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【2022年の鉄道】コロナ後を見据えた減便は得策か 西九州新幹線開業、リニアなどの未来は?

小林拓矢フリーライター
3月改正で首都圏ではラッシュ時減便が行われる(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 昨年の12月、この3月のダイヤ改正について発表があった際には、鉄道ファンに衝撃が走った――首都圏や関西圏を走る通勤電車の減便は、都市鉄道の今後の厳しさを感じさせるものとなった。「輸送体系を見直します」とはいうものの、現状の輸送需要にあわせて本数を減らす、というところがほとんどだ。

 JR西日本「アーバンネットワーク」では、昼間時間帯の利用者が少ないエリアの本数を減らしたり、大都市圏から離れた地域での新快速の本数を減らしたりと、サービスの低下が目立つ。

 これらの判断は、コロナ禍はもちろん、コロナ禍終了後も利用者はもとにはもどらないということから導き出された。通勤時間帯の利用者減少は鉄道でも目に見える形であらわれている。いっぽう、今後もコロナ禍が続いた場合、列車の本数を減らして「密」にしてもいいのか? という疑問は出てくる。

感染拡大時にも人々はふつうに通勤するようになった
感染拡大時にも人々はふつうに通勤するようになった写真:西村尚己/アフロ

ポスト・コロナに強気の姿勢を示すJR東海

 しかしJR東海は、3月のダイヤ改正でラッシュ時の減便を行わず、中央線の名古屋寄りでは315系を投入し、全車8両編成に統一、増発も行うという。ドル箱の東海道新幹線も速達化する。

 JR東海は、コロナ禍終了後には人々の働き方は元通りになり、長距離の移動も復活すると考えている。

 一昨年は、最初の新型コロナウイルス感染拡大の中でテレワークなどが求められ、多くの大企業では実際に行われたものの、やがて元通りに戻っていった。日本の共同体的な、よくいえば阿吽の呼吸、悪くいえば忖度で動く働き方の仕組みでは、どうしても場を共有することが重要になっている。

 そういう日本人の働き方をよく見ているのだろうか、JR東海はコロナ後にもとにもどるという前提で3月のダイヤ改正を発表した。

 名古屋圏はどちらかといえば古い働き方が主流の地域であり、日本のほかの地域と比べて製造業も盛んだ。筆者は仕事の関係上、JR東海の人とも接する機会はあるが、正しい日本の会社をいまに伝えるという企業文化を持っていると感じさせられる。

 そのあたりが、「未来」を見据えたこの3月のダイヤ改正への姿勢に表れているだろう。

315系で中央線名古屋エリアの輸送改善をめざす(JR東海プレスリリースより)
315系で中央線名古屋エリアの輸送改善をめざす(JR東海プレスリリースより)

 いっぽう、山陽新幹線を介して線路がつながっている九州新幹線では、「さくら」一部臨時化など、減便が気になる。輸送状況に応じて増発となるものの、東海道新幹線並みのフレキシブルなダイヤを作れるほどではない。ちなみに山陽新幹線では、博多発「のぞみ」2号の10時台東京着が実現した。

西九州新幹線の開業と今後

 この秋、西九州新幹線の武雄温泉~長崎間が開業する。九州新幹線が新八代~鹿児島中央間を先に開業し、その後博多との直結を待つ、といったパターンと同じだ。

 博多から武雄温泉までは在来線特急で連絡し、そこからは新幹線で長崎へ。東京や新大阪からだと2度の乗り換えが強いられる。博多からはこれまで特急「かもめ」で直通していたのが、乗り換えの手間ができる。現在でも博多から長崎までは「かもめ」で1時間50分から2時間程度。これが30分短縮される。

 だが、九州新幹線との接続や、佐賀県内のルートをどうするかがまだ決まっていない。佐賀県は福岡県に近すぎてメリットがないのだ。現在でも在来線で佐賀県から福岡県に通勤できるほどである。ここのルートをなるべく早く確定させないと、西九州新幹線は長い間今後の見通しが立たない。長崎県はずっと不便を強いられることになる。

西九州新幹線はどう九州新幹線と接続するか決まっていない(JR九州ホームページより)
西九州新幹線はどう九州新幹線と接続するか決まっていない(JR九州ホームページより)

リニア中央新幹線と北海道新幹線、今後は?

 高速鉄道の今後ということで気になるのはリニア中央新幹線と北海道新幹線である。

 リニア中央新幹線は、大井川水問題が膠着状態となり、現在有識者会議で議論され、昨年12月に中間報告書が提出された。JR東海の水問題への対策は有識者会議でかなり認められたものの、JR東海の静岡県に対する説明に問題があり、その点を厳しく指摘された。

 ただこの有識者会議の中で、大井川の水対策をどうするかをぎちぎちに詰めたため、従来よりも厳しい水準で工事を行わなければならなくなり、静岡県側の要望も一定程度認められたということになる。

 ただ、静岡工区の工事を今年じゅうに開始できるかは、有識者会議での最終報告書をこの一年で提出できるかにかかっている。そしてその上での、JR東海と静岡県との直接交渉となる。

 2027年度開業はすでにJR東海も困難であるとしつつ、ではいつ開業できるのかさえ定まらず、見通しは立たない。

 だが、いつか完成させるという強い意志は変わっていない。人の移動は必要であるという考えは、コロナ時代においてもJR東海は持っており、その証拠としてこの春ダイヤ改正での強気の姿勢を見せているといえる。

 ただ、2027年開業は無理にしても、いつ名古屋開業、そして全線開業になるかは、なるべく早いほうがいい。日本は現在衰退国であり、リニア中央新幹線の開業があまりにも遅すぎると、衰退してどうしようもなくなり、すでに経済の回復も困難になっている可能性もある。

 また、北海道新幹線の今後も心配だ。北海道新幹線新函館北斗~札幌間は、2030年度末、つまり2031年の3月に開業する予定を立てている。この工事は札幌駅周辺の地下区間の残土の問題などもありつつも、これまで少しずつ工事は進んでいる。

 ところが、2030年冬に札幌でオリンピック・パラリンピックを招致するという話が持ち上がっている。当然期待されるのは、北海道新幹線札幌開業の前倒しである。土木工事は遅れることが多いうえに、前倒しまで必要となると工期の短縮が求められる。鉄道・運輸機構により整備が行われているものの、土木関連技術者の人手不足の中で前倒しをできるほど余裕はあるのか。

 JR北海道も、北海道新幹線開業前倒しと、札幌オリンピック・パラリンピックに対応できるだけの体力はあるのだろうか。札幌駅の改装工事は二転三転しようやく開始した状況の中で、それを前倒しし、かつオリンピック・パラリンピックに協力できるだけの社内体制を持っているのか疑問だ。正直厳しいと思う。そのころ、JR北海道の経営状態は好転しているのか?

北海道新幹線の札幌開業前倒しは可能か?
北海道新幹線の札幌開業前倒しは可能か?写真:KUZUHA/イメージマート

 コロナ後の鉄道はどうなるのか。それに適切な解を見いだせない状態で、本数削減を多くの鉄道が行うようになっている。オミクロン株の感染が拡大する現状でも、人の動きは活発となっており、通勤ラッシュはいまなお続いている。高速鉄道に関しては明るい話題はあっても、その先の見通しは立たない。2022年の鉄道は、コロナ後のこの社会の未来を予見するかのような動きとなるだろう。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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