「最後の忍者」川上仁一さんの「忍者修行入門」講義

右が川上仁一氏(撮影:児玉克哉)

 忍者は歴史的な存在ですが、不明な部分も多く、それだけに魅力があるものです。世界的にもニンジャは広く知られるようになり、ニンジャの人気は爆発的ともいえます。忍者といえば、三重県の伊賀や滋賀県の甲賀が有名です。そのお膝元の三重大学で、「忍者・忍術学」の研究や教育が始まっています。

 その中心となっているのは、甲賀流忍術の継承者で「最後の忍者」と呼ばれる川上仁一さんと著名な歴史研究者である山田雄司先生です。川上さんは石田正蔵より6歳から、尾張に伝わった系統の甲賀流忍術の一派である伴家忍之伝を学び、伴家忍之伝に含まれる多くの流派(如水流神道軍伝、出雲神流平法、神伝不動流馗法、竹内流骨法、一条不二法骨法術など)を体得されています。現在、福井県若狭町にて伴家忍之伝の研修所を開いています。今は伊賀流忍者博物館の名誉館長や三重大学社会連携研究センターの特任教授も勤めるなど、まさに忍者に生涯をささげている方です。

 私は川上さんと3年前にお会いし、忍者学の研究と教育をお願いしました。川上さんは本格的に忍者学を完成していきたいという強い思いを持っておられ、快諾。素晴らしい歴史研究者の山田先生の参画もあり、三重大学人文学部を中心に活発な展開が行われてきました。地域と文化と歴史と現代を結ぶ新たな学問スタイルが形成されつつあります。三重大学人文学部の社会貢献の一つと言えます。

 忍者のイメージは、漫画などで作らてたものが大きく、現実とはかけ離れた虚像の忍者イメージがはびこっています。川上さんや山田氏は、本物の忍者像を明確にして、忍者の社会的意味や現代における意味を問い直そうとしています。川上さんは、本物の忍者のイメージと現代へのメッセージを世界に伝えていきたいと主張します。

 2014年1月25日(土)に伊賀市のハイトピア伊賀3階コミュニティホールにて、川上仁一氏の「忍者修行入門」の講演がありました。忍術は軍用目的で編まれているものですが、現代人の健康増進や体力向上、ストレス解消等の効果が期待できるものも含まれています。歩法や呼吸、気合等の基本を学び、古の忍者を目指し、「忍」の心構えで習得をしていこうとするものです。会場には100名近くの市民の方々が、忍者修行の入門講義を聞きにいらしていました。

 呼吸法や歩行法、忍者の心得など、非常に面白く、また体にも心地よい講義となりました。忍者の修行は、一朝一夜にできるものではなく、地道な練習をしっかりと行った上で、徐々に習得できるもの、と川上さんは話します。子どもの頃からずっと修行を積んできた川上さんの言葉には重さがあります。

 忍者の活動の多くは、特別なものではなく、日頃からの情報収集とそのノウハウ、そして臨機応変に対応できる体と心の鍛錬であるといいます。テレビや漫画の世界の「しのび」の姿だけではなく、様々な形でコミュニケーションをとり、重要な情報を得ることも重要な忍者の役割でした。

 コミュニケーション力を高めて、心身ともに鍛え、非常時にパニックになることなく、冷静に適切な行動をとる。これはまさに現代においても重要なことばかりです。忍者の姿を明らかにしながら、現代におけるメッセージを読み取る忍者学。ユニークで、なおかつ意味のある新たな学問と思います。これが、伊賀市などの地域の活性化にもつながればいいですね。