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盛り上がる劇場版「名探偵コナン」最新作、比例して増加する“参列者”とは

小新井涼アニメウォッチャー
Anime Japan2022展示(筆者撮影)

先週金曜日、ついに公開された劇場版「名探偵コナン」最新作「ハロウィンの花嫁」。

公開初日はシリーズ最高の興行収入となった「紺青の拳」との対比124%を記録するなど、勢いのあるロケットスタートをみせました。

それに伴い、この週末は関連ワードも続々とトレンド入りを果たしていましたが、同じくSNSでは、現在“参列した/参列済”といった表明をする人が増加しています。

一見普通の言葉ですが、実は今、本作関連のワードとしても使われているこの“参列”の表記。

一体どんな意味があって、何故このような表現がなされているのでしょうか。

■“参列”の意味と発生経緯

本来、式への参加を意味するこの“参列”という言葉は、今回作品ファン・アニメファンの間では”本作「ハロウィンの花嫁」を鑑賞すること”と同義的に使われています。

タイトルや予告映像からも分かる通り、作中の印象的な出来事として描かれている結婚式。それに因んで、ファンは本作を鑑賞することを“結婚式への参列”にたとえて、この言葉を使っているのです。

実は本作に限らず、特に2018年公開の「ゼロの執行人」以降、近年の劇場版「名探偵コナン」シリーズでは、“映画を鑑賞すること”がそれぞれ以下のように表現されてきました。

  • 2018年「ゼロの執行人」を鑑賞=(タイトルに関連して)執行済/執行された
  • 2019年「紺青の拳」を鑑賞=(舞台がシンガポールであることから)出国済/出国した
  • 2021年「緋色の弾丸」を鑑賞=(タイトルとキーキャラクターの特性に関連して)被(緋)弾済/被(緋)弾した

またこうした独特な表現は、劇場版「名探偵コナン」以外の作品でも見受けられます。

たとえば、2019年公開の「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム」では、キングダムに因んで鑑賞="入国"とされ、奇しくも同年公開された同監督作品「紺青の拳」の“出国”とも重なり、その年は人々の頻繁な出入国がみられる一年となったり。劇場版「鬼滅の刃」無限列車編では鑑賞が"乗車"と、現在も上映中の「劇場版 呪術廻戦 0」では、作中の重要な出来事である百鬼夜行に因んで、本作と同じく鑑賞することが"参列"と表現されていました。

こうして近年、”特定の映画を鑑賞すること”が作品内容やタイトルに因んで独特に表現されてきた経緯もあり、本作では鑑賞が”参列”と表現されています。

そのため本作鑑賞済の人が増えると同時に、週末以降SNSでも“参列した/参列済”といった表明をする人が増加していたのです。

■盛り上がりの後押しにも

こうした独特な表現は、単なる作品ファン内での内輪ネタに止まらず、少なからず作品の盛り上がりを後押しもしているように思います。

たとえば上記の独特な表現と共に広がった、作品鑑賞済の人がSNSのユーザー名やbioに“参列済”や“●回参列”と表記する習慣。これは、ソーシャルゲーム内の称号やバッジのように自身の鑑賞状況を記録/周知したり、自身の投稿は鑑賞を経たうえでのものであるという未鑑賞者へのエクスキューズになるだけでなく、みかけた人に『自分もみてみようかな』と思わせたり、表記の意味を調べる中で作品名にたどり着かせたりといった、間接的な作品の布教にも繋がります。

そうして表記をみかけたことをきっかけに作品をみた人がまた”参列済”と表明することで、連鎖的に作品の盛り上がりが広がっていくこともあると考えられるのです。

この週末だけでも、“参列”というと本作関連の投稿や”参列済”の文字が目に入るくらい、既に大きな盛り上がりをみせていた劇場版「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」。

シリーズ初となる興行収入100億越えへの期待も囁かれる中、本作への”参列者”が今後どこまで増えていくのか、早くも目が離せそうにありません。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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