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JR北海道が来春ダイヤを見直し 「札幌駅新幹線ホーム建設」までの険しい道のり

小林拓矢フリーライター
キハ261系特急「おおぞら」(写真:KUZUHA/イメージマート)

 それでも鉄道事業は維持させなければならない、北海道新幹線が札幌に来るまでは――というのがJR北海道経営陣の共通した考え方だろう。

 ただでさえ経営が厳しい状況にあるのに、コロナ禍で乗客も減った。運賃や料金による収入は減り、施設の維持や人件費の支出は変わらない。そんな中でも、2030年度に札幌駅に新幹線を迎えることは、長期的にはやらなくてはならない。ただし、近い将来の不安材料は多くある。

 先日、JR北海道がほかのJRにさきがけて来春のダイヤ見直しの概要を発表した。ダイヤ「改正」ではなく「見直し」というところに、厳しさを感じさせる。どんな内容なのか?

ダイヤ「見直し」のポジティブ・ネガティブ

 今回のダイヤ見直しで注目すべきところは、札幌~釧路間気動車特急「おおぞら」がキハ283系からキハ261系に置き換わるところである。キハ283系は振り子式特急で高コストの高性能車両であり、最高速度は130km/hとなっていたものの、2011年の石勝線内での脱線火災事故による影響で110km/hに抑えられている。キハ261系の近年の車両は、導入当初使用されていた車体傾斜装置がつかないものとなっている。加えて、速度制限は線路のメンテナンス軽減のために今後も続くだろう。

 携帯電話の充電設備や車いすスペースなどを設置して時代に対応するとしている。だが、過去に過酷な運用を行い、札幌~釧路間を高速で結んだキハ283系が引退するしかないというのは、JR北海道の現状を考えると仕方がないことかもしれない。設備の快適さは改善するものの、経営体制や安全体制に問題が多いJR北海道としては、こうするのが妥当であるともいえる。

 普通列車では、気動車キハ40が引退し、電気式気動車H100形を導入する。気動車の性能が向上することで、時間短縮が可能になる。これ自体は極めてポジティブなことである。

 普通列車への新車の導入は、老朽化が著しい国鉄型車両をJR東日本の電気式気動車と共通の設計となった車両と置き換えることでコスト削減、輸送力改善となるともいえる。だがもう、変えないとダメな状況にまで追い込まれているのだ。

 また、札沼線(学園都市線)に新駅「ロイズタウン」開業、宗谷本線の東風連を「名寄高校」に改名・移転する。

 接続がいまいちだった北海道新幹線と特急「北斗」の接続見直しも。

 おそらく、厳しい中で行える輸送改善を目一杯やったという感じだろう。ただ、特急の高速化は今後は無理というのがわかる。

 いっぽう、特急「おおぞら」の閑散期減車で、ふだんは5両編成だったものが4両編成になる。動力費の削減というのが理由ではあるものの、それだけ利用者が減ったといえる。かつては「おおぞら」は増車がひんぱんにあった。

 札幌~旭川間の特急運転減少や、普通列車の札幌圏での土休日減便や札沼線の時間帯による減車、札幌圏以外でも普通列車の減車や土休日運休などの見直しとなる。根室本線(花咲線)1駅、宗谷本線1駅、函館本線5駅を廃止する。

 これらの施策で、動力費約7千万円、駅廃止で1千万円、あわせて8千万円の経費削減となる。

 厳しい経営環境の中で、できる限りのことを精一杯にやっている。そんな中であわせて、JR北海道の今後の見通しで唯一となる明るい材料、北海道新幹線関連の話も出てきた。

札幌駅新幹線対応工事が具体化

 北海道新幹線の札幌駅ホームは、在来線ホームの東側にできる予定だ。そのために、在来線の1番線をなくして新幹線の通るスペースを確保する。2022年10月には北側に新たに11番ホームができる。

 だが問題となるのは、札幌駅周辺の商業施設が一部閉鎖になるということである。2022年10月から札幌駅地下の「パセオ」が休館になる。高架下商業施設にも影響が出る。

 JR北海道は、鉄道事業での赤字を少しでも軽減しようと、札幌駅周辺の商業施設の運営に力を入れてきた。現在の札幌駅が高架化し、その後再開発される際に、北海道新幹線のスペースは考慮されていなかった。「ステラプレイス」などがある場所は、旧駅舎や地上ホームがあり、ここに新幹線ホームができればとは思うものの、稼ぎ頭である商業施設を撤去することは困難だ。新幹線ホームは在来線ホームの東側となった。

「パセオ」の休館は耐震補強工事によるものだが、3年から6年の休業というのはJR北海道にとっては厳しい。

「節約」迫られるJR北海道の今後

 来春のダイヤ見直しや、札幌駅新幹線対応工事などのようすを見る限り、JR北海道はしばらくのところ最低限の施策だけでしのいでいくしかなく、鉄道事業そのものの大規模なイノベーションといったものは難しいとわかる。かつては高速化のためのハイブリッド気動車キハ285系の開発もしていたのだが、事故や不祥事の連続で優先順位が下がり、開発は中止しキハ261系の増備となった。

 札幌駅周辺の再開発も2030年度の北海道新幹線開業にあわせて行うものの、それまでは支出が増加し節約が必要になるという状況は続く。

 遠い将来に希望はあるものの、この数年を乗り越えるにはどうすればいいかがJR北海道の課題となっている。とくに鉄道事業での「安全」と「改善」と「コスト削減」は待ったなしであり、北海道新幹線開業までどう耐え忍ぶかが、経営の厳しいJR北海道生き残りのカギとなっている。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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