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2019年の鉄道はどうなる? 北海道知事選、消費増税に影響される可能性は大

小林拓矢フリーライター
ことしも鉄道に多くの関心が寄せられる一年となるだろう(写真:アフロ)

 あけましておめでとうございます。ことしもよろしくお願いします。

 新しい元号になる2019年、鉄道はどう変わっていくのか。現時点での情報を元に、ことし鉄道各社で起こることを予測、紹介していきたい。

3月のダイヤ改正で中央東線特急運行体系が激変

 まず近いところでいえば、1月26日に東京メトロ丸ノ内線でダイヤ改正が行われ、2月には新型車両「2000系」が導入される。

 そして3月16日にはJRグループほかでダイヤ改正だ。このダイヤ改正では、新幹線「のぞみ」「はやぶさ」などが所要時間を短縮させ、おおさか東線が全通し、新大阪への新たなアクセスルートができるといったことが報じられている。上越線にはE7系が投入され、「グランクラス」で新潟へ向かうことも可能になる。

 大きな変化としては、中央東線(中央本線のJR東日本区間)の特急列車の体系が変わるということだ。「あずさ」「かいじ」列車がE353系で運行され、速度や快適性の向上が図られることになる。それにより「スーパーあずさ」の名は消える。一部の「かいじ」には富士急行線に乗り入れる「富士回遊」が連結される。また、短距離特急「はちおうじ」「おうめ」も新設される。

 これに合わせて、「あずさ回数券」が廃止され、一方でチケットレスサービスが導入される。この「あずさ回数券」の廃止については「実質的な値上げだ」として山梨県や長野県の人からの反発は強い。その動向によってはチケットレスサービスの特急料金の値下げや、ネット予約割引「えきねっとトクだ値」の割引率も上がる可能性もある。

 中央東線エリアは、並行する中央高速バスとの競争が激しく、「あずさ回数券」は対抗する武器ともなっていた。「実質的な値上げ」の現実に、利用者の高速バスへの流出がどこまで起こるかが課題となっているものの、すでに中央高速バスの乗客は多く、増車などの対応もバス会社は取る必要が生まれるだろう。

北海道知事選にJR北海道の今後がかかっている

 ことし4月7日には統一地方選が行われる。この選挙では、北海道知事選もある予定だ。現職の高橋はるみ知事が退任、参院選への転進を表明し、自民党・立憲民主党などの野党それぞれが候補者を探している状況だ。選挙戦は国政の与野党が対立する構図となるだろう。

 高橋はるみ知事のJR北海道の現状に対する対応は、お世辞にもよいとはいえなかった。知事としてのリーダーシップを発揮できず、JR北海道や各市町村、国の意向をうかがうだけという状況だった。昨年末に道と沿線自治体が支援する方向で話をまとめたものの、後手後手の感は否めない。

 地域がある程度鉄道の維持に対して負担しなければ、国も支援しないというのが安倍政権の方針ではあるものの、このあたりの交渉に強いリーダーシップを発揮していくのが、本来の知事の役割だったはずだ。

 春の知事選では、「JR北海道を道政はどうするのか?」を課題に、各候補ともども政策論争がなされることを期待したい。当選した知事には、しっかりとした見識とリーダーシップをもって、経営が厳しく維持管理に追われるJR北海道の現状、それをとりまく北海道の総合交通体系の現状を変えるべく行動し、現実の鉄道網の衰退の一因でもある北海道経済の疲弊からの回復に力をつくしてほしい。

消費増税で運賃・料金の値上げが起こる

 10月には消費税の8%から10%への増税が行われる予定だ。それにともない、運賃や料金も値上げすることが予想できる。

 首都圏やJR東日本圏内では、8%に増税した際に交通系ICカードによる運賃(1円単位)と、紙のきっぷの運賃(10円単位)とを別にするということで解決した。それをベースにした新しい運賃は、どうなるのか。

 また増税にともない、ほかの鉄道会社でも値上げの可能性がある。とくに厳しい状況に置かれた各鉄道会社では、10円単位での大きな値上げが予想される。JR九州の青柳俊彦社長は昨年11月の記者会見で「1円単位での値上げはしない」と表明している。1円単位にすると、システムの改修などでコストがかかるのだという。

 首都圏にある乗客の多い鉄道会社では、そのコストに耐えられる。しかし1円単位の運賃は首都圏やJR東日本圏内以外では見かけない。

 さらに増税を行うにあたって、各鉄道会社は運賃を上げるかどうかの対応が必要になってくる。この場合、単純に値上げをするか、距離を細かく区切って値上げをする区間を決めるかなど、判断は難しいところだろう。とくに交通系ICカードの普及していないエリアでは、厳しい判断が必要になってくる。また長距離の運賃・料金も当然上がるので、新幹線や特急に乗る際は運賃や料金の負担が大きくなる。この場合の心理的影響も大きく、特急への依存度の高いJR北海道への影響も予想される。

 消費増税により鉄道会社には運賃表の掛替や、システムの更新などの負担が必要である。

 一方で昨年秋ごろから株価が下落しはじめ、その流れの中で好景気ムードが失速するという状況にもなっている。夏には参議院議員選挙も予定されており、そこでは景気衰退局面での消費増税の是非が争点になるはずだ。一般に、増税を掲げると選挙には負けるという傾向があるものの、低投票率の中で手堅くコアな支持層からの票を集めてきて衆参両議院で圧倒的多数を確保してきた与党の選挙手法により、低投票率のままでは与党の勝利となる可能性が高い。安倍政権になってから国政選挙では負けなしであり、それゆえに自民党内でも「安倍一強」は強く支持されている。参院選の動向によっては運賃・料金の値上げは起こらないものの、起こる可能性は大きいと見てよい。

相鉄・JR直通線はいつできる?

 10月以降から来年3月にかけては、相鉄・JR直通線がいつ開通するのかということが気になる。相模鉄道は「2019年度下期」と発表している。これにより、相鉄の悲願だった都心への乗り入れが可能になる。

 相鉄からJRに乗り入れる列車は、相鉄・JR直通線の羽沢横浜国大から東海道貨物線・横須賀線に乗り入れ、大崎から埼京線となることが予想される。すでに埼京線の駅によっては駅の表示の新しい行き先がシールで隠されており、はがせば対応できるようになっている。

 近いうちに相鉄の11000系や12000系を埼京線で試運転するようすが見られるようになり、埼京線の車両も相鉄線内で試運転をするようすが見られるようになる。

 相鉄は、昨年12月に相鉄最後となる単独でのダイヤ改正を行った。JRは3月にダイヤ改正を行う。来年3月に行われるであろうJRグループのダイヤ改正にあわせて相鉄・JR直通線の開通となることも考えられるものの、年によってはJRでは東日本だけ12月にダイヤ改正を行うこともあり、12月の開通であることも予想できる。12月か来年3月かが、ことしの鉄道を予想するになって気になるところだ。昨年12月31日の共同通信の報道では、ことし12月を軸に調整しているという。

 ことしも鉄道の動きが社会の注目を集め、より多くの人が鉄道に関心を持つようになる。次々に起こる鉄道各社局の施策が、沿線住民やファンの心をとらえることは昨年とも変わりはない。ことし一年の鉄道の発展と安全を祈りたい。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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