鳩山元首相の言動が、日本の外交をさらに混乱させる可能性

1月18日付の中国主要各紙は、鳩山元首相が南京大虐殺記念館で手を合わせる写真を1面に掲載したと読売新聞らが報じています。

日中関係が冷え込む中、中国メディアが日本の政界関係者の言動を好意的に報じるのは異例といいます。国営新華社通信は、「30万人」との記念館側の説明に鳩山氏が「うなずいた」と報じたといいます。まあこれは、どこまで明確に「うなずいた」のかは分かりませんが、そうした誤解される状況を作ったことは確かです。また、京華時報は、鳩山氏が歴史問題で「おわび」を表明し、沖縄県・尖閣諸島は「係争地」だとの認識を示したことを「理性的」だと絶賛したとあります。

強硬派とみられる安倍首相が、政権についてからは意外と控えた発言をしています。その中で、日中間の冷え切った関係を改善しようという努力がされていますが、鳩山元首相のような行動があると、そうした努力が水の泡と化してしまいます。中国にとっても日中間のわだかまりは決して望ましいものではありません。どこで、手を打つか。しかし元首相の肩書を持つ人が、中国の主張を相当に認めた発言をすると、期待が高まり、ハードルが高くなります。せっかく越えようとしていたハードルがあがり、結局は、また元の木阿弥となりかねません。

鳩山氏が民主党政権で首相になった時の、米軍基地問題への対応が思い出されます。鳩山氏は、2009年8月の総選挙中、「海外、最低でも県外」と公約してきました。これに沖縄県民の多くが、夢を抱き、大きな期待を寄せたのは確かです。それが首相になり、いろいろと「勉強」すると、県外移転は無理と判断と主張しました。

「県外移設を掲げたのは勉強不足だった」というのですから、驚きの展開でした。結局、米軍基地移転問題は混乱し、袋小路へと追いやられました。いまだに新たな展開ができない状態になりました。さらに驚くのは、首相を辞めて、沖縄を訪れると、「『最低でも県外』という気持ちを果たさなければ、皆さんの気持ちを十分理解したとは言えない」と発言し、首相の時の発言をまた修正。いったい、どうしたかったのか。混乱だけが後に残りました。

中国への訪問の構図はまた同じような感じです。鳩山氏の行動に意図があるのかどうか、不明です。今の日本と中国との関係の改善をするためには、お互いが抑制した言動をしながら、落としどころを探るしかありません。これは安倍政権が行うべきこと。それを個人的な「善意」から邪魔をしてしまうことは慎むべきことです。鳩山氏は、政治家を辞めても、元首相としての肩書がついて回ります。戦略なき外交は、最悪の外交となってしまいます。

小野寺五典防衛相は17日夜、北京で中国要人と会談した鳩山由紀夫元首相が沖縄県・尖閣諸島は日中間の係争地だとの認識を伝えたことについて、「日本にとって大きなマイナスだ。中国はこれで係争があると世界に宣伝し、国際世論を作られてしまう。久しぶりに頭の中に『国賊』という言葉がよぎった」と発言しました。おそらく「国賊」と呼ばれるのは心外と言われるでしょう。鳩山氏は、会っている人の雰囲気を感じながら発言し、日中関係を改善しようとしていると思っているに違いありません。結果として、さらに問題の解決を遅らせているだけです。

私は、安倍内閣が硬派のリーダーとして圧力をかけながら、タカ派的発言を控えることによって、日中関係の改善をもたらすのではないかと期待しています。そのシナリオが、まったく別のところから崩される可能性があります。鳩山氏には元首相としての自覚をお願いしたいと思います。