要があります。

 そして、朴大統領の反応がまだ出ていません。明確な言動は控えたものの、この裁判を成り立たせたのはぱく大統領が「処罰を望まない」という意思表示をしなかったからでもあります。裁判の結果をどのように受け止め、メッセージを出すのか。別次元の慰安婦問題などを出しながら、今回の判決に不満の意思表示がでるなら、日韓関係が良い方向に向かうのではないかという期待は、水の泡となります。どのような反応が出るのか、明日以降に注目です。

 また韓国メディアの反応も注目です。産経新聞だけでなく、韓国メディアも朴政権下での言論の自由の束縛は問題でした。どういう論調でこの裁判を報じるかです。朴政権に気遣うのか、それともメディアの言論の自由を強調し、判決を歓迎するのか。

 この3つのポイントは今後の日韓関係において大きな影響を与えます。とりあえずの無罪は、日韓関係の正常化へのステップとみられていますが、検察の控訴などがあれば、元の木阿弥。さらに悪化することも考えられます。無罪の判決は当然のことですが、まだ、さらに当然でないことが起きる可能性はあるのです。