無投票当選がこんなに多くていいのか~抜本的な選挙制度改革を!

 4年に1度の統一地方選が始まりました。全国233の地方自治体で首長選、745の自治体で議員選が行われています。まずは知事・道府県議選、政令市長・市議選という前半戦が佳境に入っています。4月12日投開票ですから、もうすぐです。しかし、盛り上がりはいま一つ、というか、いま二つも、三つもある感じですね。静かです。

 首長選のかなりは、選挙前から結果がほぼ分かっているような選挙となっています。民主党の体制が整わない状態が続き、自民公の相乗り選挙や民主党の不戦敗選挙が多くあります。知事選や政令市長選は、大掛かりな選挙となりますから、よほどの知名度などがなければ、自民党や民主党からの出馬でなければまともな選挙戦になりません。つまり相乗り選挙となると、よほどのことがない限り、結果は見えているようなものになります。

 また道府県議選や政令市の市議選では、選挙区の区割りがあり、無投票当選の選挙区が増えているのです。41道府県議選では無投票当選者の割合が大きく増えています。合わせて960の選挙区のうち、およそ3分の1に当たる321の選挙区で、定員を超える立候補者がなく、合わせて501人が無投票で当選を決めました。無投票当選者の割合は、2割を超えています。つまり統一地方選といっても、実際には選挙のない地域や結果の見えている選挙地域が多くあるのです。無投票当選の割合が最も高かったのは香川県。定員15人の県庁所在地・高松市選挙区では初めて無投票となっています。恐るべき現実です。香川県議会の定員41人の66%に当たる27人が無投票で当選を決めました。

 なぜこうした事態になっているのか。どのように改善できるのかは、真剣に考えるべきでしょう。このままでは民主主義は形だけのものになってしまいます。政治家の劣化も、有権者の劣化も始まります、というかすでに起こっています。選挙が形骸化している民主主義なんてありえない。日本の政治システムの危機とも言えます。

 いくつかの理由が複合的に絡んでいます。

1.政治への関心の低下

 まずは王道の理由から。一般国民の政治への関心はさらに低下しています。政治を志す人が少なくなっていることは確かです。政治は汚い、というイメージも強く付着し、政治に距離を置く人が多いのです。これは根本的な問題です。国民が政治に参画できにくい制度を作ってきたことのつけが回ってきていると言えます。国民投票もやったことがない、住民投票も限定的な政治風土では、国民の意識は高まりません。「卵かニワトリか」という議論もありますが、それに加えで選挙がなかったり形骸化していては、政治に関心を持つ国民はさらに少なくなります。

2.政治家の「職業」としての条件の低下

 政治家は言うまでもなく国民の税金から報酬などをもらっています。国や自治体の財政が厳しくなる中で、報酬や政務調査費などが大きくカットされているところが多くなりました。住民も政治家の報酬は低いほどいい、という感覚を持ち、低い報酬をマニフェストに掲げる政治家を支援するという傾向がでてきました。報酬は半部でいい、とか、退職金はいらない、とかの公約を掲げる人もでてきました。しかし、政治家は選挙をしなければなりませんからそのため費用もかかります。他の出費も嵩みます。多くは4年の任期がありますから、当選しても4年後の生活は保証されません。30代、40代、50代という働き盛りの年代の人は子育て世代でもあります。子どもの教育費もどうなるかわからない職業をあえて選択するかどうか。選択できるかどうか。また政治家の社会的ステータスもかなり落ち込んでいます。昔は県議や市議は雲の上の人でした。しかし今は、私生活までチェックされ、世の中がうまくいかないことを全て背負うような言われかたまでします。20年前とは大きく変わりました。

3.それでもかかる選挙費用

 条件は悪くなっても選挙費用はかなりかかります。10万人とか20万人の人に情報を伝えるだけでも相当な費用がかかります。県知事選や政令指定都市の市長選などでは本人もかなりの額を出費することを求められます。「お金のかからない選挙」はずいぶん前から言われてきました。それが表面的に見えるお金か隠れているお金かは別にして、現在でもかなりの額がかかります。北欧などでは選挙のほとんどが完全比例代表制で、政党選挙です。ですから個人に選挙費用はかかりません。選挙に個人のお金はほとんどかからないのです。日本では選挙に当選しても借金返済を報酬から行うという生活が待っています。落選したら、借金返済だけが待っています。

4.少数政党の巨大化

 日本では選挙制度も変わり、多政党型から少数政党型に移行しています。まだ政党の数はかなりありますが、実際に資金や組織力で力のある政党は少なくなっています。自民党が圧倒的力を持ち、対抗できるギリギリが民主党という感じです。2人区や3人区ではほぼ政党の割り当てができてしまうのです。また1つの席を争う首長選では、民主党は対抗馬をたてるほどの勢いを失い、自公に相乗りという形になっています。戦う選挙がますますなくなる状況です。

5.立候補には職場をやめなければならない

 日本では例外もありますが、ほとんどの職場では社員が立候補するには退職が必要になります。公務員は絶対条件です。すべてを投げ打っての立候補しかないとなれば、大変なリスクです。日本人のマジョリティはこうしたサラリーマン。このサラリーマンの多くが立候補できにくいシステムなのです。

 ではどうすればいいのでしょうか。

1.根本的には国民が政治参画できる制度設計をして、国民の政治意識を高めることが重要です。

2.選挙にお金がかからない制度設計も大切です。私は北欧型の完全比例代表制が望ましいと思っています。お金がかからない選挙であれば、報酬は一般公務員と同レベルで全く構いません。

3.今の選挙制度のままであれば、生活が保証されるだけの報酬などの制度は守る必要があります。政治家の報酬を下げることが政治改革だと思っている人がいます。しかし、これが政治家の劣化を加速するのであれば、結局は税金の無駄使いになります。

4.選挙のために職をやめなくてもいい法律を作るべきです。2~3ヶ月の選挙有給休暇を認めればいいのです。これは北欧などでは認められています。公務員もそうです。選挙に挑戦して、ダメだったらまた元の職に戻る。これなら多くの優秀な人が立候補します。

5.供託金もなくすか、もっと引き下げてもいいでしょう。これだけ立候補者が少なくなっているのに、何故、供託金が必要なのでしょうか。政治参画はまずは金ありき、の発想をやめなければなりません。

6.今回の県議会選挙や政令指定都市の市議会選挙では、選挙区の区割りの問題があります。これは本当に必要なのでしょうか。仮に必要だとしてももっと大きな選挙区にすべきでしょう。5人区以上になれば無投票当選の選挙区は激減します。

 選挙は民主主義の根幹。選挙制度改革を政治家に任せていてはいつまでたってもうまくいきません。一般国民が選挙の改革案をもっと議論し、提案すべきと思います。