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有名声優も多数出演「鎌倉殿の13人」単なる話題性だけではない大河ドラマへの声優出演その影響力の変化

小新井涼アニメウォッチャー
(提供:イメージマート)

現在好評放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。

先日発表された追加キャストの中には、今回が大河ドラマ初出演となる声優の山寺宏一氏と関智一氏の名前もあり、幅広い層から注目を集めました。

国民的人気を生むアニメも多数誕生している昨今、有名声優の実写ドラマ起用もなにかと大きな話題を生みます。

しかし近年のキャスティングに関しては、単なる話題づくりだけには終わらない影響力も生まれていそうです。

■大河ドラマへの声優出演

そもそも、大河ドラマへの有名声優の出演はこれまでにも少なからず行われてきました。

本作「鎌倉殿の13人」にも、上記山寺氏、関氏の他に既に木村昴氏や平田広明氏が出演されています。

また、昨年放送の「青天を衝け」には、「地獄先生ぬ~べ~」の鵺野鳴介(ぬ〜べ〜)役や「パリピ孔明」の諸葛孔明役等を務める置鮎龍太郎氏や、「名探偵コナン」の毛利小五郎役や「鬼滅の刃」の煉獄槇寿郎役等を務める小山力也氏が。

2020年から放送の「麒麟がくる」には、同じく大河ドラマに出演されてきた父故・大塚周夫氏に続き「ルパン三世」の次元大介役等を務める大塚明夫氏が初出演し、「SPY×FAMILY」のヘンリー・ヘンダーソン役等を務める山路和弘氏が「軍師官兵衛」や「いだてん〜東京オリムピック噺〜」に続き出演。

2018年の「西郷どん」には「名探偵コナン」の阿笠博士役等の緒方賢一氏が、2016年放送の「真田丸」には「名探偵コナン」の高木刑事役や今秋放送の「うる星やつら」の錯乱坊役等を務める高木渉氏が出演し、緒方氏はそれに続き「麒麟がくる」と「鎌倉殿の13人」にも、高木氏は昨年の「青天を衝け」にも出演されていました。

こうしてみると、元より舞台や実写俳優としても活躍されている方も多数いらっしゃることもあり、大河ドラマに声優が出演されること自体は、それほど珍しいことでもないようにも思えます。

確かにここ数年で、その頻度や出演人数は増加してきました。

しかしそう感じることには、“大河ドラマが妙に声優を多数起用するようになってきた”というよりは、ここ数年で、アニメファン以外からの声優への注目度が上がったことや、それに伴い関連ニュースを取り上げるメディアが増加したことで、大河ドラマへの声優出演を取り巻く世間の認識の方が大きく変化したことが関連していそうです。

■単なる話題性だけに終わらない影響力

そうした世間の認識の変化には、特に昨年1年の間に、実写ドラマやバラエティー番組への声優の出演数が急増したことや、国民的な人気を生むアニメが例年登場し続けていることで、声優という職業自体はもちろん、各役者の名前やその方々が担当するキャラクターの認知度までが高まったことが大きく影響しているように思います。

それに伴い、大河ドラマへの声優出演に関しても、少し前まではアニメファンの間やSNS上での盛り上がりが特に大きかったものが、何も知らずに大河ドラマを視聴していた人がそのことに気づいたり、関連ニュースが目に入ったりするという機会も増えてきたはずです。

更に大きいのは、声優の出演を知らずに大河ドラマを視聴している人に『あの作品のあのキャラの声をやってる人だよ』と伝えた時に、『ふうん(知らないや)』ではなく『そうなんだ!』とピンとくる確率も高まってきていることだと思います。

これまでは、声優の出演をきっかけに大河ドラマを視聴するアニメファンの流入率の方が高かったかもしれませんが、こうした変化に伴い、大河ドラマを視聴していた層が出演声優を認識し、逆にアニメを視聴してみるという機会も、今後益々増えてくるかもしれません。

そうなることで、大河ドラマへの声優出演は、単に話題性を生むためのアニメファンに向けたPRではなく、これまでとは異なる視聴者層の拡大がアニメと実写ドラマ双方で、相互作用的に生じるという新たな影響力を伴っていくことも予想されます。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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