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「ガンダム」で久々復活の“日5”って何?:今、夕方アニメ放送枠が復活される意味

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:アフロ)

先週末、「機動戦士ガンダム」シリーズの最新作「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の10月からの放送が発表され、話題になりました。

ご存知有名シリーズの7年ぶりとなる最新作というのはもちろん、加えて注目を集めていたのが、本作の放送枠が5年ぶりに復活する日5(にちご)であることです。

耳慣れない人も多いかと思いますが、この日5とはどのような放送枠なのでしょうか。

■日5とは

日5とは、かつてMBS・TBS系で放送されていた日曜午後5時のアニメ枠の通称です。

元を辿ると、かつての人気ドラマ枠・月9(げつく)になぞらえて呼ばれるようになったそうですが、日曜/土曜 朝のアニメや特撮を放送する一連の時間帯を指す“ニチアサ”や“ドアサ”と同様に、シンプルに“アニメがみられる時間帯”を指す愛称としても親しまれていた印象です。

前身となったのは、同じくMBS・TBS系で放送されていた土曜午後6時のアニメ枠・通称“土6”。同枠で2008年3月まで放送された「機動戦士ガンダム00(1st season)」を最後に、同年4月放送開始の「コードギアス 反逆のルルーシュR2」から放送時間帯を引っ越し、日5枠でのアニメ放送が始まりました。

以降、「ガンダム00(2nd season)」や「鉄血のオルフェンズ」といった「機動戦士ガンダム」シリーズをはじめ、「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」や「ハイキュー!!」、「宇宙戦艦ヤマト2199」など、数々の人気作、有名作品を放送してきた本放送枠。しかし2017年4月を最後に、以降アニメの放送は行われてきませんでした。

■終了から復活間の5年に:視聴習慣の変化と視聴方法の多様化

当時、一旦日5が終了した背景には様々な要因が考えられますが、そのうちのひとつには、徐々に兆しをみせていた人々の視聴習慣の変化もあったように思います。

実際に、当時終了した日5を皮切りに、その後テレビ東京では2018年に「ポケットモンスター」と「BORUTO」の放送が日曜夕方へ移り、テレビ朝日では2019年に「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」が土曜夕方へ移動するなど、民放キー局における夕方~夜帯のアニメ放送枠の大きな変化が次々と起きてきました。※

いちアニメ枠の終了と、長寿作品の放送時間移動は厳密には違うものですが、その根本には、当時より叫ばれていたように、メインターゲットとなっていたキッズファミリー層の視聴習慣の変化――平日の学校帰りや週末の夕飯時に家族そろってテレビをみることが減るなど――によって、夕方~夜帯の視聴率が変化してきたことがあると思われます。

加えて2015年以降、NetflixやAmazon Prime Videoの日本国内でのサービス開始を皮切りに、益々定着していった配信サービスや、キッズファミリー向け作品のYouTube配信への切り替えなど、アニメを視聴する方法の多様化も、後押しとなったのではないでしょうか。

  • ※その後「ポケットモンスター」は2020年に金曜夕方へ再び移動

■今、夕方アニメ放送枠が復活される意味

こうした背景を受けて、今のタイミングで週末夕方のアニメ枠が復活することは、かなり挑戦的なことのようにもみえるかもしれません。

しかし人々の視聴習慣の大きな変化を一旦経ての今だからこそ、むしろたくさんある視聴方法の中でも、決まった時間に行われるテレビアニメの放送が持つ強みというものが、改めてみえてきたタイミングでもあるように思います。

実際に、深夜帯の放送にもかかわらず毎週盛り上がりをみせる「鬼滅の刃」の放送や、「金曜ロードショー」でのアニメ放送時などでもみられるように、決まった時間に同じ作品が全国的に同時視聴されることによって、SNSでの実況との相乗効果で、ある種のお祭りのような大きな盛り上がりが生まれることも増えてきました。

既に「水星の魔女」の放送が発表された時点でSNSでも大きな反響があったことからも、日5でのリアルタイムでの放送時にも改めての盛り上がりが期待されます。

視聴習慣の大きな変化、また近年の様々なアニメ作品における社会的な盛り上がりをも経た今、改めて日5がどのように定着していくのか、「水星の魔女」をはじめ、それ以降も放送されるとしたら、その作品ラインナップや盛り上がりにも注目です。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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