ニュー・イヤーズ・デイ:U2の名曲に隠されたメッセージ

「連帯(Solidarity)」の先導者、レフ・ヴァウェンサ(写真:ロイター/アフロ)

2018年が幕開けました。明けましておめでとうございます。

元旦に便乗しまして、毎年この日にラジオやテレビなどでこぞってオンエアされる、U2の名曲"New Year's Day"を取り上げます。

軽快なロックサウンドなのに、どこか哀愁を漂わせ、何かを訴えかけてくるようなこの曲。

U2: New Year's Day (歌詞)

芸人さん大活躍で、お祝い(お笑い)ムード満載の日本の元日には何となくマッチしていないようにも思えるのですが、毎年必ず何度も耳にします。

U2ファンの方々は、この曲をかけて新年に気合いを入れ直すと聞いたことがあります。素敵ですね。

New Year's Dayと政治

さてこの曲は、アイルランドが生み出した世界的なロックバンドである「U2」が初のシングルヒット(UKチャート10位)を獲得した記念碑的な作品です。

この曲が収められたU2のサードアルバムである「WAR(闘)」は、このバンドが「政治的・社会的な問題に関わる音楽活動をする」というスタンスを明示したものとして有名で、北アイルランド紛争での悲劇を歌った「Sunday Bloody Sunday(血の日曜日事件)」などの名曲が揃っています。

「New Year's Day」も同様に、強い政治的メッセージを持つ歌です。

一部のコアなファンの方々はご存知かと思いますが、この歌はポーランドの(のちに東欧全体の)民主化の先駆けとなったレフ・ヴァウェンサ(のちのポーランド大統領)が主導する運動「連帯(Solidarity)」への応援ソングなのです。

当初は、ボーカルのボノが妻に歌った愛のメッセージだったこの曲が、作成過程で政治的な主張へと転換していったといわれています。

「君への愛」が「君への愛が世界を変える」へと、大きな広がりを持つことになったわけです。

「連帯」とは?

当時のポーランドは社会主義体制。経済の低迷、食料の値上げや言論の弾圧などに対する人々の怒りは極限に達していました。

そんな中で1980年8月、レーニン造船所において独立した労働組合が結成され、大規模なストライキに突入します。

これを率いたのが前述のヴァウェンサで、社会主義国家で初となる、反共産党(反政府)を掲げた自律的な組織を構築していくことになります。

これが独立自主管理労働組合「連帯」です。上からの保護(という名の管理・監視)を拒絶し、下から新たな運動主体を構築していく人々の当時のエネルギーはいかばかりか、想像を絶するものだったと思います。

当然政府側はこのエネルギーに恐怖し、1981年12月に「戒厳令」を敷き、彼らの活動を徹底的に押さえ込もうとします。

U2がこの曲を構想しているときはまさに戒厳令中の、活動家たちにとっては苦しい日々であったと推察できます。

しかし、レコーディングが終わった直後の1983年1月1日に戒厳令は解除され、同月にアルバム「WAR(闘)」が発売されました。「連帯」はその後、民主的な手続きによる政権の奪取に成功します。

その意味で、この曲は歴史の転換期を象徴するものであり、より良い「生」を求めた人々の気持ちを表現したものでもあると考えられます。

歌に隠されたメッセージ

歌詞は上記公式サイトを参照していただければと思いますが、楽曲の途中に次のような内容が歌われます。

新聞は「真実だ、真実だ」と主張し続ける。しかし僕たちはその壁を打ち破る力を持っている。引き裂かれても、一つになれるんだ。

まさに「フェイク・ニュース」や「ポスト・トゥルース」など、メディアの真偽や責任が大きな問題となった「2017」を乗り越えるための、応援歌ではありませんか。

我々は自らの力で考え、「よりよい生き方」を目指しながら、もっともっとつながりあえるかもしれない。

そんな希望を抱きながら、ニュー・イヤーズ・デイを迎えたいと考えています。