東北新幹線、盛岡~新青森間を時速320キロへ 高速化への挑戦

時速320キロ運転が可能なE5系(写真:NATSUKI SAKAI/アフロ)

 新幹線はどこまで速くなるのか――。JR東日本が盛岡~新青森間の時速を向上し、「整備新幹線規格」で可能だった時速260キロから、320キロへと向上させるという方針を聞いたとき、筆者は驚いた。

 すでに、東北新幹線では宇都宮~盛岡間で時速320キロ運転が行われ、日本の新幹線でもっとも速い運行速度となっている。

 北陸新幹線や九州新幹線などの「整備新幹線」では建設費の抑制のために260キロ制限がかけられ、それゆえにスピードアップは困難だと考えられていた。

 東北新幹線の盛岡~新青森間も「整備新幹線」として建設が進められてきた。それゆえに260キロが限界であり、高速化の観点からすれば難しい問題となっていた。しかしJR東日本は、防音壁のかさ上げや吸音板の設置など、200億円の費用を投じ、この区間の高速化に取り組むことになった。

高速化がなぜ必要なのか?

 JR東日本は、この春に新幹線の高速化をめざす新しい戦略組織を立ち上げることになった。一方で5月には時速360キロの営業運転のための試験車両「ALFA-X」を完成させる。騒音の関係で低速運行しか行えなかった東京~大宮間についても時速110キロから130キロへと最高速度を引き上げる。

 東北新幹線は、新青森から先は北海道新幹線となり、現在は新函館北斗までとなっているものの、将来は札幌へと向かうことになる。その際に必要なのは、高速運行である。整備新幹線区間での高速化や、現在時速320キロで走行している区間での高速化が実現しなければ、多くの利用者に東京~札幌間を利用してもらうことができない。

 所要時間が4時間以下になれば、一般には新幹線の利用者のほうが、飛行機の利用者よりも多くなるとされる。また、飛行機の利用者の多い東京~札幌間の利用に新幹線が食い込むことができれば、収益の観点からも効果があるということになる。

 さらに世界でもトップクラスに利用者の多い羽田~新千歳間の航空路線の本数を減らし、そのぶんの羽田空港の発着枠をほかの遠隔地の航空路線に回せば、日本各地から東京へ向かうのがずっと便利になる。

 波及効果を考えると、新幹線の高速化は必要なのだ。

 東京~札幌間と同程度の距離の東京~福岡間は、新幹線で5時間程度。およそ9割の人が飛行機を利用する。だが、もし新幹線が開業していなかったら、ということを考えると、飛行機だけではまかなえなかったのではないか。また東京から広島までは飛行機と新幹線のシェアが拮抗している。

 飛行機から乗客を奪うだけではなく、大量高速輸送が可能という新幹線の特徴を最大限に活かし、日本の交通環境を適正化するためにも、新幹線の高速化は必要である。

高速化に挑んだ新幹線各社

 新幹線を運行する各社は、高速化に力を入れてきた。東海道・山陽新幹線だけだった時代には時速210キロだったものが、主要なところだけでも東海道新幹線は285キロ、山陽新幹線は300キロ、東北新幹線は320キロとなっている。

 JR各社発足後、上越新幹線は一部の列車で時速240キロになる。東海道新幹線でも、300系登場後に270キロとなり、高速化競争の幕が切って落とされた。JR西日本は、山陽新幹線区間での高速運行と、飛行機への対抗のために500系を開発。300キロ運転を可能にした。

 だが500系は独自の座席配置などが東海道新幹線への乗り入れにあたって問題となり、東京~博多間の運用はなくなった。現在は編成を短縮し、山陽新幹線区間での「こだま」運用に用いられ、「悲運の名車」としていまなおファンに愛されている。

 その後700系以降はJR東海とJR西日本は共同で開発するようになり、N700で東海道新幹線区間でも時速285キロ、山陽新幹線で300キロを実現した。加減速性能を向上させ、車体傾斜装置を導入するなど、「詰め」を追求した車両である。東海道新幹線区間は古い時代の設計のため、高速化が他の新幹線に比べて難しいところを車両性能によってカバーしている。現在はN700Aをさらに改良したN700Sを開発中である。N700Sは、2020年7月にデビューする予定だ。

 一方東北新幹線でもE2系で時速275キロ、E5系は当初300キロだったものの、2013年に320キロに。こちらは、純粋な速度向上を中心としている。

 新幹線は、高速化へのたゆまぬ努力を続け、それにより利便性を高め、交通機関としての使命を果たしている。困難だと思われた整備新幹線区間の高速化も、実現可能性が高まっている。その上、さらに高速化を進めようと、各社スタンスは異なりながらもさまざまな取り組みを行っている。この高速化が、多くの人の利便性向上につながることは、間違いない。