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多く存在する「ややこしい駅」 新宿、東京、京急品川、名鉄名古屋の複雑さを紐解く

小林拓矢フリーライター
ややこしいのは新宿駅のような広い駅だけなのだろうか?(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 JR東日本をはじめ、京王電鉄・小田急電鉄・東京メトロ・都営地下鉄が乗り入れる新宿駅は、迷いやすい駅の代表格として知られている。単に新宿駅があるだけではなく、地下通路で新宿西口駅(都営大江戸線)や新宿三丁目駅(東京メトロ丸ノ内線・副都心線、都営新宿線)とつながっている。さらには都庁前駅(都営大江戸線)、西新宿駅(東京メトロ丸ノ内線)、西武新宿駅(西武新宿線)とも、地下通路で接続されている。

 そんな状況から、新宿駅は「わかりにくい駅」と言われている。

新宿駅の構内(京王電鉄ホームページより)
新宿駅の構内(京王電鉄ホームページより)

 新宿駅はややこしさに加え、駅そのものも広くて複雑だ。埼京線ホームは離れている、成田エクスプレスのホームはかなり遠くにある、小田急のホームは二層構造である、京王のホームは行き止まりの新宿駅と都営新宿線と接続する新宿駅(通称新線新宿)の2ヶ所にあり、しかも両駅は改札内でつながっている。これらがわかりにくさに拍車をかけている。

 大規模なターミナルが同じ駅名を名乗ると、そうなるのはしかたがない。

 他にも広くてややこしい駅はある。

東京駅と大手町駅、ただひたすらに複雑だ

 東京駅も大きな駅である。新幹線のターミナル駅としてJR東日本・JR東海が乗り入れているだけではなく、在来線駅としても多くの路線が乗り入れている。さらに複雑感を増幅させるのは、2つの地下ホームである。横須賀線・総武線地下ホームと京葉線地下ホームだ。とくに京葉線地下ホームは離れて深い場所にあるため、「遠い」とよく言われる。ただ、京葉線の地下ホームはあの場所しか確保できなかった。有楽町駅から近い場所にしか、余裕のある地下空間が確保できなかったのである。よく「成田新幹線のホーム予定箇所を使用した」と言われるが、そもそもなぜあの場所に成田新幹線のホームができる予定だったのか、と考える必要もある。

 高い位置にある中央線ホーム、数字の並び方が入り組んでいるJR東日本とJR東海の新幹線ホームなど、わかりにくい要素が満載の東京駅である。

東京駅の構内(JR東海ホームページより)
東京駅の構内(JR東海ホームページより)

 さらに複雑にしているのが、東京駅と地下通路で接続されている東京メトロと都営地下鉄の大手町駅である。

 確かに東京メトロ丸ノ内線には東京駅があるものの、東京メトロ東西線の大手町駅とJRの東京駅は直結している。東京メトロ東西線の改札を通ると、ほかの東京メトロ各線にも行くことができる。大手町駅には東京メトロ丸ノ内線・東西線・千代田線・半蔵門線、都営三田線が乗り入れている。都営三田線の大手町駅は、千代田線の二重橋前にも近い。

 JRの東京駅を降りて皇居に向かって歩くと、皇居前広場の手前に二重橋前駅の入り口がある。大手町駅も、複数の層からなる入り組んだ駅であり、ややこしさではそれだけで新宿駅ともいい勝負なのではないか。東京駅と組み合わせるともっと、となる。場合によってはただひたすら乗り換えのために歩かなければならないのだ。

入り組んでいる大手町駅(東京メトロホームページより)
入り組んでいる大手町駅(東京メトロホームページより)

 では同一のホームにまとめてしまえば、という考えもあるだろう。関東では京急電鉄の品川駅がそうだ。

京急の品川駅には別のややこしさが

 京急電鉄の品川駅は、2面3線。1番線が羽田空港や三崎口方面、2番線が泉岳寺や都営浅草線方面となっている。3番線は一部列車や「ウイング号」に使用する。主に1番線と2番線だけで多くの列車を扱っているような状況だ。

 しかし京急を走る車両はさまざまである。京急の車両だけではなく、都営地下鉄の車両や京成電鉄・北総鉄道の車両とある。京急の車両だけでも、2扉車と3扉車がある。以前は4扉車もあった。行き先も、品川駅から南側へは羽田空港方面と三崎口に分かれ、列車種別も快特・エアポート快特・特急・エアポート急行・普通と5種類だ。そのうえ、4両編成・6両編成・8両編成・12両編成と編成長まで違うのだ。

京急の品川駅はこれだけの規模で多様な車両や列車種別を扱う(京急電鉄ホームページより)
京急の品川駅はこれだけの規模で多様な車両や列車種別を扱う(京急電鉄ホームページより)

 京急の品川駅では、細かい案内放送と駅の表示、そして足元の乗車位置表示を合わせてこれらを全部さばいている。一見利用しやすいように見える駅でも、わかっていないと実は使用しにくい駅であり、新宿駅のような駅とはべつのややこしさもあると感じるのではないだろうか。ちなみに、JRの品川駅は広い面積があるものの、わかりやすい駅である。

 その究極の形が、名鉄の名鉄名古屋駅である。

 名鉄名古屋駅は、3面2線と特殊な形をしており、上下線の間にもホームがあるというスタイルになっている。このホームは、降車用ホームとして使用されるだけではなく、特別車両の乗車のためにも使用されている。

 各方面からの列車がそれぞれ名鉄名古屋駅にやってきて、各方面へとちらばるというスタイルになっている。乗車と降車を分けることで、人を扱う時間を減らすというしくみになっている。案内に注意しないと乗り間違えることもあるのだ。

名鉄名古屋駅こそはまりやすい駅ではないだろうか(名古屋鉄道ホームページより)
名鉄名古屋駅こそはまりやすい駅ではないだろうか(名古屋鉄道ホームページより)

 だがこれらの駅は、改良工事が行われる。

 まず名鉄名古屋駅は、再開発計画とあわせて線路やホームの数を増やす計画がある。京急の品川駅は、品川駅を地上ホームにし山手線の電留線跡を利用し北側にずらしたうえで、JRと共通のフロアに橋上駅舎を設け、南側の踏切がある箇所を立体交差にするという計画が進んでいる。その際に京急の品川駅は、2面4線になる予定だ。

 ややこしい駅というのもいろいろとあるものの、広くて迷いやすい駅ばかりが注目されがちだ。同じホームでもどんな車両が来るか、どこへ向かうのかがわかりにくい駅というのもあり、こちらにもぜひ目を向けていただきたい。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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