Yahoo!ニュース

男の子もプリキュアに!「ひろプリ」初の男子レギュラープリキュア誕生にみる朝夕アニメの多様性

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:アフロ)

今年でシリーズ20周年を迎える「プリキュア」シリーズ。

その最新作であり、記念すべき20作品目となる「ひろがるスカイ!プリキュア(「ひろプリ」)」に、男の子のプリキュアがシリーズ初のレギュラーのプリキュアとして登場することが発表され、大いに注目を集めています。

  • 上記ニュースサイトのツイートへの反応からも窺える通り、国内だけでなく、海外からの反響もかなり大きいものとなっている

昨今、様々な場面で話題にのぼることも多い、こうした多様性を感じさせる描写。

「プリキュア」をはじめ、深夜アニメと比べて特にキッズファミリー層の視聴者も多い朝夕アニメにおいては、近年どのように描かれているのでしょうか。

■「プリキュア」が描く多様性

今回、初のレギュラー戦士として登場する男の子のプリキュアは、キュアウィング。オレンジを基調とした衣装に身を包んだその姿は、既に発表されていたキービジュアルでも確認できます。

女の子が伝説の戦士“プリキュア”となって活躍する作品、という印象が強い「プリキュア」シリーズだけあって、このニュースは多くの人を驚かせましたが、「ひろプリ」で描かれる新しい要素はこれだけではありません。

日本の新成人にあたる年齢のプリキュア・キュアバタフライが登場したり、ピンクの印象も強いセンターのキャラクターが初の水色※であったり、変身ヒロインの印象も強い中、テーマが“ヒーロー”であったりと、益々内容が気になる要素も満載です。

  • ※初代しかり、ピンクがセンターではないシリーズはこれまでにも存在した

また本シリーズで、こうしたあらゆる面で多様性を感じさせる表現が生まれたのも、今作が初めてではありません。

男の子のプリキュアでいえば、レギュラー戦士ではないものの、既に「HUGっと!プリキュア」で“キュアアンフィニ”が登場しましたし、本作に至っては、最終回直前で老若男女誰もがプリキュアになれるという驚きの演出も当時話題になりました。

自身も変身する男性のレギュラーキャラクターでは、前作「デリシャスパーティプリキュア」で登場した“ブラックペッパー”もいますし、本作を語る上ではプリキュアに寄り添う大人としての新たな立ち位置を築いた“ローズマリー”の存在も欠かせません。

20年も続くシリーズとなると”「プリキュア」はこういうもの”という固定観念も抱かれがちですが、これまでも本シリーズは、一貫して変わらないところもあれば、それ以上に、毎年新たな表現へのチャレンジも繰り返してきたのです。

■朝夕アニメの多様性

また、朝夕に放送されるアニメで多様性を感じさせる描写が話題になった作品というのも「プリキュア」に限りません。

サンリオキャラクターを原作としたアニメ「ミュークルドリーミー」シリーズでは、レギュラーキャラである男の子が、他の女の子と共に変身したり、EDダンスに参加したり、女子のイベントとして描かれがちなバレンタインで一番奮闘する姿も話題になりました。

「プリティー」シリーズのひとつ「プリパラ」では、当初視聴者にも女の子と見紛われていた男の子が、他のメインキャラクター達と共にアイドルとして活躍する姿が描かれましたし、「アイカツ!」シリーズのひとつ「アイカツプラネット!」では、主人公達が通う学校の女子制服がスカートとズボン両方あることがさりげなく描かれ※注目されました。

  • ※アニメと実写のハイブリッドで描かれた作品の実写パートでの描写

アニメは画面に描かれること全てが意味を持ってしまう性質上、視聴者から共感を得られる最大公約数を探るあまり、女の子は/男の子はこういうもの、大人は/子供はこういうもの、という画一的な描写が多くなりがちだと思っている人も少なくないかもしれません。

しかしむしろ、キッズファミリー層も多く視聴する朝夕アニメに関しては特に、上記のように、時勢やトレンドをいち早く取り入れ、表現のアップデートを常に行い、多様性を感じる要素が、押し付けがましくない形でさりげなく取り入れられているように思います。

こうした表現の多様化は、昨今なにかと敬遠されがちな表現規制への妥協ではなく、変わり続ける社会と、そこに生きる子供達の視点に寄り添う柔軟な表現を模索し続けている結果なのでしょう。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

小新井涼の最近の記事