アメリカの中西部ミシガン州に位置する大都市デトロイトが破たんしました。日本でも夕張市の破たんが話題となりましたが、その規模が比べ物にならないくらい違います。デトロイト市の負債総額は約180億ドル(約1兆8000億円)に達しています。他方、夕張市の負債総額は632億円とされていますから、デトロイトの負債規模は大雑把に言って約30倍。非常に大きな影響があります。

 アメリカには日本のような政府からの地方交付税にあたる調整機能はほとんどありません。各自治体が各自治体の責任で運営しています。このように破たんとなると、その影響は日本の場合よりもはるかに深刻です。警察機能も含めて、行政機能が急落します。これがさらなる負のスパイラルをもたらしています。

 デトロイトは、自動車産業の町として栄えてきました。1903年にフォードは量産型の自動車工場を建設し、その後、ゼネラルモーターズやクライスラーなども工場を建設しました。このビッグ3の繁栄とともにデトロイトは栄えてきました。一時は180万人に人口があり、アメリカで有数の豊かな都市でした。

 1970年代には日本企業が安くて性能の優れた車を輸出し、暗雲が立ち込めます。ジャパンバッシングがあった時期です。

 1990年代に入り、大規模な摩天楼が林立するルネサンス・センターをシンボルに都市再生を目指し、新時代の都市のイメージがありました。ダウンタウンにはピープルムーバーが設けられていて、デトロイトの新たな挑戦の息吹を感じることができていました。私も10年くらい前に訪れ、新たな展開に驚かされました。

 しかし、世界の工場としてのデトロイトはやはりすでに終わっていたといえるのかもしれません。2009年のゼネラルモーターズ破綻、そしてクライスラー破綻によりデトロイトの経済は厳しさを増し、結局今回の自治体の破たんに繋がりました。

 いくつかのポイントがあります。

 まず、特定の産業に頼ることの危険性です。産業構造は急速にグローバル化しました。また技術革新のスピードは以前よりもはるかにはやくなりました。自動車においても、安全対策、環境対策、省エネ対策などによりモデルチェンジだけでなく、工場の仕組みの変化の周期がはやくなっているのです。多額の予算を投じての工場もすぐに時代遅れとなります。そこにグローバル化の波が来れば、より良い条件があるなら、すぐに他の地域、他の国に企業は移っていきます。業種は異なりますが、液晶テレビの亀山は、繁栄はわずかに10年でした。自動車産業でも周期ははやくなっていて、企業城下町は以前よりも大きなリスクを持っています。

 貧富の差が広がるなかで、富んだ人が移り住むなら、貧しい人だけが残るという状態になります。福祉に使う予算もカットされるなら、他の町に移り住むことができない弱者はさらに厳しい状況に置かれます。

 特に重要なのは治安の問題です。アメリカなどでは、都市が財政力を失うとすぐに治安の問題が顕在化します。富裕層は治安の問題が生じれば、その町から移動しようとします。富裕層が資産ともどもいなくなれば、町の活力はさらに停滞し、さらに治安が悪くなるという悪循環が起こります。幸いに日本ではこれは最小限に抑えられています。治安の問題は重要です。

 産業連鎖もポイントです。自動車産業のように裾野の広い産業の場合は特にそうです。自動車産業に直接かかわっていなくてもデトロイトの町の企業はお互いに連携していました。生産業部門だけでなく、商業や公的セクター、農業なども痛手を受けます。

 私が危惧するのは、デトロイトの破たんがアメリカの他の自治体の破たんに波及するのではないかということです。デトロイトの破たんによって地方債に対する信頼は大きく揺らぎました。財政的に厳しい自治体は、お金の調達にさらに苦しむことになります。自治体の破たんは、国の経済にも大きな影響を与えます。デトロイトの破たんの処理がどのくらいスピーディに、スムーズに行えるかどうか。これがアメリカの他の自治体の未来にも大きく影響しそうです。

 これはアメリカに限定されたことではありません。アメリカ以上に不安なのが中国。シャドーバンキング問題で、最初に影響を受けそうなのは、そうしたお金で公共事業を賄ってきた中国の自治体。自治体破たんからの治安不安の増大の可能性はあります。もちろん日本にもこうした流れがやってくることもあります。デトロイトの破たんは、世界の自治体にとって深刻な警鐘がならしているといえます。