副都心線以降、新線はつくらない――東京メトロの長年の方針が、変わる可能性があらわれた。有楽町線を豊洲で分岐し住吉へ向かうルートや、南北線の白金高輪から品川へ向かう路線が、つくられる可能性が出てきた。

 その議論と並行して、東京メトロの上場の話の具体性が見えてきた。これまで何度も話題にあがっていたが、立ち消えになっていたものだ。

 この2つのトピックは、国土交通省の交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等に関する小委員会」で議論された。

 これらに関する答申は15日に発表された。同日、赤羽一嘉国土交通大臣と小池百合子東京都知事がオンラインで会談し、メトロ株と新線の今後を確認した。

上場が既定路線だった東京メトロ

 東京メトロは現在、国が53.4%、東京都が46.6%の株式を保有している。2004年に営団地下鉄から民営化され、株式上場を行う方針が決まっていたものの、いまなお上場していない。国の保有株は2027年度までに上場し、東日本大震災の復興財源に充てることが決まっているものの、東京都がどうするかということが焦点となっていた。国が売却した株式を都が買うことも検討されていたものの、議論は進まず持ち株比率は変わらなかった。

 2021年1月に鉄道部会に小委員会ができ、東京圏の地下鉄ネットワークのあり方を議論するようになった。そこで東京メトロの上場がテーマになり、国や都がそれぞれ持ち株の半分を上場するというプランが出てきた。

 上場は計画としてあったものの、ここにきてようやく動くようになった、というところだ。

 以前東京メトロの人と話をした際も、「どうするのか……。上場の方針は決まっているのだが」といった感じで、メトロの側ではいかんともしがたいという感じだった。

 この小委員会で、東京メトロの上場についての具体的な道筋が、ようやく議論されるようになり、答申がまとめられた。

 この答申では、国と東京都が同時・同率で売却する、ということになった。

路線網を拡大しないとしていた東京メトロの今後は

 東京メトロは、2008年に開通した副都心線を最後に、新線の建設を行わないことを表明してきた。営団時代から計画が進んでいたものは民営化してからも手がけることにして、それ以降は新線をつくらず、既存の路線で経営を成り立たせていくという考えだった。

 いっぽう、東京は(少なくともコロナ禍前は)世界都市としてますます人が集まり、栄えるようになっていった一方で、世界の都市間競争でも勝たなければならないという必要性も強まっていった。

 そんな中で、鉄道をどうするのかという議論も当然出てくる。

 交通政策審議会鉄道部会では、「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」が2016年7月に「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」という答申を出した。その中には、東京メトロが関わらなければならないものがあった。世界都市・東京の機能をより強化するための「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」の中で、「東京8号線(有楽町線)の延伸(豊洲~住吉)」と、「都心部・品川地下鉄構想の新設(白金高輪~品川)」が東京メトロと関連するプロジェクトとなった。前者は国際競争力強化の拠点である臨海副都心と東京圏東部・北部地域のアクセス向上のためであり、後者は六本木などの都心部とリニア中央新幹線の始発地や国際競争力強化の拠点となる品川とのアクセス利便性を向上させ、品川からの羽田空港へのアクセスもさらに便利にするというものだ。

 ところが、そのための費用負担の問題が発生する。

 東京メトロは、お金を使いたくない。いまの鉄道網だけで、十分に稼げる。2路線の建設費用は2,400億円程度。ではどうするのか。

 国や都が建設費を支援し、それにより新線をつくるという方針でメトロの考えを変えさせようとしている。いっぽう、国の売却益は東日本大震災の復興財源とする方針であり、都と合わせて売却益を新線建設費に繰り入れられるのかということもいえる。建設予算の財源と復興財源をどうかぶらせないようにするかということも今後の課題だろう。地下高速鉄道整備事業費補助を使用する、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構による都市鉄道融資を利用する、というのが答申にある。

 東京メトロ上場をどうするか。新線をどうするか。このあたりをまとめた答申が、15日に出た。同日、赤羽一嘉国土交通大臣と小池百合子都知事が会談し、東京メトロ株の売却で合意した。これにより、なかなか決まらなかった東京メトロ上場の道筋が、ようやく定まった。