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ロシアで情報統制 欧米メディアへのアクセス遮断、BBCはジャーナリストらを引き上げ

小林恭子ジャーナリスト
BBCの報道センター(ロンドン)(写真:ロイター/アフロ)

 ロシア市民が政府公認の地元メディア以外の報道に触れる機会が、今後ますます少なくなりそうだ。4日、ロシア当局が欧米の主要メディアへのネットアクセスを遮断したのである。遮断理由は、ロシア軍に関する「虚偽情報を拡散している」ためである。

 ロシア政府は侵攻を「特別軍事作戦」」と表現しており、「侵攻」、「戦争」と表現した場合は、虚偽情報と見なされる。上院では、軍に関する虚偽情報を意図的に流した場合、最長で5年の刑を科す法案を承認した。

 「これからは『戦争』、と言っただけで逮捕されてしまう」、と在ロシアの女性が話す(BBCのラジオ番組「PM」にて、4日放送)。

 ロシア国内での報道は、国外の報道とはかなり異なるという(BBCニュース、「ウクライナ侵攻をロシアのテレビで見る まったく別の話がそこに」)。「ウクライナの都市爆撃はウクライナのせい」という文脈で紹介されている

 BBCは、一時的にロシアからジャーナリストたちを引き上げることを決定した

 ただし、ロシア語のBBCニュースの報道はロシア国外から発信を続ける。

独立系メディア、閉鎖 

 3日、独立系放送局「テレビレイン」が政府の公式見解に沿った報道を強要され、閉鎖することになった。スタッフがスタジオを出る様子が動画で紹介されている。「戦争に反対する」、と放送局の創設者の一人が述べている。「身の危険を感じ」、編集長は前日に国外に出たという。

 1日にはラジオ局「エコー・オブ・モスクワ」が放送停止。4日までに事務所が閉鎖され、ウェブサイトは使えなくなった。

 独立系新聞「ノバヤ・ガゼッタ」は4日、ロシア語でツイートし、ウクライナ紛争については報道しない、という。同紙のジャーナリストや記事を拡散する市民らが政府の公式見解と合致しない情報を出すことで訴追されることを避けるためだ。

 同紙の編集長はドミトリー・ムラトフ氏。昨年、フィリピンのニュースサイト「ラップラー」の代表マリア・レッサ氏とともにノーベル平和賞を受賞した人物である。

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊は中公新書ラクレ「英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱」。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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