私は、核廃絶にむけたプロセスを展開していく「ヒロシマ・ナガサキプロセス」を提唱し、多くの人々から賛同と支持を得ています。核兵器廃絶にむけた「ヒロシマ・ナガサキプロセス」の骨格を簡単に紹介します。長文なので、2回に分けての紹介になります。これがその2です。

3)ヒロシマ・ナガサキプロセス

ヒロシマ・ナガサキプロセスは、核兵器廃絶を目指すためのいくつかの国際条約の制定を行います。被爆者団体を含む国際NGOや非核保有国が中心となって、核兵器を禁止する総合的なプロセスの構想です。

A)核兵器使用・威嚇禁止条約の制定

最も理解を得やすい国際条約の制定を目指すことからはじめます。これまでにも国連総会においては、核兵器使用禁止決議は採択されてきています。1994年から2007年までの14年間は、連続で、核兵器廃絶に関する決議が提案され、賛成多数で採択されてきています。日本の態度は残念ながら、核大国アメリカへの配慮を優先しています。日本が提出した決議には賛成しますが、それ以外の具体的な内容を含んだ核兵器使用禁止決議には棄権するというスタンスをとることが多いのです。日本が提出する決議は、アメリカも賛同できるように極めて抽象的な表現で核兵器廃絶を求めるものとなっています。しかしこの抽象的な決議案にさえ、最近のブッシュ政権は核兵器の先制使用をもありうるという立場から、反対票を投じるようになっています。2007年の決議案に対しては、賛成は170か国、反対は3か国(アメリカ、インド、北朝鮮)、棄権は9か国(中国、フランス、パキスタン、イラン、イスラエル、ミャンマー、ニカラグア、ブータン、キューバ)となっています。

これまでの動きとの違いは、核兵器使用禁止決議ではなく、核兵器使用・威嚇禁止条約の制定を目指すということです。すべての国、特に核保有国が参加することとならなくても構わない、という姿勢で、国際条約として、核兵器の使用と威嚇の禁止を宣言するのです。1994年に国連総会が「核兵器の使用・威嚇は国際法上許されるか」と意見を求めたことを受けて、96年7月に国際司法裁判所は勧告的意見をまとめています。それによれば「一般に、武力紛争に適用される国際法とりわけ人道法の原則や規則に違反する」とするとしています。ただし、これには「国家の存続が危機にあるような自衛の極限状況においては確定的な結論は出せない」との留保もつけてあります。留保はあるものの、現時点においても「核兵器の使用・威嚇は国際法上許されない」という解釈が成り立ちます。しかし、それを国際条約として明確にすることは大きな意義があります。

この核兵器使用・威嚇禁止条約の制定までの道のりを、対人地雷禁止条約やクラスター爆弾禁止条約の時と同じように、国際NGOやミドルパワー諸国の主導のもとに実現していくのです。国際世論の高まりとともに、「核兵器の使用・威嚇の違法性」をアピールすることができます。核兵器の使用・威嚇した場合には、国際社会から厳しい批判と叱責を受け、国際社会の一員としての立場を失うということが明らかになるのです。核兵器保有国のすべてが、すぐにこの条約に署名し、批准するとは考えられません。しかし、非核保有国の多くが、国際NGOの後押しのもとに批准し、国際的な規範作りを行うことは、核兵器の使用や威嚇による活用を大きく制限することに繋がります。核兵器の価値を下げて、次のステップへと導きやすくします。

B)核兵器開発禁止条約の制定

次のステップは、核兵器の開発を禁止する条約を制定することです。

核兵器の開発には核実験が重要な役割を果たすことから、これまでに核実験を禁止するための努力がなされ、一定の効果をあげてきました。包括的核実験禁止条約は、あらゆる空間(宇宙空間、大気圏内、水中、地下)における核実験の実施、核爆発を禁止しています。これは、部分的核実験禁止条約において禁止されていなかった地下核実験をも禁止対象としています。しかし、核保有国は、当条約採択後も禁止されていない爆発を伴わない臨界前核実験を繰り返し、核実験そのものの停止は未だ行われていません。核兵器の開発は続けられています。

核兵器開発禁止条約は、臨界前核実験を含めて、核弾頭の性能の向上を図る行為を禁止します。つまり、現時点で保有している核兵器以上のものを作ることが禁止されるということになります。核兵器のフリーズ状態を作ることを目指します。

制定までの過程は、核兵器使用・威嚇禁止条約の制定の時と同様に、国際NGOや非核保有国の主導によって、実現することを目指します。

C)核兵器廃絶条約の制定

最終段階は、まさに核兵器を保有すること自体を禁止する国際条約を制定することです。上記のステップを一つ一つ積み重ねることによって、現時点では不可能に思えるこの最終段階に到達することができます。

D)地球的非核地帯条約

これまでの非核地帯条約や構想は、ある一定のゾーン(地帯)を対象にしてそのゾーン全体を非核化することを目ざします。そのゾーンにおける核兵器の開発・製造、実験、保有や使用、域内の輸送や持ち込みを禁止するとともに、核保有国が非核地帯への核兵器による攻撃や攻撃の威嚇を禁止することを要求します。

すでにこうした非核地帯条約は成立していますが、核保有国が含まれているような地帯では、実現させることが困難になっています。モンゴルは1国で「モンゴル非核兵器地位宣言」をしています。

地球的非核地帯条約は、世界のどこの国でも条約に参加でき、その参加国の領土の合算を非核地帯とみなすというものです。核兵器の問題で重要なヨーロッパの非核兵器保有国や東アジアや南アジアの非核兵器保有国などが非核地帯運動にグローバルな形で参画できるのです。平和運動においても、NGOの活動においても重要なドイツや北欧諸国、カナダなどが一体となって、核保有国に対抗することができます。もちろん、日本もこの運動の中心的な国として加わることができるのです。既存の非核兵器地帯条約に加盟している国々と連結させるなら、地球規模の広大なゾーンを非核兵器地帯とすることができます。

この運動を、核兵器使用・威嚇禁止条約⇒核兵器開発禁止条約⇒核兵器廃絶条約の流れと組み合わせることによって、核兵器廃絶の流れをつくることができます。この総合的な過程がヒロシマ・ナガサキプロセスです。