新聞が危機を迎えている~成長産業としての新たな戦略を考える

 新聞が危ない。

 新聞の発行部数が毎年減ってきています。日本の新聞は宅配制度もしっかりしており、世界的には超優良企業といえますが、それだけ組織も大きく、発行部数が今後も減り続ければ、さすがの日本の新聞社も厳しい状況が待っています。日本の新聞の発行部数ピークは1997年で、なんと5877万部。その当時の世帯数はおおよそ4500万でしたから、単純に計算すれば1世帯に1新聞以上の購読があったことになります。驚くべき数字です。この新聞の購読も日本人の情報・文化・教養能力を高め、日本を底支えしてきたいといえます。

 それから新聞発行部数は減少に転じています。2013年には発行部数は4700万部。2014年の正確な数字は入手していませんが、朝日新聞と読売新聞の大新聞の落ち込みもあり、全体では2013年から100万部程度を落としていると予想されます。1997年から実に1000万部以上の落ち込みです。特にここ5年程度は落ち込みの速度が上がっています。

 発行部数の数字だけではわからない問題もあります。まずは押し紙問題。新聞社の収入は購読料だけではありません。広告収入も大きな柱。それは発行部数にほぼ比例することになるので、広告費の獲得のために販売店に過大なまでのノルマを課すことがあります。販売店はそのノルマの達成のために、様々な販売戦略をとるのですが、最近は新たな契約を取るのは至難の業。そこで、ノルマ達成のために実際には契約していない数を契約したようにする、つまり「押し紙」を受けることになります。ノルマを達成することによる販促費などが当てられますが、結局はこれは販売店にとっても新聞社にとっても負担となるもの。長期的には不健全な構造となります。売れ残ったものは、販売促進用にホテルなどに置かれる、ということなります。基本的に号外以外は無料で新聞を渡すことはできません。そこでホテルとのタイアップで読者獲得を狙った広い意味での購読キャンペーンという位置づけをします。

 ですから発行部数と実際の販売部数との間にはかなり差があると考えられます。この差は明確に数値として出されていませんので、内部の人の話から推察するしかありませんが、かなりであると思われます。

 次の問題は、広告効果。新聞を「惰性」でとっている人は多くても、だんだんと実際に読まなくなっているのです。これは中の広告を読まなくなっていることとにつながります。購読されていてもほとんど読まれない新聞も多くなっているのです。新聞に広告を打っても、その効果が減ってきているのです。実際に企業もこれを認識してきており、現実には広告料のダンピングなどが行われています。ダンピングとはいえないので、「特別枠」が設定され、実質的には大幅な値引きも行われます。これが「特別」にならなくなって「常態化」すると、大きな収入減になります。

 こうした衰退の要因は複合的です。まず誰でも思いつくことはインターネットの普及。新聞を紙媒体で読む必要がなくなったのです。朝起きたら、ポストに新聞を取ってきて、新聞を読むという生活スタイルから、パソコンを開けてまずメールを確認して、それからインターネット上の主なニュースを読む、という生活スタイルになっています。紙媒体の新聞を読む時間がありません。

 インターネットやスマホなどにお金が掛かり、新聞にまで回せない、ということも現実的な問題です。特に若者にとって優先順位は、スマホが最も高く、紙媒体の新聞はランクを落としています。ランク外といってもいい状態です。

 拍車をかけているのが大型テレビ。あまり言われていませんが、最近のテレビではすぐにテレビ番組欄がみれるようになりました。大型テレビだと快適です。地デジ化の時に、テレビの買い替えが進み、多くの家庭で中型・大型のテレビが普及しました。新聞に頼らなくても直接にテレビで番組を確認できるのです。録画などとの連携となると、新聞のテレビ欄からGコードを入力するという手間のかかることはしなくなっています。直接にテレビの中で表示される番組欄から「予約」をするのが一般的になりました。つまりこの点でも新聞はもういらなくなっているのです。テレビ番組欄は新聞にとって非常に大きなものでした。テレビの周りに必ず新聞があり、そのテレビ番組欄をみてはチャンネル争いをする、というのが一般的な家庭だったのですが、今の家庭のテレビ鑑賞に新聞はいらない、のです。

 こう考えると厳しい状況がわかります。このままでは衰退産業のままです。しかも急速に落ちていく可能性もあります。日本人は新聞が好き。だから新聞はなくならない、と考える人もいますが、今の状況をみるとそんなに甘くないと思っています。次の5年間で発行部数の激減が予想されます。電車で新聞読む人があまりいなくなっているのに気づいていますか。皆、スマホを読んでいる、スマホで聞いている、のです。お金出して新聞は買わなくなっているのです。

 では新聞はどうすればいいのでしょうか。

 基本的な発想の転換が必要です。紙媒体の新聞を売る会社だということから離れなければなりません。現在、新聞社は情報産業の頂点にいます。テレビの情報もインターネットの情報も精度の高いものは新聞からきています。つまり情報という点からは、テレビもインターネットも新聞に頼っている状態なのです。

 新聞社は完全に情報産業の会社だという戦略をたてるべきです。情報を紙媒体だけでなく様々な媒体で売る、ということもあります。

 しかしそれ以上に可能性があるのは、情報の会員制度です。新聞に出ている情報だけが新聞社の持っている情報ではありません。新聞に書けない情報もたくさんあるのです。企業情報、自治体情報、国際機関情報、国家プロジェクト情報。。。。。会員にだけの情報を提供できるなら、かなりの高額であっても会員になる企業や個人はあるでしょう。

 また情報を活用した新たなビジネス化も可能性が高いものです。教育産業や最新情報を活用した新規ビジネスとの連携などを考えていくと非常に大きな可能性があることに気づきます。情報を制する者は世界を制する。その情報の最高峰にある産業が新聞産業であるのですから、やりようによっては時代の落ちこぼれではなく、時代の最先端の産業といえるのです。新聞配達店もその視点から見直すとすごい可能性があります。全国に配達拠点を持っているのです。売るのは新聞だけである必要はありません。自由な発想で見直せはすごい宝が生まれそうです。

 課題は、一つ。新聞産業は同じビジネスモデルで100年以上もの間、ずっと成長を続けてきました。その成功モデルがあまりに強かったので、発想の転換ができないのです。記者は記事を書き、それを紙媒体に編集し、印刷し、配達するという仕事の分化がありました。その発想を打ち破って、新たな社会への挑戦をする。そこに成長産業としての新たな新聞産業の姿がありそうです。