今日から参議院選挙が「正式に」始まります。すでに選挙戦に入っていたといえばそうなのですが、日本では公職選挙法によって、公示前は政治活動、公示後になって初めて選挙活動が始まります。何か分かったような分からないような話ですが、まあ、それが日本の制度ですから、従いましょう。

 さて、この参議院選挙の論点は何なのでしょうか。いくつも重要な案件があります。まずは整理してみましょう。

1)金融・経済政策

 言うまでもなく、アベノミクスの評価になります。金融政策と経済政策とはかなり異なります。これまで金融政策が論議されましたが、実際には実体のある経済政策がどこまででるか、がポイントです。金融政策はあくまでカンフル剤。これも重要な政策ですが、将来的にはしっかりとした経済政策の展開が不可欠です。まだアベノミクスでどのような経済政策が展開されるのか、よくわかりません。野党もどのような政策をもっているのかぼやけています。選挙戦の間に、この経済政策がより具体的になることを望みます。

 この景気浮揚策は、実際には票が最も動くものです。その時の経済の状況によって選挙は大きく左右されます。海部首相の時には日本はバブル経済の真っただ中。弱小派閥からの選出ということで短命と見られていましたが、好調な経済を背景に首相在任日数818日間を記録しました。これは日本国憲法下において衆議院で内閣不信任決議が採択されなかった内閣の首相としては最長日数記録といわれます。海部首相の後の宮澤喜一首相の時は、ちょうどバブル経済が破たんした時でした。結局、不信任決議案可決の後、自民党政権は日本新党を中心とした野党勢力に敗れ、細川護煕氏に政権を明け渡すことになりました。小泉純一郎首相の時は、ちょっとした金融バブルと重なります。長期政権の秘訣はここにもありました。金融バブルのはじけたその後は、日本の首相はほぼ1年ごとに代わるという異常な事態が続きました。景気の影響を選挙は受けやすいのです。

2)憲法改正

 これも重要な論点です。憲法9条が改正されるのかどうか。もし改正されるならどのように改正されるのか。しかし、今回の選挙ではこの重要な論点はぼかされています。憲法96条が問題となっていますが、これはいわば手続き論。議論が盛り上がることはありません。重要でありながら、議論がかみ合わない典型的な状況になっています。この参議院選挙ではあまり注目されない論点となります。普通に考えれば、9条改正は次の衆議院選挙の後以降、ということになるのでしょう。自民党が大勝して、一気に次の衆議院選挙までの間に9条改正までとなると、明らかにやりすぎです。まずは国政選挙でしっかりと議論をしてからのステップが必要です。

3)安全保障問題

 安全保障問題も重要さを増しています。尖閣諸島、竹島、北方領土など領土をめぐる緊張が高まっています。中国の軍事的台頭、北朝鮮の不安定な展開なども国民に不安を与えています。また沖縄米軍基地問題もまだ決着していません。どのようにアメリカ軍と対応するのか。戦後、安全保障においては最も重要な時期に差し掛かっているといっても過言ではありません。「平和」な国日本は、戦後は米ソ冷戦の中においても直接的な安全保障上の脅威は具体的に感じてきませんでした。それが、「平和ボケ」と揶揄される国民を作ってきたとも言えます。しかし、今ある脅威は現実的になっています。対応を間違えれば、深刻な対立状況が生まれます。

 しかし、今回の選挙では、これだけ大切な問題にもかかわらず、焦点はぼけています。安倍首相はこの問題にはかなり慎重な言い回しをしています。対抗する民主党もこの問題では党内意見が分かれていて、明確な対立軸がでてきません。

4)TPP参加

 TPPへの参加をどうするかも重要論点の一つです。TPPへの加入の交渉に入るかどうかが、問われてきました。しかしここまで来たら、加入するかどうか、をもっと具体的に議論すべきでしょう。確かに条件は交渉によって多少変わりますが、大きな方向性はわかった話です。日本にとってTPPはプラスなのかマイナスなのか。TPP以外の貿易交渉はどうするのか。日本の景気を左右する大きな判断となります。ただ、この論点もいろいろと条件がつく議論となり、戦況においては影響力があるとはいえないテーマです。

5)エネルギー政策

 もっと端的に言えば原発の再稼働をめぐる問題です。大震災にともなう原発事故により、原発神話は大きく崩れました。「絶対に安全」と思っていたものが、深刻な事故を起こしたのです。再稼働をめぐって、意見は二分されています。原発に対して不安と思う人は多いのですが、エネルギー不足や電気料金の値上がりを不安視し、当面の再稼働を認める人もかなりいます。絶対に許さないという人もかなりいます。原発問題は安易な折衷案を出せるような類の問題ではなく、平行線をたどるようなものになります。しかし、これが票には結びつかない。世論調査ではかなりの人が原発反対といいます。昨年の衆議院選挙でも反原発を掲げた党はかなりありましたが、あまり票にはなっていません。おそらく今回の参議院選挙でも票には結びつかない重要課題となるのでしょう。

6)税制改革

 消費税をどうするのか。他の税制をどうするのか。議論はたくさんあります。しかしどちらかというと消費税増税はすでに終わった議論の感があります。民主党政権は消費税増税を国政選挙のテーマとすることなく、方向性を決めてしまいました。来年から増税するという重要な時期ですが、ほとんど議論なっていません。増税は選挙では話しにくいテーマとなってしまいました。

 このほかに、財政再建、年金問題、医療制度改革、教育問題、国際化なども重要な論点です。

 政策としては景気浮揚以外にあまり票が動かない選挙。これは大いに問題です。国民が政治に参画していないということが最も深刻な問題です。身近に感じる「景気」とマスコミからの「雰囲気」だけがポイントになる選挙では日本は変わりません。17日間の選挙戦の間に、候補者の主張を聞いて一緒に日本の未来を考える。こうした選挙を少しずつでも作っていきたいですね。