中国人民銀行は、通貨・人民元の対ドルレートの基準値を大幅に切り下げました。8月13日、人民元売買の基準となる対ドルの為替レート「基準値」を3日連続で引き下げ、3日間で、基準値ベースでは4・65%の元安・ドル高となりました。

中国は完全変動相場制ではなく、管理変動相場制です。固定相場制ではなくなり、フレクシビリティが出てきたので、経済発展とともに元は準世界通過となってきました。これまで中国は経済発展を目覚しくするので、元は切り上げ基調で推移してきました。世界から切り上げへの圧力があり、それを受けて徐々に切り上げるというパターンでした。元は強くなってきましたから、元の保有のモーチベーションがあり、中国に世界から巨額の金が集まってきたということもあります。経済成長をする中国企業の株価の上昇、元の切り上げ、拡大する国内市場などを見込んでの外資の流入でした。

管理変動相場制はかなり中途半端な制度です。いざという時には為替に対して直接的に介入ができる制度です。元をベースに取引するときには、ここは引っかかるところですが、中国経済がこれまで発展をしてきて、元が切り上げ基調でしたから、それほど問題にはされてこなかったということがあります。しかし、元の切り下げ、となると、心理的な状況は一変します。本当に、今の状況で元の切り下げが必要なのか、妥当なのか、海外からの目は厳しくなります。

元が切り下げられることによって、中国の輸出はやりやすくなります。中国の輸出が頭打ちとなっている今、元を切り下げ、輸出を伸ばしたいという中国の思惑はわかります。しかしこれは中国への輸出を難しくさせるもので、中国と関連が強い国にとっては厳しい状況を招きかねません。こうした通貨の変動によるプラスマイナスは一般にあることですが、完全変動相場制でなく、管理変動相場制であることによって、特別な介入があり、制度が曲げられているのではないかという疑心暗鬼が生まれます。これが最大のネックになります。

今回、短期間で通貨・人民元の対ドルレートの基準値を大幅に切り下げたことによるメリットとデメリットをあげ、総合的な評価を考えてみましょう。

まず、中国にとってのプラスはいうまでもなく、輸出に追い風となるということです。海外での中国人の爆買いなどによるお金の流出も多少、収まるかもしれません。一種のカンフル剤的な意味はあります。中国の人件費の高騰などもあり、以前のように中国製がはるかに安い、ということはなくなっています。様々なリスクを考慮すると、モノづくりは中国、と決めつけれなくなっています。元を切り下げることにより、中国は輸出力をまた持ち直す可能性がでてきます。これが株価の下げをとめて、また上昇へと向かうという期待感を抱かせるのです。

しかし、今回のような切り下げは全く別の副作用も生み出します。まずなんといっても、上がり続ける元、強くなる元というイメージが壊れることは大きなマイナスになります。リーマンショックの後も、中国経済は立ち直りが早く、元を保有する価値が認められました。世界の資金は中国からあまり逃げず、すぐにさらに大きな資金が中国に入ってきたのです。これがさらにバブル経済を引き起こし、今の経済大国中国があります。しかし、中国経済の行く末に不安がみられ、株価が下落しているなかで、元の切り下げが行われると、強い元のイメージは損なわれます。海外の資金の流出がさらに加速される可能性があるのです。最近の株価の下落も、実際には海外資金の流出が大きな要因と考えています。海外資金が逃げるなら、どのような経済政策をとってもその流れをとめることができません。海外の投資家は、海外への金の移動の時期をじっと伺うという状態になっています。

次に中国との関係を強化することによって発展をしてきた国々の不安を煽ることになります。韓国やブラジルは中国との貿易が重要になっています。中国が厳しい時はそうした国も厳しい時です。その時に中国にとっていい政策、つまり自分たちにとっては悪い政策を恣意的にされたと感じるなら、貿易を冷えさせる効果となります。経済の歯車に問題が生じるのです。

最も大きな問題は、元に対する不安感の増大です。完全変動相場制なら、レートは市場が決めること。ある程度、仕方がないと皆、思っています。それを読んで行動することが投資家に求められているからです。ただ、恣意的な部分が入ると思われると、さらに不安感は増すのです。元は信じられない通貨というイメージができあがあると、将来的には大きなマイナスです。このマイナスも中国は織り込み済みというかもしれません。経済が不調な今、むしろ世界はそこまで中国経済は厳しくなったのか、と受け取ってしまいます。

このようにプラス、マイナスを考えると、短期的には意味があっても、中長期的には中国経済にダメージを与えかねないことだと思います。この秋、中国はさらに厳しい状況に追いやられる可能性があります。世界第二の経済大国中国。もう完全変動相場制になるべき時期は来ていると思います。