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第二部好スタートの「チェンソーマン」少年ジャンプ+との相性の良さとは?

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:アフロ)

先週スタートした第二部より、連載先が「週刊少年ジャンプ」から「少年ジャンプ+(以下「ジャンプ+」)」に移行した藤本タツキ氏による漫画「チェンソーマン」。

今年放送予定のアニメにも注目が集まる作品だけあり、第二部初回にあたる第98話の公開後も関連ワードが続々とトレンド入りを果たすといった大きな盛り上がりを見せました。

第一部連載時から度々話題となり、既に根強い人気を持つ本作ですが、これほどまでの盛り上がりを生んだ背景には、作品そのものの魅力は大前提として、新たに連載先となった「ジャンプ+」との相性の良さというのもあるかもしれません。

■盛り上がりの瞬発力と拡散力

「ジャンプ+」連載作品の盛り上がり方には、公開日0時と共に一斉に読者が作品を読み、SNSを通して話題が延々広がり続けるという、“並外れた瞬発力と拡散力”という特徴があります。

現在は多くの漫画雑誌が電子化され、発売日0時には最新話が読めるため、注目話数の掲載時にアクセスが集中し電子版が読めない事態や、日付変更と共に関連ワードがトレンド入りするといった盛り上がりは「ジャンプ+」作品以外でも度々起きるようになりました。

しかし雑誌での連載作品は、電子版でも話数毎に購入が必要である等の作品がほとんどである一方で、「ジャンプ+」オリジナル連載作品には初回全話無料という大きな違いがあります。

これによって生まれる拡散力は、従来の漫画雑誌連載作品が持つ基本“買い切り”のハードルを外し、その盛り上がりを、元々の購読者のみならず、たまたま盛り上がりを目にした潜在的な読者層にも際限なく広げていくことが可能なのです。

実際に、第一部は未読だけど気になるタイトルだったということで、今回の盛り上がりを目にして、本作第二部を試しに読んでみたという人も少なからずいたのではないでしょうか。

■ある種の定番イベント化

そうした「ジャンプ+」が持つ“並外れた瞬発力と拡散力”に加えて、本作第二部初回の盛り上がりの後押しとなったものには、第二部連載開始までに度々「ジャンプ+」に掲載されてきた、藤本氏による読み切り作品の存在もあるかもしれません。

「週刊少年ジャンプ」での第一部完結から、先週の第二部連載再開までの間に、本作作者の藤本氏は、「ルックバック」、「さよなら絵梨」、そして原作として携わった「フツーに聞いてくれ」といった読み切り作品を「ジャンプ+」にて発表してきました。

そしてそのどれもが、「チェンソーマン」第二部初回同様に、日付変更と共に並外れた瞬発力と拡散力のある盛り上がりをみせ、大いに話題になってきたのです。

各作品に投稿されたコメントをみても分かりますが、藤本氏による作品達には、シンプルに楽しむだけでなく、様々な考察や深読みを喚起される読者も多いため、作品の話題に加え、感想や分析の発信が積極的に行われ、話題が広がっていったことも大きいと思います。

そうして藤本氏の作品が公開される→日付変更と同時に多くの人が読む→感想や関連ワードのトレンド入りと共に盛り上がりが拡散していくという流れが、数度の読み切りの掲載を経て、ある種の定番イベント化してきたことも、少なからず第二部の盛り上がりを後押しするものとなったのではないでしょうか。

そんな、読後に思わず感想の発信や口コミで広げたくなる誘惑を持つ本作は、これまでの読み切り作品や先週の第二部初回配信でもみられたように、従来の漫画雑誌とも違う並外れた瞬発力と拡散力を持つ「ジャンプ+」との相性がかなり良い作品であるように思います。

ただでさえアニメ放送に向けても一層話題性が高まっていくことが予想される本作、これから公開される第二部第99話以降もどのような盛り上がりをみせていくのか、今後の展開にも注目です。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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