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来春のダイヤ改正は前代未聞の全国統一か 「終電繰り上げ」による各社局調整の産物

小林拓矢フリーライター
例年とはちがう時期に京急電鉄もダイヤ改正を行うことになった(写真:kawamura_lucy/イメージマート)

 最近、多くの鉄道事業者が来春のダイヤ改正の概要を発表し始めた。JR西日本やJR東日本に続き、都市圏の大手私鉄や地下鉄事業者も概要を発表しはじめ、そのほとんどが終電を繰り上げるというものだった。事業者によっては、始発を繰り下げるか、そのままにするかという違いはあるものの、多くの社局が来春のダイヤ改正に向けたプレスリリースを発表している。

意外なところが来春ダイヤ改正に参加

 京急電鉄・京成電鉄は、従来は12月ころにダイヤ改正を行っていた。あわせて東京都交通局の都営浅草線もダイヤ改正を行い、北総鉄道や芝山鉄道、新京成電鉄もダイヤ改正を行っていた。しかし、この冬にそれらの社局はダイヤ改正を行わない。

 ダイヤ改正はふつう、相互乗り入れがある事業者があわせて行うことになる。たとえば京王電鉄と都営新宿線、小田急電鉄と東京メトロ千代田線・JR東日本といった組み合わせだ。

 近年は相互乗り入れが盛んになったため、ダイヤ改正が同日に行われる傾向が強くなっている。たとえば東急電鉄(と横浜高速鉄道)、東京メトロ副都心線・有楽町線、西武鉄道、東武鉄道は同時にダイヤ改正を行う。

 東京メトロや都営地下鉄は、乗り入れ先の都合にあわせ、路線によってダイヤ改正の日を変えている。乗り入れのない銀座線や丸ノ内線は、ほかの路線とはまったく異なる日にダイヤ改正を行っている。

 各社局の都合をあわせると、だんだんダイヤ改正が同じ日になっていく。近年はその傾向が目立っている。それでも、京王電鉄や京成電鉄、京急電鉄はダイヤ改正をJRやその他私鉄に合わせようとしなかった。

 ところが、これらの社が来春にダイヤ改正を行うと表明した。これは、異例のことだ。

なぜいっせいにダイヤ改正を行うのか

 理由は、各事業者間で行われている「終電繰り上げ」の調整である。

 ふつう、ダイヤ改正のときでも、終電のダイヤはいじらない。近年、「接続をしない」旨の案内がされていることはあるものの、それは列車遅延時に対応はしないということを意味している。

 終電時間帯は、きちんと列車が動いていれば接続ができるようになっている。そのため、それをいじることで大きな影響を与えることになり、終電のダイヤを動かすというのは一大事となっている。

 しかし、JR東日本が終電を繰り上げるとなると、接続するほかの事業者も終電を動かさなければならなくなる。各事業者の終電は、密接にダイヤが組み合わせられているからだ。

 JR東日本が「終電繰り上げ」の理由として「深夜時間帯の利用者減少」「メンテナンス時間の確保」を挙げている。どこの事業者も同じような状況だ。とくにメンテナンス時間の短さや、そこで働く人の人手不足など、どこも同じ悩みを抱えている。さらに各事業者で調整が必要となると、同時期にダイヤ改正を行う必要が出てくる。

 同じような理由、各事業者で調整が必要となると、同時期にダイヤ改正を行う必要が出てくる。

 関西圏の各事業者も同じだ。JR西日本が変わればほかも変わるしかない。

 どの事業者も「来春」としてまだ具体的な日時は決まっていないものの、どこかの事業者が1週間ほどずらす、というのは考えにくい。

 現在、各事業者間で調整中、どうダイヤを設定するかを検討している状況にあるというのが妥当なところだ。そして前代未聞の全国統一ダイヤ改正となる。

では、「来春」とはいつか?

 そこで気になるのは「来春」という表現である。JR各社は毎年3月にダイヤ改正を行う。2020年は3月14日、2019年は3月16日、2018年は3月17日、2017年は3月4日、2016年は3月26日、2015年は3月14日と、いずれも土曜日に行われた。

 となると、3月のどこかの土曜日でということになる。2021年3月の土曜日は、6日、13日、20日、27日となる。例年と同様の改正なら13日に行われると予想できるが、多くの私鉄もあわせてダイヤ改正を行った2016年と同様のパターンとなると、27日とも考えられる。なお20日は「春分の日」で祝日である。

 JR東日本の五能線では12月9日から2021年の3月18日まで日中に工事を行い、一部列車を運休する。こういったダイヤが関連する工事の計画を立てる場合、ダイヤ改正はまたがないようにする。ダイヤ改正がそこに絡むと、工事の計画が難しくなる。

 また近年、「春分の日」にダイヤ改正を行ったことはない。「春分の日」が土曜日にかぶらないことが多く、かつ前回に土曜日が「春分の日」となった2015年は3月21日がその日であり、ダイヤ改正とは異なる日であった。

 さらにさかのぼると2004年3月20日が土曜日の「春分の日」であり、このときは3月13日にダイヤ改正が行われた。

 となると、2021年3月27日土曜日に全国統一ダイヤ改正が行われると予測できる。各事業者間の調整が行われる中、3月の早い時期にダイヤ改正を行うことにはならず、4月に持ち越したくはない。新学期などもある。そうなると3月27日というのが、もっとも可能性が高い。

 現時点で詳細な時間がまだ出ていないということは、調整に時間がかかっているということであり、そのぶんダイヤ改正は3月の遅い時期になると考えるのが妥当なところではないだろうか。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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