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「緊急事態宣言」延長で鉄道事業者はどう今後を考えているのか?

小林拓矢フリーライター
「のぞみ12本ダイヤ」は、いつ見られるのか?(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 いつになったら、いつものように列車に乗れるのか――。ゴールデンウィークの帰省や観光をあきらめた人も多ければ、ふだんのように通勤できないことに参っている人も多いかもしれない。

 当初、新型コロナウイルスによる「緊急事態宣言」は5月6日までということになっていた。この宣言が出たときには、「もうしばらくすれば収まるだろう」と思っていた人も多かったはずだ。しかし鉄道は、コロナ禍の行方を厳しいものと見ていた。4日の安倍首相による「緊急事態宣言」延長を、鉄道はすでに見通していた。

GWの運休がさらに延びる

 すでに4月7日ころには、ゴールデンウィーク以降の臨時列車運休を見合わせるという発表を、各鉄道事業者は行っていた。臨時列車の多い東海道新幹線は、定期列車以外の列車を運行しないという措置を取っていた。小田急電鉄の「ロマンスカー」は5月2日から6日、9日から10日を運休とした。

 また、JR九州は、5月2日から6日までの在来線特急列車を運休することを4月21日の時点で発表している。

 観光列車の運休も相次ぐ。大井川鐵道は、5月6日までSL列車を運休、井川線の運休も発表した。しかしその運休も延長している。

 鳴り物入りで運行されるはずだったJR東日本「サフィール踊り子」は、利用者の少ないまま、5月7日から一部列車で運休が始まり、6月からの指定券発売を見合わせている。

 注目を集めていたJR西日本「WEST EXPRESS 銀河」も、運行開始が延期されいったんは5月8日からの運行に決まったものの、さらに延期になった。

 このような動きは、さらに広まりそうだ。

 JR東日本の「成田エクスプレス」は5月1日から多くの列車が運休し、京成電鉄の「スカイライナー」も同日より一部運休となる。JR東日本は5月28日以降の新幹線や中央本線・常磐線特急の指定席発売を見合わせ、この日以降の減便が検討されているとも考えられる。

 このあたりの発表は、すでに安倍首相が「緊急事態宣言」延長の意向を示す前から行われている。延長を見越した動きは、着々と進められていたのだ。

鉄道のサービス低下も

 コロナ禍により、事業者によっては土休日ダイヤを間引いたり、各種サービスを削減したりしている。たとえば西日本鉄道は、土休日ダイヤを特別ダイヤとし、列車の本数を減らしている。JR九州や四国、北海道は、すでに特急列車の本数を減らしている。

 また、東海道新幹線を除き、車内販売は休止した。「グランクラス」のサービスも休止、「サフィール踊り子」の「ヌードルバー」のサービスも休止した。私鉄では小田急電鉄の「ロマンスカー」や、東武特急の車内販売も休止している。

 東急電鉄では大井町線の「Qシート」の営業を中止した。ゴールデンウィーク期間は、京王電鉄の「京王ライナー」は運行されない。

 その他にも、ことでんや広島電鉄など、中小私鉄での減便も相次ぐ。

この先の見通しは?

 コロナ禍は深刻化すると鉄道事業者は見ており、そのとおりになっていった。政治も後手で対応しつつある。しかし、JR東日本は5月28日以降の減便を示唆していることからもわかるように、この状況はしばらく変わらないということを想定している。

 鉄道事業者は、政府よりも厳しい見方を、新型コロナウイルスに対してしている。「緊急事態宣言」の延長もある程度見通し、そのとおりの対応をしている。さらに6月以降はどうするかまで念頭に置いている。

 東海道新幹線は「のぞみ12本ダイヤ」が実行されることはしばらくなく、JR東日本は伊豆方面の定期列車を6月1日から30日まので一部指定席を発売することを見合わせているとすでに発表している。そのほかにも新幹線の減便計画がささやかれている。

 もちろん、「緊急事態宣言」が5月末に解除されても新型コロナウイルスの対策は必要であり、一気におさまるとは到底思えない。その意味では、観光列車を中心にある程度の運休計画を立てておくということも必要である。

 しかし、「緊急事態宣言」が再度延長されることも予想される。各事業者とも、情勢を見極め、6月以降の運転計画を立てていくと考えられる。「緊急事態宣言」を地域によっては解除するという方針もあるものの、はたして楽観的な見通しは可能なのか。

 その意味では、近鉄が5月23日以降に運行する特急列車の指定席を1カ月前から1週間前に変更したというのは正しかった。近鉄の発表によると、「1カ月先の社会情勢が見通せないことから、これから先、特急券を前売りで購入されるお客さまへのご迷惑を軽減するため」という。社会情勢が見通せない中で、運行の計画を適切に立てていくことは困難だ。

 これから先、鉄道事業者は運行計画などさまざまな発表を行う。その発表からは、コロナ禍の今後をどう予想するかが見えるようになっている。しばらくは厳しいと、各事業者は考えていることがわかるだろう。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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